天空海闊

春一番

でも偉いよおばちゃんは

日陰で暮らしながら

わたしたちを何時もにこやかに迎えてくれて

本当は生きることだけで

自分の子供たちのことで

精一杯だったのに

何も語らず

淡々としていたおばちゃん

それでも一度だけ泣いて

女の悲哀を教えてくれたね

もう会ってもわからないだろうなぁ

 

陽気にさそわれ

車で眠りかけたが

畑の風車が

カラカラ回り始め

猫が跳び起き

路地の向こうに去った

後を追いかけるように

柄が外れたビニールバケツが

コロコロ転がる

ラジオは

中東の暴動を伝えるが

心に浮かぶのは

「おばちゃん」が

痴呆で施設に入り

故郷が消えかかったこと

それでも無下に

春は進む

春は進む

ひゅうと吹け南風

わたしたちも

すぐに

飛び去る

 

 

 

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