山頂から見る景色は美しかった。何て美しい村なんだろうと感動した。背丈ほどある草をかき分けて見下ろす景色の美しさに言葉を無くした。どんな人工の美しいと言われている景色より人間がつくることのできないこの自然溢れる素晴らしい景色に私は心を奪われてしまった。
ここに祠をつくります。
とっさに口から出てしまった。神の地で私が発した言霊。
祠を建てる。
元には戻らないけど未来に向かってこの神の地を美しく甦らせることはもしかして出来るかもしれない。ワクワク感がとまらなくなっていた。
山からおりて母に祠をつくろうと思うと言った。
最初、村に住んでない私たちが勝手なことはできないと母は言った。それに、未だ村の人達のほとんどは山に神様はいないと思っているし、麓のお宮できちんと祀っていると信じているから、そんなことを村から嫁に出て何十年も経ったものが言ったらダメだと言った。
それでも粘り強く祀る人が自分たちだけでもいいから祠を建てたいといった。
人間は目にみえる何かが無いと手をあわせなくなる生き物だから祠はいる。人間は家に住んでるのに神様にもおやしろは大切。だからこそ建てたい。山を買って道をつくってでも祠を建てると私が言うと、もともと信仰深い母は力になってくれ村に住む従兄弟に話をして、村の人にその旨を説明して了解をもらうよう段取ってくれた。