雄一郎の半生
私が中学に入ったころには、母は
温泉街に勤めていたが、自宅に
帰ってきていた。そして、近くの
料理店に勤めていたようだ。
私たち兄弟は、小学6年と弟が1年
の時に祖父母が、勉強部屋を
増築してくれた。増築と言っても
2坪ほどで、机が2つ置ける程度
だったが、私は何にも不自由を
感じなかった。
祖父母は祖父が近くの建設会社に勤め、
祖母は私たちの面倒を見ている。
慎ましやかな生活をしながら、
増築してくれたことには、感謝を
しています。そして、
中学になりこの勉強部屋で
夜間、勉強をしていると隣の塀の
間にある窓を叩く人がいた。
最初は、びっくりして、誰が
こんな時間に。と思っていた。
その男は「かあちゃんいるか?」
という。私は訳が分からないので
母を呼ぶと、母は、「少しこたつに
あたっていろ」と私を遠ざける。
こんなことが、何回かあった時に、
こたつに入らずに、聞き耳を立てて
いたら、どうやら、母の愛人らしく
同じ村内の妻子ある男だった。
それで、夜な夜な話をしに来ていた
らしい。
この男と母が出会ってからは、
恐らく1年ほどで、母がなにやら
旅館を始めるような話をしていることを
耳にするようになった。
次回につづく