雄一郎の半生
すし店に紹介されてからは、
なかなか、踏ん切りがつかずに
いたが、仕方なく勤めることにした。
すしは好きで、この店にも以前
母に連れられて来ており、店の
おかみさんと会ったことがあった。
おかみさんは、女手一つで、
子供を育てて店を向かいの
割烹店と2店舗を経営している。
現在は、板前を雇って自分は
店には立っていないが、以前は
ここの市内の強面の人からも
一目置かれる人だったらしい。
店を手伝っているのは、
おかみさんの一粒種のNちゃん、
と親せきのAちゃんいずれも女性
当時、Nちゃんは二十歳、Aちゃんは
自分より年下の17歳位で、板前の
他に、修行中の先輩が一人、
割烹店にはおばさんが二人の
みんなで7人で営業していた。
当時は、車の免許を取って
いたので車で、通勤していた。
朝、店に入る前に隣の喫茶店で、
モーニングコーヒーを先輩と飲む
のが、日課になっており楽しみでも
あった。いろんな話を先輩から
聞いたりして店の事や、板前の事、
すしの仕込みなどの話から、
Nちゃんの好きな人がここのマスター
だという事まで、話を聞いて
びっくりした。Nちゃんの一方的な
片思いらしいが。
自分は、自宅から隣の市の中ほどの
女性と交際しており、たまたま、
その子もすし店と同じ市内に勤めて
いて、いつも帰りを駐車場で
待っていてくれた。その子の店は
洋品店で、店が終わってから
自分が終わるまでの2~3時間は
時間をつぶして待っていてくれたが
必ず定時に店が終わるとは
限らないのが、すし店である。
店の客が帰ってからは、
先輩たちの包丁磨きや、店の
後かたずけなどなど、やることが
多い。それで、駐車場に行くと
彼女がいないこともしばしば、
そんな時は車のワイパーに
「暫く待ちましたが、帰ります」
のメモ書きがある。
そんなある日、Nちゃんの女友達が
店に食事に来た。それまで何回か
来ていたらしいが、自分は気付かな
かった。そして、その子が帰り際に
何か自分の手に握らせた物が
あった。「後で読んで」と言い
渡された、メモ書きを見ると
はっきりは覚えていないが、
どこかで今日の帰りに待っている。
との内容だった。
自分の彼女はこの時間は、
帰っているので、のどでも潤そうと
この子と会ってみた。すると、
初めて店で見てから気になっていて
のことで、この子とも付合う羽目になる
次回につづく
取り立てだが運転には、自信が