戸の隙に 刺さる母校の 甲子園 <殿>
話し飽き 夕べ近くに 潮騒ぐ <殿>
垂れ落つる 凌霄の蜜 わずか舐め <殿>
風そよぎ 生まれる未来<みく>に 夏を見ゆ <殿>
水着より こぼれる砂は ひそやかに <殿>
気紛れな 宙流れ去り 梅雨明くる <殿>
かりそめの 優しき嘘に 送り梅雨 <殿>
雷神の 蠢く雲は 薔薇色に <殿>
驟雨やみ 水鏡の街 ゆらぎなく <殿>
翡翠<かわせみ>や 宙つき刺して 急降下 <殿>
雨待ちの 紫陽花みつけ 雪の下 <殿>
「向日葵は 狂気の筆か ヴァンゴッホ」 <殿>
「赤信号 知らんぷりして 夏燕」 <殿>
夕焼けの グッドウェーブ 富士も見え <殿>
自堕落な 手のひら叩く 暴れ梅雨 <殿>
亡き叔母の 扇子じゃれつく 白き猫 <殿>
半夏生 化粧<けわい>半ばの 夕日濃し <殿>
たまゆらに 虹たちのぼる 如露の先 <殿>