「プレバト俳句ランキング」を珍しくリアルタイムで拝見。
82歳・徳光和夫君も出演していて、その一句。
八十路夏蛍照らせし初デート
これを選者・夏井いつき君は、次のように添削した。
君とゐて椿山荘の初蛍
あれまっ、生きているのは「初」と「蛍」だけ。
こういうのは添削とは言わず、改作と言う。
ところで、番組では一言も触れないで進行したけれど、
原作には文法的な誤りもある。「照らせし」の部分だ。
選者・夏井君は、「蛍は照るのが当たり前だから、わざ
わざ照らすと言わなくていい」と通過したが、説明する
ことまで省いているのである。
何故なら、説明に時間を取るし、説明をしてもどれだけ
理解できるか微妙だし、古典文法の説明をして俳句を
難しく思わせたくないとの気持ちがそうさせたのだろう。
(彼女は元国語教師だから、100%知らぬ筈がない)
で、もし「蛍が照らしていた」という過去表現が必要なら、
「蛍照らせし」ではなく、「蛍照らしし」が正しい。
一応簡単に説明すると、「照らす」は四段活用である。
その場合は「しし」となるのだ。
例えば、「愛す」はサ変活用だから「愛せし」となる。
実は、そんな面倒なことを覚えなくても、語感が優れて
いれば「せし・しし」を大方間違わないで済むのである。
さて、今週の1位は中川翔子君の一句。
暮れなずむ愛猫色の夏の空
夏井君は、「暮れなずむ夏や愛猫色の雲」と添削。
確かに更に良くなったが、そもそも原作がいいからだ。
愛猫色という語彙が頭に浮かんだだけで素晴らしい。
もうこれは「中川翔子語」なので、他人が使用できない
言葉になってしまった。
話は変わって・・・。
金曜なので新聞歌壇への投稿葉書を投函してきた。
今月投稿の歌四首は八月掲載の四週分になるのだが、
いつもより気合を入れて作歌したつもりだ。
つまり、四週全て掲載されることを希っている。
来週投函の一首も含めて、ここでお披露目しておこう。
桜桃の花より白き帽子ゆゑ眩しくて夢に
貌を見ざりき
桜桃をふふみて硬き種に触れふとよみがへる
Kといふ人
戯れて桜桃の種を吹き飛ばす紅き唇よ
遥かとなりぬ
桜桃の赤錆色の実割れより夏は来たるらし
じくじくとして
【鑑賞の為の補足】
桜桃(おうとう) 貌(かお)
ふふみて(含みてと同じ意味)
来たるらし(来たようである)