1970年に発表された作品だから、もう半世紀。どろどろとした三角関係を軸に人間の嘘と弱さ、心の葛藤を鋭く炙る。
名取裕子演じる恒子の官僚ぶりが凛々しくて、ぴったりな役柄でした。
こんな女性なら男を抜きん出ての出世はうなづける。
ヒモ同然の売れない作家である夫を扶養し、子どもを持たずバリバリ省庁で働く恒子のもとに夫の訃報が届く。
心疾患で急死した夫を自宅に寝かせて救急車を呼んだ男はしがない薬屋の店主。しかし、何故その土地に夫が出向いたかが謎となる。
生前夫から俳句を習ったという主婦達がお悔やみに訪れたが、夫が俳句を詠むことに人生を楽しんでいた事も初耳だった。
恒子が知らない夫の姿。夫がその土地で亡くなった真実を探り出すと意外な、でもある意味予想していた事実が浮かび上がる。
結末は予想されるのに、何故かハラハラドキドキ。
人は弱くてずるい生き物。松本清張の目は常に真実を追っている。
とても面白いドラマでした。松本清張ドラマは何回もキャストと少し設定を変えて放送する。
今回のドラマでは夫の死の真相を追うキャリアウーマンが主役。
妻の死の真相を追う同じタイトルのドラマも風間杜夫が演じているらしい。
たぶん、名取裕子の方が群杯上がるかな。
演技がすごく良かった。夫の愛人役の酒井美紀や事件のキーマン薬屋役の大杉漣もすごかった。
男と女の人生って、ほんと厄介で複雑です。