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合言葉はヒュッゲ

あの子の好きなドラえもん

昨日あの子と懐かしい再会をした。
6年前、あの子は13歳。特別支援学校の中等部2年生だった。

重度の自閉症。言葉はなく、強度行動障害があり、時々パニックを起こしては暴れる事があった。

まだスタートさせたばかりの、放課後児童デイサービスの利用者一号が彼だった。

大人ばかりの支援者の中、子どもは彼1人。彼の相談員は危惧していたが、マイペースな彼にとっては、自由な空間と感じたようで、毎回のびのびと過ごしていた。

ミッキーマウス体操やおかえりの歌「にじ」を好み、声は出なくても♪うーうーあーと歌っていた。

手探りで始まった放課後等デイサービスは、貸しビル2階の大きなフロア、日当たりの良い空間で、その子は身体を伸ばして寝転がったり、トランポリンをしたり、課題のパズルに取り組んだりした。

食いしん坊で、おやつの時間になると、踊って喜んだ。ホットケーキに自分でかけたメープルシロップをぺろぺろと舐めていた。

他のデイサービスと併用で通って来ていたが、夏休みに入った頃、自宅で大暴れすることが増えた。

デイサービスの中でも、時折フラッシュバックを起こしては暴れ、職員につかみかかってきた。

まだ身体は華奢だが、怒るとそれなりに力がある。私も散歩中、赤信号を急ダッシュしようとした彼を押さえたら、髪をつかまれ引きずり倒された事がある。

帰った後には、沈んだ表情で甘えて膝に乗ってきた。思春期だったせいか、粗暴さと幼さを持ち合わせていた。

それからも家庭で、特に母親への暴力が治らず、彼は児童精神科に入院となり、デイ
サービスは利用者がいなくなった事で閉所となった。

あれから6年。

19歳になった彼が支援者と受診に来ている。

高等部卒業と同時に自宅から出て、24時間支援を受けながら一人暮らしをしていると聞いた。

周囲の心配をよそに落ち着き、自閉症の特性を心得た支援者との関係は、微笑ましいほど安定していた。

支援者とおでここっつんやドラえもん握手をしている姿はまぶしく、6年という歳月はこれほどまでに子どもを成長させるのだと胸が熱くなった。

あの子の好きなドラえもん。

あの頃、段ボールにクレヨンで描いて渡すと、こぼれるような笑顔を見せてくれた。

これからも安心できる環境で過ごしてほしいな。



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