長年断絶していた父が亡くなり、パリの高級アパルトマンを相続したマティアスは、アル中リカバリー中なうえ、借金だらけ。
マレー地区のこの物件を売却し、人生を仕切り直そうと考えてニューヨークからやって来たのに、アパルトマンは「ヴィアジェ」"en viager"(終身年金つき)不動産。
「ヴィアジェ」は、初めに少しの頭金を売主に払い、売主が生きている限り毎月定額を払い続けるシステムだそう。
しかも、売主(マティルダ)はその不動産に死ぬまで住む権利がある。
売主が早く亡くなった場合は、買主は少ない投資で物件を手に入れる事ができますが、長生きした場合は多額の投資になるわけです。
すごい賭けですよね。
それぞれに秘めた思いや傷を抱えている、マティアス、マティルダ、マティルダの娘クロエ、そしてマティアスの亡き父母を巡るこの映画。
その内容はさておき…
このヴィアジェというシステムについて、「人の命を賭けにするなんて」と揶揄するマティアスに対する不動産屋ルフェーブルのセリフがとても印象に残りました。
「これは運命の賭けなんですよ。
売主がすぐに死んだなら、それは引き継ぐのが運命。そうならない場合は、売主が生きるのをサポートする運命というわけです」
"It’s a game of destiny: if the seller dies quickly then it’s your destiny to replace them. If not, then it’s your destiny to pay to help them live."
同じ状況も、これを自分の運命だという見方で受け入れると、気持ちも生き方も大きな差が出てくるよね、と思いました。
マティアスはケヴィン・クライン、
マティルダはマギー・スミス
クロエは「イングリッシュ・ペイシェント」「サラの鍵」のクリスティン・スコット・トーマス
石畳のマレーの街並み、セーヌ川、アパルトマンの内装や広い庭も楽しめる映画でした。