むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター66

2019-10-09 06:55:13 | 小説
 昭和四年六月未明。北京の靴屋で店主が、顔にナイフが一〇本突き刺さって、死ぬという事件が起きた。ナイフは刃渡り一〇㎝ぐらいで柄の底が円形になっている。公安(中国の警察)が奥さんから事情を聞くと、「私は女性客の接客をしてて見てません」と言う。公安は次の一瞬に、未来のすべてを、かける意気込みを感じたが死んだ店主は、小作人の少女を香港に売り飛ばしている容疑で公安が捜査していた。公安の脳裏に、等身大のあやつり人形が浮かぶ。人形の手足が曲がるようになっていて、手のひら付近に細長い棒が左右一本ずつついている。男が二本の棒を動かして、人形をうつぶせにしたり、四つんばいにしたりしていた。靴の耐久検査をやっているようだ。公安が電話で香港の世界革命集団第二支店に確認すると、「北京に売った」と言う。性能を聞くと、「反動で連射するから銃口を固定しないと発射されない」と答える。外観を聞くと、「背負ってる発電機と電動モーターでコンプレッサーを動かして、圧縮空気で打ち出し器を動かすから銃口のなかが見える位置に必ず飛ぶ」と言う。「銃口が固定されてない場合は」と聞いたら、「一本だけ発射されて下に命中する」と言った。公安は住所を聞いてそこへ行く。買い手の男は、地主の用心棒だった。公安が地主に事情を聞くと、「ドライブしてるよ」と言う。公安が納屋の車庫で待っていると、自動車がきた。外に出て見ると運転席側の窓が開いていて、銃口が下を向いている。自動車が納屋の前でカーブして、男が運転しながらナイフを発射した。公安がタイミングを合わせて飛びはねると納屋の、壁の下段にナイフが一〇本並んだ。自動車が敷地をぐるりとまわってまた近づいてきた。銃口が胸もと付近に向いている。発射角度を覚えたらしい。公安は自動車に向かって走って、ボンネットに飛び乗って、銃口をわしづかみにした。男が急ブレーキをかけて、公安を振り落とす。自動車が三〇mほど離れて停止して、男がおりて発電機を背負う。銃身の下に、ナイフの弾倉をとりつけている。公安は「打ち出し器に歯車でもつければいい」と思いながらジグザグに走って近づく。公安が近づいて「おまえが靴屋の店主を殺したんだな」と聞いたら、「おれの女に話しかけたから殺した」と言う。男は公安に向けて二回発射したが一本ずつしか発射されてない。三回目で公安が銃口を蹴飛ばすと、ナイフが一本ゆっくり出てきて男の靴に刺さった。公安は男を逮捕する。