昭和四年七月未明。北京で工芸品店の店主が、びっくり箱のナイフで刺されて、死んでいる事件が起きた。死体は小型のナイフが胸に深く突き刺さっていて、死ぬ直前に開けたと思われる箱は側面からナイフが飛び出す構造だ。死んだ店主は香港の麻薬密売組織「ロンドン清教徒集団」ととり引きがあって、公安(中国の警察)が捜査していた。公安が香港の世界革命集団第二支店に電話で確認すると、「麻薬密売組織の北京清教徒集団へ送ったよ」と答える。公安は「薬屋で売ってる物をわざわざ密売して未来の子供たちに理解できるだろうか」と心配しながら住所を聞いてそこへ行く。公安は外から様子だけ見た。平屋造りの建物に、知的な感じの男がひとりいる。公安は紀元前の小部屋から出てきた人々がなにをやっていたか考えた。恐らく先祖は寿命と思考の、限界との関係を、策定していたと思う。同じ思考をくり返す原人と比較しながら、「長さ一〇mの槍を大人数で、飛ばした場合の結果」や「池をまだらにたくさんつくって散歩すると、なにを思うか」などの、膨大な文書が存在しているはずだ。机の上に箱が一〇個ぐらい置いてある。公安が静かに、建物に入って部屋のドアを半ぶん押し開けると、男と目が合った。男が箱のふたに手を伸ばす。公安があわててドアを閉めると、ナイフがドアに突き刺さった。公安がドアを全開にすると、男が「入ってこい」と言う。公安が低い姿勢で部屋に飛び込むと、男も低い姿勢で箱を用意して待っていた。公安は床を転げまわって、小さいテーブルを倒して隠れる。男が「足が出てる」と言う。公安が足をテーブルの陰に引っ込めると、壁の下側にナイフが突き刺さった。公安がテーブルを投げつけると、机の上にあった箱が二個落ちて、天井と壁にナイフが突き刺さる。公安は窓に飛び蹴りをした。着地してすぐ走って入り口にまわる。男は窓の外を見ていた。公安はドアのちょうつがいをキックして、ドアを外す。公安はドアを楯にして「送ったのはおまえか」と聞いたら、男は「未来世界の住人がどこに住んでるか確認するためだ」と答える。公安がドアの陰から顔を出すと、男が箱を向けていた。ドアを動かして楯にすると、ナイフがドアのはしに突き刺さる。男が箱をとろうとしていた。公安がドアの下を先にして、床をすべらせると男が転倒してドアに刺さっていたナイフの柄が、腰の辺りに当たって「痛いっ」とうめき声を上げる。公安は男を逮捕した。