阿嘉島の戦い
三月二七日朝。
南雲 カデナより。上はオーストリア人。
骨肉粉砕器を搭載したトラックが八台上陸している。ふたつきバケツが千個。ナチス囚人兵の死体を粉砕して豚にえさとして供給するらしい。
南雲 暗殺者ファイル以外を省略。
四六三四のSS ファイル名。チケット。
ナチス将校 今日から米国行きのチケットを売るんだ。そこの席だけ空けて、「ニューヨーク市場株価情報」の好業績銘柄特集を読みながら待ってろ。
五六三三 規模が三倍以上違って業界二位、三位の企業が多いな。株価がなぜか安い。ネオプツ真空管第二位の会社が異常に安くなってる。今期は配当も予定しているのに。
五六三三 十字路に面したカフェがあるだろ。夜は営業していないのに明かりをつけている。
五六三三 ハワイに姉妹店がある。いつも地球の裏側で弾が停止するように念じながら撃つ。カフェの仕ごとは、自ぶんの店に来てもらうことだ。
五六三三 嫌な予感がする。トイレで待機だ。男二人。黒髪のドイツ人が水を出す。トイレからおれが出てくる。いい帽子だろう(米国空軍の帽子)。二人までにしてくれ。カフェの仕ごとは賭け金が大きくなったルーレットを00で停止させることだ。
五六三三 米国人の身分証なら、新しくやってきたドイツ人の受けつけ係に聞け。カフェの仕ごとは客を陰険な目で見ることだ。
ナチス将校 普通に働いているやつは、米国に脱出することを考える。ナチスに入党して金を積めば脱出できると思う。ひとりずつここにくるから外で待たせろ。
五六三三 店にピアノを置いた。特務班のやつが即興でひく。米国空軍の帽子をかぶっているから、返り血の処理で時間はかからない。
五六三三 武器を持っているかは他の客が調べる。六か月手伝ったら本当に脱出可能だ。声が大きくなったな。ポーランド行きの通行証を渡して突撃隊に電話する。カフェの仕ごとは同業者と争わないことだ。
五六三三 おれが準備しているときに、からくりを見破るやつがいる。国防費ゼロプランをべらべらとしゃべり出す。そういうときは五か月ぐらいのやつをかわりに撃つ。カフェの仕ごとは、人の意見を聞くことだ。
五六三三 テーブルをふくだけで済むように撃つのが得意わざだ。カフェの仕ごとは作業を最小にすることだっ。
五六三三 米軍がやってきた。スーツケースの倉庫を見せる。日づけと時間を書いたのはおれだ。
終点。
林と二人でバケツ運びをやった。
M このバケツは密閉式になっている。豚のえさにしては豪勢だな。
スプールアンスから布地の帽子をもらった。帽子を装兵にかぶせる。
五六三三 悪趣味な亡霊はおれが撃つ。
四七四三の悪魔 地震になるから撃たないで。
三月二八日朝。
南雲 カデナより。上はチェコスロバキア人。
四六三四のSS ファイル名。自動書記。
担当SS その女は印刷会社で働いてました。
五六四一 プラハにはドイツ語を勉強している人が多く住んでましたっ。彼女の会社ではドイツ語辞典を作っています。しかし本当は高額紙幣を少しずつ印刷していました。
五六四一 ナチスが進軍してきました。町で毎日公開処刑をやっている。路地で黒髪のドイツ人がペルシャじゅうたんをひく。その上に手を後ろで縛られた市民が立つ。ナチス隊員が七、八人で小銃を向ける。隊長みたいなやつが大声で、罪状を難しいドイツ語で一五分ぐらいしゃべるっ。
五六四一 公開処刑のせりふをタイプ打ちしたわよ。火薬だけの銃で撃っているだけ。
ナチス将校 今日からナチスの仲間だ。ピストルだけで五六〇〇人始末しろ。
五六四一 殺人罪は絞首刑になるのよ。
ナチス将校 銀貨を一億枚積んだら生き返る。おれが死刑執行人だ。
五六四一 あたしのファイルなんか見てどうする気。
ナチス将校 ドアをあけて撃つ。部屋を物色して、銀貨を一枚探す。
五六四一 ドアはいつもあいているの。
ナチス将校 錠前屋が三〇秒であける。
五六四一 ピストルは二つ持ち歩いているから弾切れしないわ。
五六四一 四〇〇〇人突破記念にどうしてださい宝石をくれるの。
ナチス将校 古代兵士の亡霊がみえるだろ。えさを工夫して全部撃ち殺すんだ。
五六四一 みえるわ。べたつくやつね。まるでフォアグラ(あひるを地中に埋めてつくる珍味)じゃない。
ナチス将校 一番古い年代にどのぐらいいる。
五六四一 巨大な木を組みつけた神殿に数百体いるわ。
ナチス将校 えさにとりつかせて撃つんだ。
五六四一 あんた仕ごとにきれがないわ。ひのき舞台で踊ってるみたい。あんた選ばれたいんじゃなかったの。
五六四一 全部撃ち殺したわ。
終点。
四七四三の悪魔 きっとそれで地震になったのよ。
五六四一の悪魔 今さら遅いわ。あたしがベビーフードを食わせるわよ
M 死に神が悪魔を食べると、石になるんだな。
林 米国人は赤ん坊がときどきなにかしゃべって、無視すると負荷がかかるようです。
四七四三の悪魔 豚のえさを使って、死に神を石にするのよ。
つづく
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