人間の健康は幽霊によって左右されている。機械人間Dは西暦二二〇〇年代に病死幽霊を処理する生体反応内蔵人間型機械として開発された。二三〇〇年の現代では、病気の原因になる病死幽霊を、機械人間Dが処理するので家庭に、機械人間Dがいれば病気にならない。初期の物は持ち主にそっくりな個人記録を、入力するときに時間がかかっていたけど現在はわずか数分でできる。機械人間Dは食卓に座って、「夕食開始は午後七時を予定してます」のようにしゃべった。これは旧型の性能だが、現在では通勤や通学に同行して仕ごとや勉強の手つだいもできる。機械人間Dは病死幽霊を感知すると「幽体反応あり。××新聞で二一七二年に死去した編集長」みたいに、的確にしゃべった。これは文字入力で軽い間違いをしたときのようだ。機械人間Dには人間と同じある器官が内蔵されていて、幽霊を感知して識別する装置がついている。幽霊の識別には、膨大な量の記録が必要だけど、思考DNAの発見によって、人類すべての特徴が記録されていた。病体思考の特徴文字列は識別されて病死幽霊が機械人間Dに、憑依するごとに機械人間Dの、記録処理装置のごみ箱に病体文字列がたまる。なによりも生体反応部品の交換は大変だ。これは持ち主の個人記録を入力しなおす必要がある。そこで生体反応部品の耐久性を高める方法として、機械人間Dどうしで交配させることができた。これは動作部品用の潤滑油を交換させるだけだが、ごみ箱の記録を圧縮することができる。記録を圧縮してから旧型の機械人間Dに転送すると、病名や健康に関する助言をえんえんとしゃべり出す。旧型は家庭内に常駐する医者のような機能が特徴だ。機械人間Dの開発は、人間に病死幽霊が憑依する瞬間の画像を、とらえたことによって始まる。まず二一九二年に金の鉱山を発見した地層解析専門会社が、光の波長で幽霊が映ることを公表して、幽霊の解明が進む。幽霊が好む波長を特定して病死幽霊の特徴も画像でぶん析された。しかし人間との因果関係は不明だ。ところが情報通信で、原野に幽霊がたくさん立っていて、その一体が突然消えて、偶然に同じ装置で、試験をしていた人間の前に映る画像が公開される。そしてその人間がしばらくして、病死したために幽霊の憑依構造が判明した。病死幽霊の憑依は社会的脅威となって、科学と医学を総動員して機械人間Dが開発されて現在に至る。
おわり
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