― 年金の行方 ―
「社会保障クライシス」
野村総合研究所 山田 謙次著
東洋経済新報社 刊
ウォーキングをしていたら、農家の庭先でネギの皮をむいている親父さんを見かけた。歳の頃は60代。うちでもネギの植え替え時だと思っていたので声をかけた。ずっと農家をやってきたわけではなく、40数年間地元の鉄道会社にいたという。
話が年金のことになった。親父さんは「全部持って行かれている」と笑った。持って行くのは山の神に違いない。
余計な話をしたせいで、また年金のことが気になりだした。生涯出るのか、それとも途中でしぼんでしまうのかという心配である。
国の借金残高、2020年度末時点で約1200兆円、総人口で割ると一人当たり約970万円になる。
(2021.5.11フジサンケイビジネスアイ)
国の借金のうちほとんどを占めるのは国債。国債というのは周知のように、「税金だけではやっていけません。先々利息をつけて返しますからお金を貸してください」と言って国が差し入れた借用証である。この借用証を銀行や保険会社が買う。利息は “ほんのお気持ち” しか付かないけれど、ほかに儲け口を思いつかないから仕方がない。
不勉強の極み、後になって知ったが、銀行や保険会社が国債を買う元手は私たちの預貯金や保険料らしい。
それじゃぁ、と、ここで問題が出てくる。この預貯金がこの先減らないで残っていてくれれば、国債はいままで通りさばくことができる。しかし、なくなってしまったらどうなる。そうすると銀行や保険会社が国債を買うことができなくなる。「未達」である。
2025年には800万人の団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる。もともと年金だけでは生活できず、貯蓄を取り崩しているところへ持ってきて、病気や介護で出費がかさんでくる。取り崩しに拍車がかかる。
・・・国の取りそうな対策としてはいくつか考えられるが、一番可能性が高いのは収入をもっと増やす。例えば消費税を20%にする。出費はおさえる。年金も例外ではない。支給額を減らしたり、支給開始年齢を70歳にする。
そもそも今まで出すものも出さないであれも頂戴、これも頂戴とわがままを通してきた。そろそろ年貢の納め時である。
( 次回は ー 年金の行方 ー )