こんちには。
今回のてつがくカフェ@いわてのゲストDANさんは実は「彫金」をなさっているプロの職人さんです。
先日、「あの釜石で彫金をなさってる、アクセサリーデザイナーのDANさんですか?」とお問い合わせをいただき、改めて有名なお方なのだ、と恐れ入っていたところであります(※注 DANさんはフルーティストで、音楽活動もされていますがはありますが、本業は彫金師です。多彩な才能をお持ちの方でこの人の感性実際すごいです。絵もお画きになります)。
花巻でお会いしたとき、「(株)DAN」のパンフレットを一部頂いたのですが、宣伝用に紅茶の店「しゅん」に置いてきてしまい、うろ覚えなのですが、DANさんの家系は先祖代々彫金を生業としていたそうで、明治天皇に刀を献納したりしていたそうですよ。で、DANさんはフルート同様、独学で家に代々伝わる彫金技術の蔵書を習得しちゃうわけです。とにかく「あれがない、これがない」とお膳立てされてない環境に不満ぶーたれてないで、そんな無駄なエネルギーを費やす代わりに自分の想像力でなんでもつくっちゃう方なんです。アーティストなんです。
というわけで彫金という職業を知っていなくては失礼かと思い興味もあったので調べてみました。
彫金の歴史は古く、技法は古墳時代後期、渡来工人によって伝えられ、古墳時代の青銅器の剣や鏡などに彫られています。
奈良時代の東大寺大仏の連弁に、毛彫りによる盧舎那仏坐像の彫刻が見られたり、平安時代の後期、武士階級が台頭すると、彫金は刀剣、甲冑金具に装飾として施されることが多くなりました。鎌倉時代には、仏教の広がりとともに、仏具や仏像、寺院の飾り金具が多く作られるようになり、彫金技法が施されるようになります。 室町時代に現れた後藤祐乗(ゆうじょう)は彫金中興の祖と呼ばれ、格式を重んじる作風が『家彫』として後世に残っています。江戸時代には刀剣が、実用品からデザインの面白さを競う鑑賞本位のものへと変化し、この時期に多くの彫金職人が現れました。精密な彫金作製の技術はこのころ完成したといわれます。
江戸後期、公家出身の横谷宗(よこやそうみん)が、墨絵の筆勢ををそのまま鏨で表現した片切り彫刻の技法を生み出しました。その作風は、京都風の『家彫』に対して『町彫』と呼ばれました。これは刀剣ばかりでなく、煙管や根付にも用いられ流行となりました。明治維新の廃刀令で彫金の仕事は少なくなりました。
明治時代には、加納夏雄によって日本国内の金工が統括され、海野勝眠によって、目貫などの技法を用いた帯留め金具が制作され、華族・士族の間で愛用されるようになりました。さらに、政府主導で鋳金・鍛金・彫金の技法を統合した製品を製作し、輸出品並びに万博の作品を出品し、海外で高い評価を得ました。
従来から伝わる技術を応用して、現代へ彫金はしっかりと伝わっているんですね。
現在では彫金職人の数は少なくなってしまいましたが、自分だけの指輪やペンダントなどのオリジナルアクセサリーを作れるとあって、若い年代の方たちにも興味をもたれる方も少なくないようです。シルバーアクセサリーが流行し、ワックスからアクセサリーを作る技法が最近では主流となっていますが、彫金にはまねのできない”味”がありますのでこれからもさまざまな形で用いられていくと思います。
DANさんもfacebookで紹介しているように(こちら)、代々受け継がれてきた宝石の修理に来られる方や、自分だけの思い出の一点ものをオーダーされる方もたくさんいらっしゃるようです。
彫金職人の数は少なくなってきているとのことです。その貴重な後継者のお一人が今回てつがくカフェに来られる釜石在住のDANさんなのです。すごいですね(加賀谷)。
※次回11月23日のてつがくカフェ→こちら