近代建築撮影日記

日本全国の近代建築を
大判カメラ、一眼レフ、デジカメなどで
撮影した写真で紹介していきます

近代建築撮影講座(その3)『機材について』

2013-08-30 00:41:14 | その他

建築を撮影する機材のはなし。

・大判カメラ(シノゴ判)
体力と財力が必要だが、
自由自在にアオることが出来て、
あらゆるメーカーの、全ての大判カメラ用レンズが使用可能。
更に、フイルムホルダーを交換すれば6x4.5~6x12の中判フイルムにも対応できる。

類無き最強の機材である。

デジカメに移行するまでは、プロ建築写真家必須の機材だった。

私が大判カメラを使えるようになったのは
デジカメ移行後、安価なプロ用機材が出回ったため。
フルサイズ一眼+PC24mmで約40万円以上もするが、
選り好みしなければ90mmレンズ+大判カメラで10万円以下で手に入る。
アマチュアが大判カメラを始めるなら今!
今を逃すと、フイルムの供給が無くなるかもしれないし・・ 

【アオリの基本操作】
ライズ(上)・フォール(下)・・レンズを上下にスライドする・・建築の垂直を出す操作
シフト(左・右)・・レンズを左右にスライドする・・建築の縦の中心軸を移動出来る
ティルト(上・下)・・レンズの首を上下に振る・・被写界深度を意図的に操作出来る
スィング(左・右)・・レンズの首を左右に振る・・被写界深度を意図的に操作出来る

これらのアオリを組み合わせて駆使すれば、
素晴しい建築写真が撮影出来るはずだが、中々難しい。
特にシフトを使う時は要注意。
ある部分の歪みを補正すれば、別の部分が歪んで見えることがあるからだ。

最も気になる上窄みの補正はライズだけで出来るので
私自身の撮影はライズアオリのみでやることが多い。

【4x5インチカメラの種類】
モノレールカメラ・・・主にスタジオ撮影用。アオリの自由度が高く撮影しやすいが、大きく重いため持ち運びが大変。本体重量は5kg程度、最も軽量なTOYO VX125で2.7kg。サイズが大きいので公共交通機関による持ち運びには向かない。
フィールドカメラ・・・コンパクトに折り畳むことができ、持ち運びに考慮されているがアオリの自由度が低い。特に47mmなどの超広角レンズを用いる場合、ピント・アオリ操作に制約があるので要注意。本体重量は3kg程度、軽量な木製カメラで1.52kg程度。
なお、木製カメラを使用する場合は、以下のような注意点がある。
1.ちょっとした振動でもブレてしまうのでレリーズ時に細心の注意が必要
2.降雨などで濡らしてしまうと木の伸縮で精度が狂うことがあるので絶対に濡らさないようにする

・35mm~中判一眼レフ
一眼レフならばPC Nikkorなど、単一方向のアオリ機能付きレンズがある。
最近は、ティルトまたはスィングも出来るレンズがあるが、非常に高価。
上窄みの補正だけで良いなら、大判でなくても一眼レフで十分

【主なシフトレンズ】
 フイルムカメラ用
Mamiya RB67プロフェッショナルSD用 マミヤシフトL75mmF4.5S
Mamiya 645 セコールシフトC50mmF4
Nikon F 28mm・35mm
OLYMPUS OM 24mm・35mm
PENTAX K 28mm
※Nikon,PENTAXはデジカメに装着可能。
※多種多様なマウントアダプターが市販されているので
様々な組み合わせでこれらのレンズを利用することも出来る。
  
 デジカメ用現行レンズ
Canon EOS 17mm・24mm・45mm・90mm
Nikon F 24mm・45mm・85mm 

建築細部のアップを写すなら、100200mm程度の単焦点望遠レンズも欲しい。

・コンパクトカメラ 
ズームレンズはもってのほか。
コンパクトに設計しているだけに、
樽型・糸巻型の収差が酷いレンズが多い。
(一部のデジカメに、撮影後収差補正できる機能があるらしいが、
これこそ収差が酷いという証拠だと思う) 
出来れば単体レンズの機種を使いたい。

建築写真は全景写真が基本となる。
だから、写りの良い広角系単体レンズのカメラが必須。

【単体レンズのコンパクトカメラ】
 フイルムカメラ
RICOH GR1(28mm)
MINOLTA TC-1(28mm)
Konica Bigmini(35mm)
FUJIFILM NATURA(24mm) など
 コンデジ 
RICOH GR シリーズ(28mm)
Nikon COOLPIX A(28mm) など

以上が
胸ポケットに入る程小さいながら、
写りの良い単体広角レンズが付いたカメラ。

なお、少し大きめでズームレンズが付いた
中途半端にコンパクトなカメラを使うくらいなら、
レンズ交換の出来る一眼レフの方が
拡張性があって良いと思う。
ズームレンズを使いたい場合でも、
一眼レフ用の大きなレンズの方が
画質面で妥協の少ない設計である可能性が高いと思う。



表題写真は旧水海道小学校本館(羽田甚蔵/M14・S48移築/木2/県指定有形文化財)です。

この写真は、上述の「シフトを使う時は要注意」の例

建築の正面に対して90度、横のラインが水平になるようカメラをセットして
左右がバランスよく収まるようにシフトで調整して撮影。

この写真は左側から撮影しているので、
少し右肩下がりに写るのが自然な遠近感。
横のラインを水平に補正したつもりだったが
遠近感が狂い、奇妙に歪んで見える。

何をどう補正するのか?
そうすると、どこにシワ寄せが来るのか?
ちょっと難しいが、大判カメラのアオリは奥が深くて面白い。 
 



アオリのはなしは、説明不足で少し難解かもしれません。
今後、撮影本番についても記述していく予定なので、
詳しい説明はその折にUPします。



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