明けましておめでとうございます。
昨日、大晦日にふらりと旧網干銀行本店に行ってみると、
建築を買い取られた企業の方がおられました。
合わせて買い取った旧N金物店の内部の片付けをされていました。
有難いことに、この二つの物件の内部を見せていただき撮影することが出来ました。
今回は、さらに数日前に撮影した写真も含めて掲載します。
【網干関連の過去記事】(古い順です)
『姫路市網干区の近代建築(EBONY SW45で撮影)』
『網干の近代建築』
『網干の近代建築と町家』
『昔の航空写真(姫路・網干)』
『『歴史と景観のまち 網干を歩く』発売』
『【速報】旧網干銀行本店 前のアーケードが撤去!』
『旧 日本セルロイド人造絹糸 外国人技師住宅(ダイセル異人館)』
『網干の近代建築 2017』
『網干の町家と街並 2017』
『旧山本家住宅 2017』
『旧水井家住宅(姫路市網干区)』
『網干の近代建築と町家 2018【旧網干銀行本店が!!】』
使用カメラ・レンズ
SONY α7・Voigtländer SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 ASPHERICAL III E-mount・2018.12.31撮影
SONY α7・KOMURA 200mm F3.5 MINOLTA SR MOUNT(マウントアダプター使用)・2018.12撮影
旧網干銀行本店
(不詳/T10頃/煉瓦造タイル貼/姫路市都市景観重要建築物等)
1階内部、店舗のすぐ後ろ。位置的に考えると応接室っぽい。
今回は、ストロボを焚いたが・・
室内光で撮影すると、少し暗いが温かみのある描写になる。
このシャンデリア、店舗吹き抜けの天井にあったものだという。
大正時代にしてはデザインや風合いが新しいような気がする。竣工時の物か後年の付け換え、どちらだろうか?
更に奥の部屋。位置的に考えると頭取室か?
頭取室?の漆喰仕上げ天井。
元々、店舗から見える位置にあったと思われる大金庫の扉。
物凄く重い。
階段室の真上を見上げると。明り取りの窓がある。
説明が無ければ、上下感覚がおかしくなりそうな絵です。
二階奥の部屋には、畳が。宿直室だったのだろうか?
そして、2階大広間。今は床が貼られて2階になっているが、本来は店舗吹き抜け天井だった。
回廊も一部を除いて撤去されている。この吹き抜けと回廊は出来る限り復元するという。
ところで、塔屋3階へは行くことはできないのだろうか?
角の丸い所が塔屋の真下になるのだが、天井が張られている。塔屋3階の窓はダミーなのか?
2階にも小さな金庫がある。
旧N金物店
(不詳/不詳/木2/文化財指定なし)
タイルが剥がれて建築の行く末が心配でしたが、旧網干銀行と同じ企業が買い取っており、少なくとも店舗部分は保存再生するとのこと。
この建築、入ってみてびっくり!
旧網干銀行では塞がれていた吹き抜けと二階回廊に似た造り!近くに出来た銀行を見てインスパイアされて改造したのかもしれない。
真下から見上げるとこんな感じです。
SUPER WIDE-HELIAR 15mmは歪曲の少ない優秀なレンズですが、こうして見ると樽型の収差があります。
2階に登るとこんな感じ。
龍野の「伏見屋商店」を思いだした。さらに、神保町にある建築専門の「南洋堂書店」も2階回廊がある。商店として再生するなら、本屋向きかもしれないと思った。
いい雰囲気です。
店舗部分は昭和初期くらいの洋風看板建築の様相ですが・・
奥は純和風です。外見からは、全く想像していませんでした。
クドにカマドが残っている。よく見ると高い所に神棚が。恐らく、なにがしかの火の神様、もしくは火事除けの水の神様だろうか。
撮影していないが、店舗内には小さなお稲荷さんも祭ってあったと思う。
民俗学的にも貴重な資料になりそうだ。
そして、仏間らしき部屋は上質な座敷です。
建物全体を見た感じ、奥の生活空間で一番古い部分は明治、あるいは江戸末くらいまで遡るかもしれない。外観写真の側面に見える屋根の妻が元の町家の屋根だと仮定して建築の前面まで伸ばすと、2階が低い江戸末から明治初めの町家の高さになるように思う。
元々普通の町家だったが幾度か増改築が繰り返され、店舗部分外観は当時(昭和10年代だろうと思う)最新の看板建築に、内部は網干銀行に触発されて吹き抜け2階回廊に改造されたのでは?と想像する。
京町家によく見られる、鰻の寝床のような奥に細長い町家で、荒れてしまっているが坪庭もしつらえてある。
よく見ると、軒瓦も京風の一文字軒瓦だ。
この建築を見て改めて思いました、建築は中まで見ないと解らないですね。
建築を広角レンズで撮影すると、屋根が見えないことが多いので、
50年以上前の少しクモリのある趣味的なレンズではありますが
少し離れたところから200mmの望遠レンズで何棟かの建築を撮影してみました。
旧網干銀行本店 塔屋
ドームの形、美しいですね。
旧山本家住宅 望楼付き洋館
リズミカルな瓦の文様が美しいですね。
網干商工会館 側面
蔦が枯れて、半円の鎧戸が確認できました。瓦も洋瓦です。余り取り上げられることはありませんが、ちゃんとした造りの素敵な洋風建築です。
今回、旧網干銀行本店・旧N金物店を買い取った企業の代表者の方のお話を伺いましたが、
市町村が行うような整備して公開するだけでもない、
企業などが行うような綺麗に修復・再生・転用して収益を狙うという事でもない、
古い建築のシミや汚れのような歴史が刻まれた部分もできるだけ残して銀行時代の姿を復元し、網干という町全体の歴史も踏まえながら、地元の人々と連携して、より良い形で建築を保存・再生・伝承することを模索していく。
というような趣旨のことを仰っていました。
今後の工程についても大学の先生やヘリテージマネージャーと相談しながら進められるとのことでしたので、安心です。
2018年は、川まつり(花火大会)やアボナリエ(クリスマス・イルミネーション)が中止され町の活気が無くなったことを実感した年でしたが、
このような新しい動きがあり嬉しく思います。
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