近代建築撮影日記

日本全国の近代建築を
大判カメラ、一眼レフ、デジカメなどで
撮影した写真で紹介していきます

旧 日本セルロイド人造絹糸 外国人技師住宅(ダイセル異人館)とiPark(2019-2020)

2020-02-12 01:59:25 | 近畿

『旧 日本セルロイド人造絹糸 外国人技師住宅(ダイセル異人館)』で一度ご紹介したダイセル異人館ですが、2019年に改修工事が行われリニューアルオープンしました。iParkという公園に整備された周辺部も含めて再掲いたしします。

※使用カメラ・レンズ
SONY α7・Voigtländer SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 ASPHERICAL III E-mount
※()は撮影日、記載無きものは前の写真と同日撮影。



公園案内版(2020.2.4)


融合の軸(ダイセルの事業変遷)


ダイセルの歴史は1919年の大日本セルロイドの設立から100年となっていますが、


網干工場の歴史は1908年の日本セルロイド人造絹糸の設立に遡ります。110年以上前のことです。


上の写真は、設楽貞雄設計で1909(明治42)年建造の1号石炭ボイラーで、現存しています。(2020.2.8)


(2019.6.6)




ダイセル構内には戦前築と思われる鉄筋コンクリート5~6階建ての建築もあったようです。(2020.2.4)

戦前の網干には鉄筋コンクリートの建築は小学校の講堂しかありませんので、網干工場がいかに大きい工場であったか伺い知ることが出来ます。

融合の軸(ダイセルの事業変遷)と異人館の夜景(2019.11.11)


100周年記念モニュメントの夜景(2019.12.5)


iCube(2019.9.25)

最近のネーミングは良く分かりませんね。○○研究所という風なシンプルなネーミングの方がわかり易いと思いますが。

(2020.2.4)


(2019.9.14)


同 夜景(2019.12.5)


ダイセル異人館説明版(2020.2.4)


旧 日本セルロイド人造絹糸 外国人技師住宅(クラブハウス)

姫路市都市景観重要建築物等指定第3号のピンクの洋館は、賓客の宿泊などに使われていますので非公開です。緑の洋館と同形ですが、2階正面窓に鎧戸があり煙突は撤去されています。設楽貞雄設計で1910(明治43)年建造です。

(2019.11.2)


(2020.2.4)




旧 日本セルロイド人造絹糸 外国人技師住宅(旧図書館)夜景(2019.11.11)

公園のモニュメントが明るく照らされているのに対し、玄関灯のみでいささか寂しく感じます。
姫路市都市景観重要建築物等指定第2号の緑の洋館は、セルロイド資料館として平日のみですが無料で内覧可能です。こちらも設楽貞雄設計で1910(明治43)年建造です。

建物の中央に煙突があります。側面の窓回りなどに幾何学的な意匠があり、旧網干銀行との共通性を感じます。(2020.2.4)


下見板張りと縦板張りが適度に交錯し、小気味よいパターンを生み出しています。


屋根のパターンが以前とは違っていますので、吹き替えられたようです。


(2019.11.17)


一階玄関周りにバルコニーがあるのは、長崎グラバー邸などで知られるコロニアルスタイルとの共通点です。


バルコニーにはサンルーフがあり、室内にも明かりが差し込むようになっています。




(2019.11.17)


2階にベランダがあります(2020.2.4)


空中に向かって開く無用扉があります。ベランダに通じるようになっていたのか?下に下りる階段があったのか?改修前も同様に無用扉でしたので、その昔はどうだったのか分かりません。(2020.2.8)


外観を一回り見ましたので、玄関から入ります(2020.2.4)

扉枠のデザインもやや幾何学的でシンプルです。

まるで新築のように綺麗になっていますが・・

古い部分は再塗装していますが、壊さずに残しています。

古い建物のキズやシミ、汚れなどは刻まれた歴史の証しとして残すという考えもあり、
修復のやり方にも賛否両論あります。
最近では、この両論に対応しようとして、修復時に綺麗に塗り直しているのに、ほんの一部だけ汚れたまま残している。
というちぐはぐな方法も見かけるようになりました。



ひょうご住宅百選、姫路市都市景観重要建築物等、近代化産業遺産の認定書




トイレ内部

再塗装していますが、古い部分はきっちり残しています。
小便器やタイルは竣工当時の物ではなかったので、最新の物に取り替えたようです。

一階の三部屋を時計回りに回っていきます


扉を抜けて黒キューピーのある部屋に入って振り返りました・・

各部屋に暖炉がありますが、建築の中央に集中しています。
一か所で火を焚けばすべての部屋で暖が取れ、煙突も一本で済む。
効率的な設計です。

暖炉が使われなくなり、煉瓦で塞がれたのだろうと思います。






セルロイドの黒キューピーは貴重だといいます


階段を登って二階へ


八角形の親柱など、幾何学的な意匠が見られます。


半螺旋の階段と「幅木」部分の曲線のリズムが小気味よく感じられます。


トイレと共通のランプシェードは古い物です。セルロイドのステンドグラスは交換されました。


もしかしたら、セルロイドではないのかも。見た目では判断できないので確認しなくては!




書斎






化学遺産認定書。4件の指定があります。


子ども部屋


トイレの真上です。

かなり狭いので、本当に子ども部屋だったのかな?と思いました

寝室

左の窓は、ベランダへの出口です。








旧 日本セルロイド人造絹糸 外国人技師住宅(従業員コミュニケーション・スペース KUSU)(2020.2.4)

この建築は、何の指定もありませんが『姫路市史』には外国人技師住宅Aとして掲載されています。
正面にバルコニーがあり、他二棟と同じコロニアルスタイルの特徴を有していますので
同時期に設楽貞雄設計で建てられた可能性も考えられます。







(2020.2.8)


こちらはクラブハウスに泊まる賓客にふるまわれるという大吟醸酒。

非売品ですが、昨年11月のイベントで限定販売されました。



ダイセル異人館のように、網干に残る貴重な建築群の保存再生が促進されることを願って止みません。

以下は過去投稿記事のリンクです。網干は建築遺産の宝庫ですので是非ご覧ください。

【網干関連の過去投稿記事】(古い順です)

姫路市網干区の近代建築(EBONY SW45で撮影)
網干の近代建築
網干の近代建築と町家
昔の航空写真(姫路・網干)
『歴史と景観のまち 網干を歩く』発売
【速報】旧網干銀行本店 前のアーケードが撤去!
旧 日本セルロイド人造絹糸 外国人技師住宅(ダイセル異人館)
網干の近代建築 2017
網干の町家と街並 2017
旧山本家住宅 2017
旧水井家住宅(姫路市網干区)
『網干の近代建築と町家 2018【旧網干銀行本店が!!】』
『旧網干銀行本店・旧N金物店 ほか』
『旧龍野藩南組大庄屋 片岡家
『網干商工会館
『旧網干銀行(2019年4月-7月の状況)』
『旧赤穂塩務局網干出張所(現東京電機工業株式会社)』
『旧網干銀行(2019年10月)』
『旧網干銀行 湊倶楽部開店~(2019年11月~2020年2月)』



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