むかしむかし
ケーキがやたらと硬かった。
生クリームではなくて、
バタークリーム。
しっかり固まっている。
カブトムシのような硬さ。
それでも「美味しい美味しい」
と言いながら食べていた。
家族五人だったので、
五等分。
母が切り分けていた。
それを見ながら、
思わず大きいのを取りたくて、
手を出そうとすると、
「危ない」と言って怒られた。
比較的大きく見えるのを選んだ。
父は、食事の後は、
「明日にする」と言って
食べなかった。
明日になるとどうなるか?
父は、もう、
食べる気などさらさらなかった。
こうなれば、末っ子の特権。
しかし、
めっちゃ硬かった。
でも美味しかった。