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シロガネの草子

『我が身をたどる姫宮』 其の25 


池田蕉園 『小松引き』
 
 院の女一の宮様は、侍医の一人と看護師も連れて電気自動車・・・・この車は、赤坂御用地内のみの移動さい使用される車で、勿論環境に配慮したものです。

 上皇后様が今朝ご使用になられた人力車は、八十路の半ばを過ぎられた院や、百歳になられる大妃殿下方等、ご高齢に成られた方々が広い御用地内を、心行くまで、散策がお出来になられるよう、両陛下御始め、皆様方が、お金を出し合われまして、4台程購入されたのでした。

 春の桜も、秋の紅葉も美しい御用地です。今年の春、1台の人力に院と上皇后様がご一緒に乗られ、大妃殿下もご一緒に、桜の咲くなかを3台の人力車を連ねて皇嗣ご一家と院の女一の宮様を始め皇族方は、お拾い(徒歩・御所言葉)にてお供をして散策されたのでしたが、丁度、一の姫宮様のご降嫁の時期と重なっていましたので、それぞれ皆様方、思う事が多く、『心行くまで』とは、いかなかったようでした。この年の桜を、あれだけ複雑な想いで、見たことがなかったでしょう。

 院の女一の宮様をお乗せた車は今は、葉の色がすっかり黄色に染まった木々の間の道を走り、皇嗣家の私邸の玄関前で、車は止まりました。侍医と看護師は、直ぐに降りて、玄関前で立っておられる、妃殿下に上皇后様のご様子を聞きまして、急いで、奥に向かいました。


 そして院の女一の宮様は、義理の姉君でいらっしゃる、皇嗣妃殿下に歩み寄られて、


「君様(妃殿下の事・御所言葉)、誠に申し訳ありませんでした」

そう仰ると、妃殿下に頭を深々と下げられました。


「宮様・・・・・宮様もご存知でいらしたのですか」

妃殿下な、深く頭ををお下げになられる、女一の宮様をご覧になられまして、お側まで歩まれまして、そう仰いました。

「はい・・・・・。多分、わたくしが最初に、皇嗣様より『ご発言』事をお聞したと思います。わたくしも、お上の、あの当時の『御発言』を未だに、心が晴れない気持ちのままで、ございましたので、皇嗣様より、お話が、あった時には強くは、お止め出来ませんでした」

そう言われますと、院の女一の宮様は、頭を上げて、妃殿下を真剣な表情でご覧になられて、

「君様こそ、お上が、あの時に仰られた、御言葉そのままの通りの目に合われておりますもの。世間の心ない人々から、『人格もキャリアも否定されて・・・・』。皇后様とお姉様とでは、雲泥の差で御座いますわよ。皇后様の苦労など、比べるべきもありませんわ。お兄様が、お上と同じ事を、言われるのは、当然でございましょう」


「まあ、何て言うことを仰いますの、宮様。お言葉が過ぎますよ」

 妃殿下は、女一の宮様をそう言われて、おたしなめになられました。妃殿下のやや強い口調のお言葉を聞かれた、女一の宮様は、今はそれを言う時でないと、ハッとされ、


「申し訳有りません。言葉がすぎました。お許し遊ばせ。それよりも、上皇后様が、早朝より、こなた(こちら・御所言葉)にならしゃられたうえ、騒ぎを起こされた事、院におかれては、ご承知であらしゃいます。ご機嫌ことのほか、お悪く遊ばされて、『直ぐに仙洞御所へ、連れて来るよう』にと仰せられまして、わたくしが上皇后様を迎えに参りました」

「上皇后様が、今日の皇嗣様の『ご発言』をお聞きになられたら、どう、お動きにならしゃるか、分かっておりましたのに、お止め出来なかったことは、君様には、本当に申し訳なくて・・・・・」


「わたくしの事は、いいのです。でも、まだ未成年の若宮を皇嗣様は、騒ぎになる、『ご発言』のなかに入れられました。その事は宮様もご存知でいらっしゃいましたね。その事は、後でキチンとご説明を願いますわ。宜しいですね。宮様」

ゆったりとしたお言葉でいらっしゃいますが、しかし口調と違い、妃殿下のお目は、表情は、決して穏やかでは、有りませんでした。

「はい。ご納得頂けるまで、ご説明致します。君様」


(やはり、お姉様は、若宮を巻き込んだ事を、怒っていらっしゃるのだわ)

女一の宮様は、そう心の中で、おしゃられました。

皇嗣妃殿下は、お召しになられていらっしゃる、羽織のエリを正されると、女一の宮様と共に、上皇后様のいらっしゃる、お居間に向かわれました。


「君様、院の女一の宮様・・・・」

上皇后陛下のお側で付き添っていた唐糸は、お二人が来られる気配を感じて、廊下迄出て来て、そう言いました。


「ご機嫌よう、唐糸さん。朝、早くから騒がせてしまって、本当にご免なさいね」

院の女一の宮殿下は、頭を下げる唐糸にそうお声をかけました。そして、お居間の隣の和室にいらっしゃる、兄宮の皇嗣殿下に


「ご機嫌よう、皇嗣様には、お健やかに、ご機嫌良く、本日めでたくお誕生日をお迎えに、ならしゃっいました事、心よりお喜び申し上げます。この様な時刻で、恐れて入りますが、上皇后様を、お迎えに参上致しました」

そうご挨拶申し上げたのでした。

「まぁ、姫ちゃん。こんなに朝、早くからそんな身なりで、来たこということは、貴方も一枚噛んでいたのね。全く、姫ちゃんまで巻き込んで・・・・・・みーやも、君ちゃんも本当に酷いことをするのね」

 妃殿下と女一の宮殿下のお二方が、お居間に入られた後、皇嗣殿下にご挨拶された、女一の宮殿下が、上皇后陛下にお声をかける前に、お目を開けられ、女一の宮様のお手を取られそう仰られました。そして、


「院と、わたくしの愛しい一人娘まで、共犯者にするなんて、誰の入れ知恵かしらね」


そう仰る上皇后様は、じっと皇嗣妃殿下だけを見つめ続けていらっしゃいました。

 侍医の話ですと、お年故の疲労で、しばらくお休みになられれば、回復するとの事で、別に脈も血圧も問題ないとの事でした。そして、疲労回復の注射を上皇后陛下に打たれました。もし、何かあったら、お知らせ下さいと言って、侍医達は、花吹雪に案内されて、別室へと、下がったのでした。

 『別に異常はない』と侍医から伝えられた、上皇后様ですが、しかし直ぐに院の御所に戻られると、周囲に『大した事はない』と、思われるも嫌なですので、女一の宮様もお越しになられましたので、しばらく、こちらに居座るお心なのでした。

『妃は、知らなかった』と皇嗣殿下は、仰るのですが、ご自分が『こう』と思い込まれたら、それが、上皇后様の『事実』となられるのは、御成婚の時から半世紀以上の年月が、立っても変わりませんでした。こういうご性分の御母宮で、いらっしゃるのは、皇嗣殿下も女一の宮殿下も、もう十分過ぎるほどのご承知の事ですので、もう、とかく、強くは言われませんでした。

 院の女一の宮様は、妃殿下にそっと『お許し遊ばせ』と言われまして軽く頭を下げられました。強く言えば言うほど、その跳ねっ返りが、皇嗣妃殿下に来るのです。


 上皇后陛下のそういうご性分は、武蔵野の御陵に御入りになられるまで、変わらないのでしょう。しかし、そういうご気性が『自称・繊細』だと自負される、上皇后陛下の活力の源なのかも知れません。

 上皇后陛下は、ご自分が『こう』と思う、『健気な、お可哀想な』ご自分。『御慈愛に満ちた』ご自分。それを国民という観客のなかで上手く、演じる事がお出来になられる『稀代の女優』なのです。


 それが皇后陛下との大きな違いなのです。皇后陛下は、女優で言うと、世にいう『大根女優』なのです。演じるのが、下手なのです。


国民という観客のプレッシャーに耐えられませんでした。しかし、それがかえって、お上の、御目には、大層新鮮に見えられ、また愛(あい)らしく思えるのでしょう、皇后様が色々と問題を起こされても、お上の、皇后陛下への御寵愛は、現在でも、いささかも衰える事は、有りません。


 皇后様も現在では、お上の、深い御寵愛の中で、ゆったりとした思いで、日々幸福で、満たされていらっしゃるのでした。

しかも最近では、ご自身の半生を描いた・・・・・


素晴らしい漫画まで、世に出て参りました。それに対して、皇后陛下は、


祇園井特(ぎおん・せいとく)『京美人夏化粧図』 
お美しい太眉の(真実の)皇后陛下です。(真実は謎めいていた方がいいのです)


「まぁ🎵素敵な漫画ね♥️♥️わたくしの『辛い半生』(?)をこんなに綺麗に描いてくれるなんて、とても嬉しいわ。でも、わたくしはこんなには、若くはないのよ。まぁ~~どうしましょう。恥ずかしいわ♥️でも国民からは、わたくしは、きっと、そう見えるのかしら。フフフフフフ・・・・」


 御自分の新しい『伝説』が生まれたことに、素直に喜ばれていらっしゃいました。一方、上皇后様は・・・・・


「この年になって、こんな思いをするのだったら、早く武蔵野の御陵に入って、そちらで、院のお出でをお待ち申し上げたい。でも、わたくしが居なくなったら、院はどれだけ、御悲しみになられるか。もう他の事は思い残すこともないけども、院の事だけは、気がかりで・・・・・」


 上皇后様は、源氏物語の紫の上の様に、院の女一の宮様のお手を取られて、今にも儚く(はかなく)露の消えるが如くの有り様で、そう、言われるのですが、

「ただ、思い残す事と言えば、皇后さんや、君ちゃん達が、わたくしがずっと大切にしていた、可愛いお帽子(小皿・大皿形)達や、お着物、おもじ(帯・御所言葉)、ローブ・デ・コルテとお長服(ローブ・モンタト)等みんな、わたくしから取り上げた事よ。皆ね。あんまりだわ」


葛飾北斎 『番町皿屋敷』
「わたくしに取ってどれぼど、思い入れが深いものか、姫ちゃんだったら、分かるでしょう」


「・・・・・・・」

上皇后陛下のお言葉を聞きまして、お隣の和室におられる、皇嗣殿下は、聞き捨てならないと、声を大にして、仰いました。


「取り上げたなんて、心外ですね。国が今どういう状況下か、お分かりでしょう。着物やドレス等、今まで通りに新調するわけには、いかないのですよ」

「だいたい、もうお召しになられないのが大半ですし、しまったままでは、勿体無いでしょう。今、活用しなくて、どうするというのです」

皇嗣殿下は、若宮様がお側にいらっしゃる前で、怒りたくもないのですが、身勝手な御母宮様には、どうしても腹が立つのです。


そんな皇嗣殿下とは、逆に妃殿下は、

「上皇后様のお心遣いには、心より感謝申し上げます。お陰で、どれほど助かりましたか」

妃殿下は、そう言いますと深くお辞儀をしたのでした。そんな妃殿下に対して、何時もの事ですが、


「まあ、おしおらしい事・・・・・」

「わたくしが一番に大切にしていた、お着物や、デコルテなどは、目ざとく、みんなこちらに取られて、しまったわ」

「わたくしが、選んだ、あれもこれも、皆、女一の宮さんに差し上げたのに、何時の間にやら・・・・・・、こちらの、君ちゃん達がお召しになられることに、なったのしょうね。君ちゃんは、見かけによらず、本当に強かだから」

上皇后陛下の何時もの『思い込み』のお言葉に対し、院の女一の宮様は、


「取り上げたなんて、あんまりですわ。おたー様が、御所の女一の宮様に差し上げた御衣装は、女一の宮様ご自身が、『こんなに必要もないわ』とおっしゃって、こちらにお下げになられたのよ。当たり前でしょう。ご本人は、皇后様のお若い時分の御召し物を、全部頂けるのですもの」

そう、『正しい事実』を言われる院の女一の宮様ですが、しかし上皇后様は、

「女一の宮さんは、お上にお似ましで、本当にお優しいご性分であらしゃる、宮さんで遊ばされますからね。君ちゃん達にお気を使われたのでしょう」

 そう言われると、上皇后様は、ご自分が、お気に入りでいらした、数々のお帽子、お着物等の、お衣装をどこで、着たのか身に付けたのか等を、正確に語り始めました。


 それを聞かれる皆様方は、上皇后陛下の驚異的な記憶力の良さには、大変な驚きようでした。今までお召しになられた数々の御衣装やお帽子を語る上皇后陛下の瞳は、夢見る少女のように見えました。


 一通(ひととお)り語り終えられた、上皇后様に、ずっとその有り様をじっとお聞きになられていた、若宮殿下は、


「おばば様、お聞きして宜しいですか?」

高畠華宵 『古城の花』
若宮様から珍しく、おばば様へ質問を受けられた上皇后様は、少し驚かれましたが、


「はい、宜しいですよ。何で御座いましょう」

そう、ご機嫌良くお答えになられました。その上皇后陛下のお言葉を、受けまして、若宮殿下は、真剣なお顔で、


「そんなに大切になさっていた、お衣装やお帽子は、誰にもあげなかったら、どうなさる、おつもりでいらしたのですか?」

「おばば様は、すべて御自分の将来の御陵の、副葬品として入れられる、ご予定でいらしたのですか?」

上皇后陛下に対して、誰もが思っていた疑問を、質問されたのでした。


「まぁ」


「宮、上皇后様に対して、失礼な質問ですよ」


「あら、若宮様の仰る通りね。おたー様、本当にどうなさるおつもりで、いらしたの?」

「ハハハハ・・・・・宮、良い質問だ。でも副葬品には、なさらない筈だよ。おばば様はな、奈良の正倉院に納めるおつもりでいらっしゃる、そうお考えなのだよ」

皇嗣殿下のお言葉を、聞かれた、上皇后陛下は真面目な表情で、


「皇嗣さんのご推察の通りよ。若宮、良く聞いて頂戴。わたくしのお衣装はね、多くの職人方が、技の粋をかけて、わたくし一人の為に、作った特別なお品なのよ。百年、いえ千年先まで、残されるべき、素晴らしいものなのよ。だから、誰が着ていいという、お品ではないの。分かりましたね」


「・・・・・・・はい」


高畠華宵 『古城の春』
 なんだか腑に落ちないという感じの若宮様ですが、丁度、手元のスマホに着信音が鳴りました。二の姫宮様からのLINEで、シャワーが終わったので、早く入りなさいという言葉が載っていました。

「おもう様、ちい姉様が、シャワーが終わったと、知らせが届いたので、シャワーを浴びてきます」

「ああ、分かった」

皇嗣殿下に伝えられた、若宮様は、和室とお居間の境界迄来られまして、きちんと正座をされた上、


「おばば様、変な質問をして、申し訳有りませんでした。でも、分かりやすく、お答えて頂きまして、有り難う御座いました」

そう、若宮様は、上皇后様に仰り、頭を下げられると、お立ちになられて、ご自分のいらした和室を出て行かれました。


「若宮様も、段々と本当にしっかり遊ばして・・・・おもー様が、『生き甲斐と』とならしゃるわけですね。若宮様の行く末が、とても楽しみですわね。おたー様」

若宮様が居なくなるのを、待って、上皇后陛下がまた変な事を仰られない様に、院の女一の宮様は、先に先手を打たれたのでした。しかし、

「・・・・・・院は、近頃では、すっかり若宮に御心を奪われた、ご様子であらしゃって、わたくしは、居ないのも、当然なのですよ・・・・」

「しかしいくら、院が、若宮にお甘いのを、良いことに、あの子は、わたくしが、死んだ後の事をよりによって、わたくし自身に聞いて来るなんて・・・・・院のご寵愛を良いことに、少し、傲慢になっているのでは、ないのかしら」

「いいですか、皇嗣さん達も、あの子に決して、傲慢な態度を取らない様に、良く言い聞かすのですよ。若宮は、まだ『雲の上に』お上がりになられるとは、決まった訳でもないのですからね」


「おたー様、もしかしたら、若宮に焼き餅を妬いていらっしゃるのではないのですか?」

「前々から、俺もそう思っていました。八十路をとおに、過ぎていらしても、おたー様は、まだまだ女人(にょにん)でいらっしゃるのですね」


「上皇后様、若宮は、自分なりに、さまざまなな思い、疑問を抱いております。お聞き苦しい事を尋ねた事は、後で若宮に言い聞かせます」



「しかし、決して、上皇后様の仰る『傲慢』からでは、御座いません。それだけは、わたくしは母として、お伝え致します」


「そう、分かったわ。良く諭しておいて頂戴。それよりも・・・・・ねぇ~~君ちゃん。前からちょと聞きたかったのだけど、貴方、若宮がもし、皇位を継ぐという事がなかったら、貴方は、どうするの?」


「君ちゃん、貴方は、若宮を『雲の上に』お上がりになることを、自分の目標にしているようだけど、さっきも、言ったけども、国民の多くは女性天皇・・・・・つまり女一の宮さんが、将来、天皇とならしゃるのを、望んでいるのよ。それは分かっているのよね」


「はい。わたくしも、その事は、良く承知しています」


「君ちゃんは、若宮が将来、天皇となられる事を信じて疑いないようだけども、国の方針で、女一の宮さんが、東宮、そして、天皇様にお成りにならしゃれる事も十分、有りうるのよ」

「その時、わたくしは、居るか居ないか、分からないけど、若宮が天皇になれなかった、その時の貴方が、心配なのよ」


「恐れ入ります」


「君ちゃんの心が折れてしまって、愛しいみーや(皇嗣殿下)の夫婦仲が壊れてしまうのではないかと・・・・・心配なのよ。わたくしは、みーやの母親なのよ」


「だからね、本音では、貴方の心が折れるよりも、みーやとの夫婦仲が悪くなって、みーやが、辛い思いをするのが、その方が母として、とても心配なの」



「ねぇ、どうなのかしら、その時、君ちゃんは・・・・」


「上皇后様、わたくしは、皇嗣様の妻です。そして、三人の子供達の母親でございます。一の姫宮は、嫁ぎましたが、しかし相手は、皇嗣様、わたくし共に不安しか与えない、人間で御座います。きっと何かが起こるのでしょう」

「わたくしは、一の姫宮の事で、本当に鍛えられましたから、若宮が、恐れながら、皇位を継がれない事もありゆるというのも、想定に入っております。その時が、また大変でしょうから、心が折れている暇(いとま)も御座いません。その時の若宮が、その後、きちんとした人生を送れるよう、親としてするべきことは、御座いますから、その責任は生きている限りまっとう致します」


「若宮は、奇跡的に産まれた皇子で、御座います。本当に今日まで、健やかに育ってくれまして、昨日も、今日も、そしてこれからも、若宮には感謝しているのです」


「皇嗣様の事は、ご心配頂かなくとも、大丈夫でございます。20代の時から今日まで、ご一緒に歩んで参りました。この先、どうなろうと、最後まで、夫婦として生きて参ります」


「皇嗣様、わたくしはそのつもりで御座いますが、それで宜しゅう御座いますか」


妃殿下は、皇嗣殿下に若々しい美しい笑顔でそうおっしゃいました。

「ありがとう。この年で気恥ずかしいが・・・・・お前にそう言って貰て、とても嬉しいよ」

皇嗣殿下は、照れながらも、妃殿下にそうお答えになられました。

其の26に続きます。


邨田丹陵(むらた・たんりょう) 『大宮人』

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