伊東深水 『紅蓮白蓮の雪路』
月明かりが静かに木々に囲まれた皇嗣邸を照らす中、ことしで古希を迎えられた、皇嗣殿下は、15年前のご長女、一の姫宮様とのやり取りを、思い出さされて、いらっしゃいました。
一の姫宮様が、ご結婚されるさいには、
栗原玉葉口絵 『花嫁』
「あれだけ、騒動を起こした末、かの君と結婚をお許し頂いたのです。嫁いだうえはもう、こちらの敷居を踏もうとは、思いません。これからは、一国民として、そして根無し葛の君の妻として、皇嗣殿下方のご健勝を何よりも、祈っております」
そう言われました。・・・・・しかし周囲は想定の上でしたが、姫宮様もさまざまな経験をされた後に、ご実家へ出戻られたときには、
そう言われました。・・・・・しかし周囲は想定の上でしたが、姫宮様もさまざまな経験をされた後に、ご実家へ出戻られたときには、
栗原玉葉口絵 『長閑』
「おもう様・・・・申し訳ございません・・・・恥ずかしながら帰って参りました・・・・」
見苦しく、浅ましく、愚かで、周囲がどれだけ迷惑な思いをしても、相手への恋心を冷めることなく突き進み、そして一途に相手の事を思っての言動の数々・・・・・。
全て私情のみの感情で動いていた、我が娘、15年の年月が過ぎた今、こうして思い出されても、何て身勝手なことであっただろうか・・・・・姫宮様のこのご結婚騒動で、皇室の存在自体が大きく揺らいでしまったのでした。
我が娘ながら、弁解の余地もない、と言っても過言でない、なんと恥さらしで、あったのだろうか・・・・と皇嗣殿下は、一人の父親として姫宮様を情けなくも憐れに思うのです。
渡辺幾春 『梅見月早春』
そして、皇嗣殿下は、あの時の姫宮様の言動とその時の、有り様ことを思い出されたのでした。
皇嗣殿下
『・・・・・・』
姫宮殿下
『愛の力が、何よりも勝るのよ!!これからの困難だって、例え不幸なときでも、私はあの君への溢れんばかりの愛の力で乗り切って見せるわ!!』
善逸
「女に騙されて、借金したの!!それを肩代わりしてくれた、じじいが育てだったの!!」
善逸
「毎日、毎日、地獄の鍛錬だよ!!」
姫宮殿下
『根無し葛の君が、米国に留学なさってから、根無し葛の君や、彼のお母様への酷いバッシングがこれでもかと続いて!!あんなに辛い日々はなかったわ!!』
善逸
「死んだ方がましだって、くらいのー!!」
姫宮殿下
『これも内親王たる、わたくしのせいだと、彼に申し訳なくって申し訳なくって!!幾度も枕を涙で濡らしたわ!!余りに酷いバッシングが続くものだから、わたくしは、もう・・・・お別れしたいと、彼とお母様にもお伝えしたのよ・・・・・』
姫宮殿下
『辛すぎるけど、根無し葛の君やお母様のことを思うと、もうこれ以上・・・・わたくしのせいで、お二人にことに日本にいらっしゃるお母様のお体が心配で、もしものことがあったら、取り返しが付かないと・・・・・もう、わたくしの立場のせいで、辛い思いをさせるのは、申し訳なくって・・・・!!』
善逸
「最終選別で死ねると、思ったのにさっ!!運良く生き残るから、いまだに、地獄の日々だぜ!!」
姫宮殿下
『おもう様!!そう伝えた時、かの君は、何と言われたと、思う?
“君が内親王だからって、僕はその事を重荷に感じたことも、そうでなったらとか、そんな事を思ったことは一度だってないよ!宮様が皇族でいらしたから、僕は、宮様とこうして今でも、強い絆で結ばれていると、思うんだ。僕はね、これからの先、どんなに困難でも、内親王殿下である宮様と、別れようなんて、考えもしないよ!!„
・・・・・そう仰って、“お互いに頑張ろう„と、言われたの!!』
善逸
「うが~~~ーー!!怖い怖い~怖い~~!!」
姫宮殿下
『そんな、わたくしの立場を理解して、これからの人生を共に歩んで行こうと、キッパリ男らしく、わたくしに伝えた、根無し葛の君こそ!!男の中の男よ!!今時こんな、男らしい強さと、包容力を持つ人は本当に珍しいわ!!!』
姫宮殿下
『そんな根無し葛の君と出会えたなんて!!そんな男らしい強さと、包容力を持つ、彼と愛し合うことが出来たなんて!!あぁ~~わたくしは、何て幸せなの!!かの君がわたくしの人生の全て、正しく輝く太陽よ!!!』
『あんな素晴らしく、高潔な心を持つ、彼と別れる何て、あの時の、彼の言葉を聞いた時から、有り得なくなったわ!!あぁ~~~もう、根無し葛の君と別れる何て、考えるのも、そら恐ろしいわーー!!』
善逸
「もうすぐ鬼に喰われて死ぬんだ!!!」
姫宮殿下
『もし・・・・考えたくもないけど・・・・わたくしと、根無し葛の君が、別れることになったら・・・・わたくしはもう・・・生きていられないわ!!』
『もう、生きる屍も当然よ!!だって彼に、身も心も全て捧げてきたんだもの!!私の青春の全てが、彼なのよ!!おもう様だってそれは理解できるでしょう!!おもう様もおたた様も、私達と同じ年で出逢って将来を決めたのだから!!』
『もう、生きる屍も当然よ!!だって彼に、身も心も全て捧げてきたんだもの!!私の青春の全てが、彼なのよ!!おもう様だってそれは理解できるでしょう!!おもう様もおたた様も、私達と同じ年で出逢って将来を決めたのだから!!』
善逸
「生きたまま、耳から脳水を吸われてぇ~~~!!!!」
姫宮殿下
『私達の気持ちを誰よりも理解出来る、おもう様とおたた様が、あんな些細なことで、わたくしと、根無し葛の君との別れを誰よりも、望む何て、あんまりにも、身勝手よ!!』
『親として、恥ずかしくないの!!そんなんだから、職員が次々と退職するんだわ!!おもう様、もし、私達が、別れる事態になってしまったら、皇嗣家は、非難の嵐よ!!多くの人達が、きっとおもう様達を見限るわ!!』
『そうしたら、若宮の立場だって危うくなるのよ!!二の姫宮だって、きっと好きな人と結ばれなくなるわ!!そんな事態になってしまったら、私は二人の姉として、どれ程辛いか!!二人はわたくしの大切な宝ですもの、“大姉様„なのよ!!』
善逸
「嫌ぁ~~~~!!!嫌ぁ~~~~!!!!」
善逸
善逸
「助け~~て~~~~ぇ!!!!」
姫宮殿下
『あぁ・・・・!!週刊紙のあんな下らない憶測の記事だけで、何と多くの人達は、それに惑わされて、踊ろされているのでしょう。自分の事であったのなら、耐えられるけど、愛する彼と彼の大切なお母様の記事を見聞きする度に、我が身が切り裂かれるような、思いだわ!!愛に困難は、付きものとは、言うけれど、これはあんまりよ!!』
姫宮殿下
『世間からどう思われようが、それにめげない、根無し葛の君とお母様は、称賛に価するわ!!わたくしは、お二人の思いの強さに何としても答えるわ!!内親王たるわたくしにこうまで、勇気と強さを与えて下さる、お二人に出会えたのは、わたくしの人生の幸福よ!!いずれ、絶対に、お二人の家族になるわ!!えぇ・・・・なって見せる!!!それがお二人の“無私の心„にお応えする、わたくしの愛よ!!』
『おもう様、お分かりになられました・・・・。わたくしと根無し葛の君は、天に恥じない、愛によって結ばれているの。これからの困難だって障害だって、乗り越えてゆくわ。私の持てる全ての力を使ってでもね。誰に何と言われても、わたくし達が別れるなんて、あり得ないわ!!!』
『それに・・・・・おもう様もご承知でしょうけど、恐れながら、お上にあらしゃっては、誰よりも、わたくしに対して、御理解を示して下さって頂いているの・・・・・』
炭治郎
「どうしたんだ?大丈夫か?」
皇嗣殿下
『・・・・・もう、これだけ喋ったのだから、お前もスッキリしただろう・・・・お前の気持ちは、良く理解出来たよ。おもう様の心に良く刻み込んだよ・・・・』
『お上がお前の気持ちに、理解を示されていらっしゃるのは、勿論、知っているさ・・・・・お上はお優しい、慈愛に溢れたお方だ・・・・お上のご気性はというのは、ご一緒に育った、俺が一番理解している・・・・よ』
善逸
「ヒィ~~ヒィ~~・・・」
姫宮殿下
『おもう様・・・・根無し葛の君が、こちらに戻ったうえは、お願い!!一刻も早くお会いたい、会いたいの!すぐ近くにいらっしゃるのよ、わたくしを、待っているの。あぁ~~この時を幾度も夢見たことか!!おもう様、まるでハリウッド映画みたいでしょ。もう、夢見る心持ち~~、こうなったら、出来るだけ、早く結婚したい』
うこぎ
「チュン、チュン、チュンチュン」
天王寺松衛門
天王寺松衛門
「がぁ~~~~」
ブラック宮内庁
『・・・・全く、いくら親心と言っても、こんな縁談に関わなければ、ならないなんてね。仕事とはいえ呆れてものも言えない思いだったよ。全くそんな事・・・・
ホント、超関わりたくなかったよ。こればかりは、皇嗣殿下へもハッキリと伝えたよ。“内親王殿下と、根無し葛氏とのご縁組みは、皇室のお為にならないですと・・・・„そうお伝えしたら、殿下は、“宮内庁には迷惑をかけないようにする„って仰られて・・・・本当困ったよ』
『そしたら、“婚儀の準備や仕度は、可能な限り、私的で雇っている奥の職員達にさせるから„と、その代わりにね・・・・・』
ブラック宮内庁
『持参金は、慣例通りに用意して欲しいって・・・・まぁ持参金は宮廷費の余剰金の積み立てがあるから、こっちは、何億も出せるけどね・・・・。皇嗣殿下は、それをご存知でいらっしゃるから、お上にも何ぞお願いされたのか、お上も内々に、内親王の持参金は、これまでよりも多めにと、仰られて、それで、慣例より少し多めの1億5千万円、用意したんだ』
『あと、それと・・・・女性宮家のことがあるから、内親王殿下の持参金は内々では、3億円と決まってね、それで姫宮殿下は、内親王殿下の称号を放棄されたんだ。その3億円の残りはね、あのお方の個人資産から用立てたんだよ。あのお方は、えらい財産家だからね。でも、凄くお怒りでいらしたけどね』
参考画像 漫☆画太郎先生の自画像
『でも仕方がないよね。破談に出来なかったのだから・・・・ある意味の報いだよ。姫宮殿下のこのご縁組を、一緒に泥を被って欲しいと言う、皇嗣殿下のお考えだよ🎵そしてね、ご結婚後の内親王殿下には、例の政府が提案した、“皇女„ではなくって、お上からね、新たな“姫宮夫人„の称号も・・・・・ね、御下賜されたんだよ』
ブラック宮内庁
『宮内庁だよ。人の話を聞いていないの?いい良く聞いてね🎵僕達宮内庁はね、一番大切なことは・・・・お上と、皇族方がいらっしゃること、無職になると、困るしね。そして何よりも、美しい僕達の皇室を守る為にそういうことは表沙汰にはしないのも仕事の内なんだよ。そしてね・・・・』
ブラック宮内庁
『宮内庁はね、皇室の秘密の坩堝(るつぼ)なんだよ』
「そ、それは・・・・かの!!
1983年の『大奥』の・・・・・
~思えば、大奥とは女人の運命のるつぼでございました。大奥には女人の運命を思いも寄らぬ方向へ大きく変えてしまう、魔力のようなものが潜んでいたように思われます・・・・~by岸田今日子さんのナレーションのパクリ?!」
ブラック宮内庁
「そうだよ・・・・・良く分かったね。でもね正(まさ)しく今、の“皇室は、女人の運命のるつぼ„でしょう・・・・皇室の女人方の運命を思いもよらない方向へ導くのだからね✨だからね皆、関心を持つんだ」
伊藤小波 『秋草と宮仕えせし女人たち』
中村大三郎 『春興』
・・・・・内親王という立場であれば、我が身を律するのは、当然の事、教えなくとも、自覚として芽生えている筈であっただろうにと、思うのですが、しかしこれも、親の自分の育て方が、悪かったのだろうと、あの時、ご自身深く反省したものでした。しかし狂乱でも、姫宮様は、ご自分のお立場は、一応は自覚はなさっていらっしゃいました。
娘に甘い父親だと分かっていても、あれだけ、根無し葛氏に惚れ込んでいる姫宮殿下の有り様を目の当たりにしては、どうゆう結果になるのは、分かっていても、娘の思いを叶えて上げたいという、親心と、もうこれ以上は、あのままの状態では、皇嗣家の為にならないという家長として、ご自分の責任でもって、一の姫宮様と根無し葛氏との縁組みを進めることにされたのでした。
そしてその後、宮内庁を通じて事実上、姫宮殿下と、根無し葛の君との『結婚』へ向けて正式に進む事を、公に発言なさり、世の人々を大いに呆れさせたのでした。しかもその上、姫宮殿下のご結婚は、過去の内親王殿下のご婚儀と変わりなく、行われること、そして持参金も慣例通りにということも、伝えられたのでした。
勿論、多くの人達の大顰蹙を買ったのは、当然な事でした。そしておびただしいほどの抗議が宮内庁及び、皇嗣家に伝えられました。無論、自体の深刻さは、皇嗣殿下も、皇嗣妃殿下もご承知でしたが、もう、後には引き返すことは出来ませんでした。
ことに、人一倍責任感のお強い、妃殿下は、多くの抗議や、一の姫宮殿下の行く末を心底心配する、言葉を見聞きする度に、
(これが夢であったのなら、どんなにか・・・・)
そう、月並みですが、その時の妃殿下の嘘偽りのない、正直な言葉でした。
妃殿下は、一の姫宮殿下のご婚儀のお支度等は、自分は表向きには、動きたくはないと、ハッキリと皇嗣殿下にお伝えになられました。
妃殿下のお気持ちは、皇嗣殿下が一番ご存知でいらしたので、そのお気持ちを汲み取られて、皇嗣殿下自らが、姫宮殿下のご婚儀の采配をなさることになったのでした。
皇嗣殿下は、以前からご自分の姫宮方はのご婚儀は出来るだけ、華やかなお支度と、お式をなさりたいと、お決めに成られていらっしゃいました。
その為の、積立金も妃殿下と、共に既にかなり以前から、なさっておられましたので、これは父親というお立場でしょうが、あんな男でも、一の姫宮殿下にとっては、一世一代の晴れの舞台ならば、背一杯の事をして、ご降嫁させると、そう、強く決心されて、老女の花吹雪や、御用掛の前の老女の唐糸達に、
「世間であれこれ言われているのは、十分知っている。でも世間体を気にして、ショボいものにはしたくない。どんな経緯を辿ったうえの婚儀とは故、俺にとっては、一の姫宮は、大切な娘だ。その娘の一世一代の晴れの舞台ならば、華やかなものにするつもりだ」
「当家から始めて、送り出すのだから、今までの伝統を重視するのは勿論だが、十分な支度をしてやりたい。姫は、着物が好きだから、本人の一生分の着物や、帯も用意させたい。宜しく頼むよ。・・・・・どうせなら荷飾りもするか?」
そう、仰せられまして、二人を呆れさせたり、驚かせたり、したのですが、しかし皇嗣殿下が、二人の姫宮殿下が幼い頃から、そう、仰せになられていたのを、知っている、二人ですから、
「もう、こうなったうえは、開き直って、華やかなお支度をなさった方が、宜しゅう御座いましょう。長女の婚礼仕度は、次女より華やかにするのが、一般的でございます。ましてや、皇嗣家の一の姫宮様でいらっしゃれば、尚更で御座いましょう」
「わたくしも、同感で御座います。日本国の象徴であらしゃる、お上の始めての、姪御の姫宮様のご婚儀、日本の民族衣装である、お着物をこれ以上ないほど、ご用意されて、送り出されるのは、理に叶っております。着物は、わたくしも目が肥えていますので、皆さまをあっと言わせるような、着物の数々を、ご用意致しましょう」
お互いに、口々に言いまして、賛成したのでした。正直余りの世間の喧しい声に辟易していましたので、何か気晴らしが欲しいと、内心では唐糸や、花吹雪達職員は、そう、思っていたので、反対する気は有りませんでした。
例え、地味なものにしても、もう、この婚儀自体反対する人達が多いのです、地味にしようが、華やかにしようが、悪く言われるのだから、それなら、きちんとした方が、いいと、二人は思ったのですが、妃殿下のお気持ちを思うと、二人も子を持つ親ですので、
(母宮としてのお気持ちは、いかばかりか・・・・)
高畠華宵 『落葉』
と、妃殿下の姿を見ると、心が痛むのでした。
花吹雪と、唐糸が、皇嗣殿下が一の姫宮殿下のご婚儀を出来るだけ華やかなものにして、ご降嫁の際のお支度も、十分なものを用意する、お考えだと、妃殿下に伝えると、妃殿下は静かに微笑んで、
高畠華宵 『砕ける月影』
「その事は、皇嗣様よりお聞きしているわ、喧しく言われるだろうけど、良いものを、持たせてあげましょう。唐糸さん、花吹雪さん、面倒を掛けて、申し訳ありませんが、宜しく頼みます」
そう、仰いまして、二人に対して頭を下げられたのでした。
一の姫宮殿下は、自分では思ってもいないほどの華やかな支度をすると父宮である皇嗣殿下からその事を聞かれて、大変驚きました。ご婚儀が正式に決まってからは、徐々に落ち着きを取り戻されていらっしゃいましたので、
高畠華宵 『さくらんぼ』
(根無し葛氏とは、両殿下もご公認で、度々二人でホテル等にも泊まっていたのでした)
栗原玉葉口絵
「・・・・・・おもう様の暖かいご配慮を深く感謝申し上げます」
そう、言われまして、父宮様に、深くお辞儀をなされました。しかし、
「でも大丈夫なの?そんなあからさまなことをなさって・・・・私だって世間の喧しい声は、届いているわ、おもう様達が矢面に立ってこれ以上、嫌な思いをしたら・・・・・」
そう、不安気なお顔をなさって皇嗣殿下を見つめられたのでした。
その目は、もう、狂乱と体を出していた目では、なく、根無し葛氏に恋心を募らす、以前の一の姫宮殿下の目をなさっておられたのでした。
特別篇其の4に続きます。
高畠華宵 『胡蝶』