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シロガネの草子

我が身をたどる姫宮 其の十二 ~三年の果て~


鏑木清方 《桜狩り》

白菊夫人は新年の一日が終わる頃、忘れずにはいられ無い結婚の時を思い出していました。


文字通りの『愛と青春の旅立ち』的な結婚でしたが、あの時は生涯、夫の葛(かつら)氏と添い遂げ、どんな苦難にも耐え、二人で共に力の限り乗り越えて、夫婦の絆を深めてゆく・・・・。


それは自分たちの結婚を小馬鹿にし、ヒステリックに反対した人達を見返してやりたいと云うお気持ちが、白菊夫人の心にあったのは嘘偽り無い事でした。

でも今を思えば、弁護士となってから自分を迎えに来てくれるのが、筋であったと思うのです。それから始めても良かったのではないかと、今更ながらそう考えるのです。


須藤しげる《挿絵》

ただ夫人の方も・・・・異国の地で元皇族と云う立場を上手く利用して、夫人なりの自立したやりがいのある仕事に着いて働いてみたいという、お気持ちも強かったのも事実でした。


山川秀峰 《黒百合》

自分自身の為に働く、皇族では決して得ることが出来ないことです。あの時は、


橘小夢 《お姫様》

(嗚呼・・・・やっと解放された自由になったのだ🎵嘘偽りもなくやりがいのある事が出来る。皇族時代の人脈もその為に大いに活用するわ)


山川秀峰 《春光》

ここまで来るまでに、心外な波風が立ちながらも、最後まで厄介な立場にいる自分との結婚を諦めず妻に迎えてくれた、根無葛氏には、本当に感謝していました。

その一方で、この人との結婚を諦めてしまったら自分は一生結婚出来ない・・・・当時の夫人はいわゆる強迫観念に囚われていました。


木村斯光 《もだえ》


何といっても、葛氏が留学して会うことも叶わない直に触れ合う事も出来ない、あの三年は白菊夫人にとっては長く苦しい試練の年月でもありました。


鏑木清方 《砧》



~森昌子さん~

『あなたを待って三年三月』

約束した日は もう近い

三年三月に やがてなる

あなたの帰りを 待ちながら

私はきれいに なったのに

おぼろの月なら 雨になる

降ったら 傘さし 迎えに行こう

りんごの花びら 封筒に

挟んで送った 夏のころ

あなたの返事は まだ来ない

心は届いた はずなのに

夕焼け雲なら 晴れになる

晴れたら きもので 迎えに行こう

指切り 口づけ 何もない

好きだと話した 事もない

あなたと何も ないけれど

信じて待っても いいという

こだまが響けば 風になる

吹いたら 顔伏せ 迎えに行こう

それ故、二人の結婚会見の時、夫人は有頂天になっていました。


池田蕉園 《七夕》

ピンクのロ―ブ・モンタントに大きな白と赤の薔薇と、かすみ草を組み合わせたヘッドドレスという華やかな装いの白菊夫人は、壇上に上がる時、何時もの通りに背筋を伸ばしスカートを少し上げて登り席に着ました。

夫人のその立ち居振る舞いは公務の時と同様に見事でした。しかしその後、清々し程に、勝ち誇ったお顔で、

「わたくしは、根無葛(ねなし・かつら)さんを心から愛しております。その気持ちはどんな時でも変わる事はありませんでした」


それからこの数年間の溜まった思いを、

「この数年、世間ではわたくしどもに関して、事実と余りにもことなる、ストーリーが作りあげられて、大きく報道されて参りました。それらを見聞きする度、わたくしは大変心苦しく、何より、根無さんに対して申し訳なく思っておりました」

「そのような状況化のなかでも、根無さんは事実を見誤る事なく、ご自身も心無い中傷に晒され、お辛いなかでも、わたくしをしっかりと支えて下さり、ずっと励まして下さいました」

「・・・・海外で暮らす選択を根無さんに進言したのは、わたくしです。異国の地で穏やかで静かな落ち着いた生活を営んでゆきたいと、思ったからです」

この会見は殆ど、夫人が中心となって、口を開いておりました。時々聞きようによっては、なんとも嫌味な事も言われたのでした。


丸山比呂史 《夏の苑》


隣の根無氏は、やっと結婚出来たのが嬉しいのか、他の思惑が有るのか、時々、口をほころばせていました。


稲垣仲静 《太夫》


その様子は直に見ていた記者達やテレビ等で視聴していた人達に何とも無く良くない印象を強く与えました。


鏑木清方 《朝涼》


(矢張・・・・そうなんだろう)

心有る人達はそう思ったのでした。

心配と不安が入り交じった思いをする人達が居る一方で、当の白菊夫人は、天にも登る気持ちでした。


高畠華宵 《もみぢ葉》

これでわたし達はようやく幸せになれるのだという確かな気持ちでもって結婚して間も無く、夫婦で米国へと向かったのでした。


・・・・私達だけの幸せな結婚。


多くのしがらみから解放感と、異国での本格的な二人で営む生活に若干の不安感を持ちながらの旅立ちでした。

そんな夫人の様子を皇嗣家の方々はそれぞれどんな思いであったのか、押して知るべきです。


鏑木清方 《墨田の桜》

あの日・・・・全国注目のなか、夫人は結婚の為、皇嗣邸を出て行かれるので、朝からその支度等で忙しく、マスコミも大勢来ておりましたからとても騒がしく、邸内に居る人は皆、職員まで、ピリピリしていました。

その日、ご一家お揃い時、皇嗣殿下は仕立ての良いス―ツ、若竹の親王は学生服、皇嗣妃清香殿下はクリ―ム色、撫子の姫宮はわざと地味な濃いグレー色のマジョリカ御召しをお二方は着ていらっしゃいました。


《マジョリカお召》


帯はお二方共に控え目なお色を締められて、晴れの日の白菊夫人・・・・当時はまだ姫宮の装いを一番に引き立てるようにお心を砕かれていたのでした。


高畠華宵 《鏡》

お祝い御膳の朝食では、箸が進むのは白菊の姫宮だけで、ご両親は、

「雨が降らなくて良かったね」

「・・・・そうで御座いますね」

「やかましいな、何台ヘリを飛ばして居るんだ」

「さあ・・・・」

「気にならないのか」

「勿論、殿下同様に気にしております」

寒々としたご夫婦の会話が行われていましたが、皇嗣妃清香殿下は様々溢れる感情を押さえ込まれていました。

そんな“親の心子知らず”状態の白菊の姫宮は、これからの葛氏と新婚生活に、溢れんばかりの希望に胸を轟かせて、晴れやかな表情を変える事はありませんでした。


伊藤幾久造 《春宵》

白菊の姫宮は、

「若宮はやっぱり見送りに出られないのね」

「お姉様、若宮は学業優先よ」


高畠華宵

浮かれ気味の姉宮の言葉に撫子の姫宮は流石に苦笑いをされながら答えられました。

若宮は、間違いなく話題になるであろう華やかな装いの姉宮と憮然とした父宮。奈落の底に落とされた様な母宮と、何処までも姉に寄り添うとされる二番目の姉宮のそれぞれの姿を注意深く、ご覧になられていらっしゃいました。

ただ余りにも嬉しそうな長姉の姿に若竹の宮は言葉を出さずにいられず


山本タカト 《天守物語》

「大姉様、やっぱり俺、見送りに出ようかな。皆揃った方が良いと思うんだけど。それより今日の会見、大姉様の言う言葉の方が多いんだろ?ちゃんと全部、頭の中に入ってんの?」

若竹の宮の問に、白菊の姫宮は微笑みを浮かべて

「心配性ね。大丈夫よ。見送りに出てくれるの?そうよね、姉の結婚の日ですものね、遅刻したって平気よね」

テンション高く言われて、ご両親のお顔を見ながら


「お目出度い日ですもの🎵先生だって分かって貰えるわよね」

清香妃殿下は姫宮の言葉に、強いて落ち着いた表情で若宮の顔を見られて


須藤しげる 《秋風》


「若宮、昨日のうちに決めておいたら良かったのですよ。朝、急にそうすると決めてしまったら先生に、ご迷惑をかけてしまうから、止しなさい」

皇嗣殿下も

「おたた様の言う通りだ、急に変えては、また痛くもない腹を探られるかもしれない、何時もの通り、登校しなさい」

と、仰いました。

若竹の宮は姉宮のこれ迄の騒動で、ご両親の思い詰めた表情はこれまでも幾度も見た事がありました。


ご利発な若宮ですので、自分は表に出したくないだろうと察して「はい」と答えられました。

(呆れた、おもう様達って・・・・お堅いわね)

機動戦士ガンダム 水星の魔女』

ミオリネ嬢
「水星てお硬いのね」

ご両親と弟宮のやり取りを見ていた白菊の姫宮はそう思い、撫子の姫宮の方見て苦笑いしましたが、それに対して妹宮は何も言われず美しい微笑みを浮かべていらっしゃいました。


中村大三郎 《名月》

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コメント一覧

春日野
眞子夫人夫の司法試験合格が報じられ、夫人も皇室関係のお行事に参加なさらず、アメリカに永の謹慎をして頂きたい思いです。
マグノリア
「機動戦士ガンダム 水星の魔女」見ております。
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