河瀬直美監督、永瀬正敏主演の映画「光」を鑑賞
カンヌ国際映画祭の常連監督の河瀬直美氏の新作は、視力を失っていくカメラマンと目の見えない方に映画を伝える音声ガイドの女性とのラブストーリーで、河瀬作品の中で、個人的には一番好きな作品になりました。
舞台の中心は、映画に音声ガイドを付ける為にモニターとなる盲者のための音声ガイド制作会社。永瀬正敏演じる視力を失っていくカメラマン中森は、音声ガイドの仕事をする水崎綾女演じる尾崎に、何かと苦言を呈する。難癖をつけられているような感じを抱く尾崎でしたが、写真家としての中森に興味を持つ中、次第に彼に惹かれていく。
河瀬作品には、欠かせない奈良の自然と実際に目の見えない方をキャスティングするアマチュアリズムが老若男女の俳優たちと呼応することで、音声ガイドでの制作現場に新鮮な空気が生まれ、現場の緊張感が静かに増幅されていました。
また、映画の中の映画監督と主演の老人を演じた藤竜也さんや尾崎の上司であり、映画の相手役の神野三鈴の言葉を感じ取りながら、成長していく尾崎の変化にも注目してほしいです。
DVDなどでは、音声ガイドのついた作品が増えてきましたが、実際は目の見えない人々が使用して映画を楽しんでいる姿を観たことのないのが現実で、音声ガイドをキーワードに、これほどまでに濃密な作品が出来たことに驚きを隠せませんでした。
後から気づいたのですが、音声ガイドの無料アプリもあるそうで、イヤホンを耳にあててながら、時に目を閉じながら見えない世界に想像を広げてみたいなと思いました。