本日の映画レビューは、ルーカル・ドン監督の最新作でカンヌコペティション部門でグランプリを受賞した「CLOSE/クロース」です。
前作のガールではトランスジェンダーの青年がバレリーナを目指す姿が感動的でしたが、今回は打って変わりフランスの農村地域を舞台に幼なじみで13歳の二人の男の子が、入学先で起こる些細な言動がをきっかけに起こる悲劇からの再生を描いた人間ドラマが展開されます。
主人公のレオとレミは演技経験が少ないながら、幼き頃から親密な関係を揶揄されたことで起こる少年の心を揺れを見事に演じていて、美しい田園地帯を舞台に濃密なドラマが展開されていて感動的です。また家族の関係や教師や生徒などの関係が成熟した社会を感じながら物語のテーマを明確にしており好感を持ちました。
今回の作品では前作の印象が強いのか、ある評論家は同時期に公開されカンヌでも評価が高かった是枝監督の「怪物」と重ね合わせ歪曲した評論をしていて少し不愉快な思いを持ちました。今回の「クロース」は誰もが感じる少年の親密さがもたらす誤解が一因しています。誰の目にも、怪物は日本に根差している社会問題がテーマでクロースは思春期に起こる子供たちをテーマにしていることは明白です。社会問題で比較するなら日本とフランスの教育の違いを感じます。
ルーカス・ドン監督は、誰もが起こるであろう悲劇からの再生を美しい情景と絡めながら、心の奥底に染み入るような青春ドラマを描き出しました。新しいカタチの青春劇をぜひ鑑賞してみてください。