本年度アカデミー賞ノミネート作品で、少年のひと夏の恋を描いた「君の名前で僕を呼んで」を観賞
本年度アカデミ―で脚色賞でオスカーを獲得した本作。他にも作品賞、主演男優賞、歌曲賞にノミネートされていましたが、どの賞もオスカーをとっても、ふさわしい秀作でした。
監督は、89歳の名匠ルカ・グァダニーノ。そして、脚色はジェームズ・アイヴォリー。二人の巨匠により紡がれた作品のテーマは、甘酸っぱいひと夏の恋が描かれた青春映画ですが、過去の名作とは違うのは、恋する相手が同性なんです。
主演はディカプリオの再来と言われ22歳にして主演男優賞にノミネートされたティモシー・シャラメ。相手役にはコードネーム U.N.C.L.E.のアーミー・ハマーが演じてます。
舞台は1983のイタリアのある避暑地。17歳のエリオットは、考古学者の父の助手として24歳の大学院生オリヴァーと出会います。アメリカ人のオリヴァーの自信に満ちた姿に反発していたエリオットですが、次第に彼に惹かれていきます。別れが近づきエリオットは、自分の中にある不思議な思いに戸惑いながら、オリヴァーに告白します。オリヴァーも出会いからエリオットのことが好きだったのです。
男女のひと夏の恋とは違う、エリオットの中にある性の眼覚めと彼を受け入れるか否かで悩む大人としてのオリヴァーの思い。二人のやりきれない思いが、見え隠れしながら進む新しい形の青春ドラマをイタリアの美しい風景に加え、光や水、風などの自然の音を交え、さらに古代ギリシャの彫刻遺産を性を超えた美しさとしてたとえ、どのシーンも美しさにあふれてます。
また、未だ性差別の残る1980年代の背景の中で、主人公に向けられる人間愛や家族愛などが内包された人間ドラマとしても見ごたえがありました。
年上の女性に向けられる甘酸っぱいひと夏の青春映画の名作は数多くありますが、同性愛をテーマに青春映画として完結する新しいカタチの代表作となると思います。