映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、死刑囚の息子を持つ過激な父親を三浦友和が熱演した「葛城事件」です。
監督、脚本は「その夜の侍」で監督デビュー。市井の人々の中にある狂気を表現して注目を浴びている赤堀雅秋。今回も、突然息子が無差別殺人を犯した死刑囚となったことで、家庭が崩壊を主人公の父親を中心に描いています。
三浦友和演じる葛城清は、父親の金物店を継ぎ、二人の息子を育ててきたが妻との関係も冷え込み、次男は引き篭もり、家族を持った長男は会社を解雇され再就職先を探す日々をおくっている。マイホームを建て理想の家族を作れたはずの男が、妻の家出や息子の犯罪により家庭崩壊が進み、孤独の日々を世間にぶつけながら生活を送る。
加害者家族の側を徹底的に描き、死刑囚となった息子の心理状態をつぶさに示しながらも、解決の糸口さえも導き出させない父親の姿を通じて、息子と父親の生と死の執着を対称的に描き切った問題作と言えます。
大半の人は、この現実を他人事としてしか感じることが出来ず、父親と息子に嫌悪感しか抱かないと思います。だからこそ、三浦友和の迫真の演技が光、絶望のみしかない状況下にある人間の弱さとそれでも生き続けていかねばならない重い責務を感じる作品でした。