本日の映画レビューは、是枝裕和監督、坂元裕二脚本による話題の映画「怪物」です。
はじめに率直な感想として凄いもの見せてもらいました。個人的には是枝作品の中ではベスト1です。
物語は大きな湖のある小学校。安藤サクラ演じるシングルマザーの麦野早織は帰宅した息子の湊の姿を見ていじめにあっているのではないかと学校に抗議をします。子供同士のけんかに思われたいじめは、クラスの星川依里の証言で担任教師の保利によることとなり、保利は責任をとり辞職。事態は収まったかのように思われた矢先、湊と依里が忽然と姿を消してしまいます。
物語は前段での一連の流れから、二人の蒸発を境に流れの中にある真実の事象が明かされていきクライマックスを迎えます。こうした手法はミステリー映画の中ではよく使われる手法ですが、是枝と坂元がタッグを組むとここまで繊細に濃密な展開になかるのかと感嘆します。しかも、子供たちのみならず、教師や親までそれぞれが抱えていた問題が白日の元に晒されていくのですが、誰一人として悪人として描かれておらず、すべての事象が美しい線で繋がっていきます。その線を繋いでいくだけでも十二分に楽しめる作品ですが、主役を演じた湊役の黒川想矢君と依里役の柊陽太君がまばゆいほどに光り輝いていました。さらに言えば音楽を担当し遺作となった坂本龍一の美しい旋律が映画の見えない演出に深く関わっています。
子役を使い社会の問題に鋭くメスを入れる是枝監督と若者たちの心の機微に深く入り込む坂元脚本による見事な化学反応を起こし珠玉のヒューマンミステリーが出来上がりました。映画ファンのみならずすべての人に見てほしい映画です。