映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、映画監督リドリー・スコットと建築家安藤忠雄。二人の巨匠による近未来サスペンス「ロスト・エモーション」です。
リドリースコット制作総指揮、ドレイクドレマス監督のSFラブサスペンス。安藤忠雄の建築物を使って日本でロケーションされた作品です。
舞台は、陸地の大半を破壊された世界戦争後の未来。人類を破滅に追いやる要因が感情と結論付けた人類を、徹底して感情を排除する施策に向かうのですが、感情を呼び戻すウイルスが発生。主人公の男女が、次第に感情を取り戻し惹かれ合っていきます。厳しい取り締まりの中で、二人の未来の行く末は、どうなっていくのか興味深い作品です。
SF映画の世界において、常に現れるのは画一化した服装をした無感情な人間たち。感情の起伏など存在せず、かすかな感情の気配だけで進んでいく静寂に近い世界が表現されているのですが、コンクリート建築が特徴の安藤建築を舞台にすることで、その静寂が増し、そこで起こる出来事が静と動を極度に映し出される感覚で、空恐ろしさを感じます。
善と悪が裏一体をなす感情であっても、誰もその存在を否定できないことを、この作品から読み解くことができました。