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G7首脳 広島原爆資料館へ

2023-05-14 21:40:28 | ニュース
https://www.nhk.or.jp/                                                                                         G7首脳 広島原爆資料館へ
初訪問 難航した水面下交渉

5月19日から3日間、被爆地・広島で開催されるG7サミット。ウクライナ情勢や世界経済、核軍縮などを主要7か国の首脳らが議論する。
議長を務める総理大臣・岸田文雄が強くこだわってきたのが、初日で調整されている、G7首脳による原爆資料館訪問だ。実現すれば初めてとなる。
G7の核保有国の中には、資料館に足を踏み入れることさえ難色を示す国も出ていた中、首脳に何を見てもらうのか。シビアな水面下の交渉に迫る。
(清水大志、五十嵐淳)

米も仏も英も難色
「被爆の実相を見てもらわないとな」
G7サミットの広島開催を去年5月に決めて以来、岸田は、G7首脳による原爆資料館訪問の意味について、周囲にそう強調してきた。

被爆地選出の国会議員として「核廃絶」をライフワークに掲げてきた岸田。
被爆地でのサミット開催は、おととし秋の総理就任時から温めてきたプランだ。

なかでも原爆資料館訪問の実現にはこだわりを見せていた。

その意を受けて、外務省が各国に打診を始めたが交渉は難航する。
交渉過程について報告を受けた岸田は、焦りをにじませ、周辺にこう漏らしたという。

「アメリカだけじゃなく、フランスやイギリスも難色を示しているんだよな」
G7メンバーのうち、アメリカは78年前に広島・長崎に原爆を投下した当事者で、いまもロシアと並んで世界最大の“核大国”だ。
フランスやイギリスも核保有国である。

ある政府関係者は次のように解説する。
「原爆資料館には原爆の惨状を伝える数々の展示物がある。その場所を首脳が訪れれば、いま核兵器を保有し抑止力を必要とし正当化している国の立場が揺らぎかねない、という懸念があるのだと思う」


ウクライナ情勢を強調
どうすれば各国の首脳に、原爆資料館への一歩を踏み出してもらうことができるのか。

日本が強調し続けたことの1つがウクライナ情勢だった。
政府関係者はこう明かす。

「核軍縮をめぐる立場は各国、温度差は現実としてある。しかし、対ロシアでは一致できるはずだと踏んで、粘り強く働きかけた」
侵攻が長期化する中、ロシアは核兵器使用の威嚇を行っていた。
現実にまた核兵器が使われてしまうかもしれない。

そうした脅威が世界中を覆い、G7各国もロシアの行為を一斉に非難していた。

政府関係者の1人は「核廃絶に向けた第一歩は核による威嚇をしないことだ。そのメッセージを発する場にしたいと強調した」と語る。

「G7首脳が原爆資料館を訪れることは、各国の核保有をいまただちに否定するメッセージを伝えるためではない。将来の人類共通の目標として、核廃絶というゴールを共有する意義がある」と、各国に理解を求めたという。

そして、交渉開始から半年余りの去年12月下旬。

「資料館訪問はなんとか大丈夫そうだ」
関係者の1人が取材にこう漏らした。
G7首脳でそろって原爆資料館に訪問するメドがたったというのだ。実現すれば初めてのことだ。

(政府関係者)
「G7首脳に直接、原爆被害の実相を見てもらう。核廃絶や平和のメッセージを発信する上で、これ以上の舞台はない」
さらなる壁は“何を見るか”
しかし、ここでもう1つ大きな壁が立ちはだかる。
資料館を訪れた上で、何を見るかという点だ。
原爆資料館は「東館」と「本館」に分かれていて、被爆の実相を詳しく伝えるのは本館だ。


原爆投下直後の広島市内の様子や被爆者の姿を写した写真。
亡くなった被爆者の衣服。
遊んでいる時に被爆し亡くなった子どもが乗っていた焦げた三輪車などが展示されている。


日本としては、この本館までしっかり見てもらいたい。
しかし、今度はその点に難色を示す国が出てくる。
資料館は訪問するにしても、あくまで選ばれた展示物をいくつか見るにとどめ、時間をかけて本館を視察するのは避けたいというのだ。
ある政府関係者は背景をこう説明する。

「例えばアメリカには、『原爆投下は日本との戦争を早く終わらせるために必要だった』という意見が根強く残っている。来年はアメリカ大統領選挙を控えている。そのように、各国のなかには、国内世論への影響を避けたいという思いもあるのではないか」

オバマの資料館訪問は短時間

アメリカについては、大統領による資料館訪問は初めてではない。
7年前の2016年、当時のオバマ大統領による訪問が最初だ。
このとき、岸田は外務大臣として訪問に同行し、オバマ大統領への説明役を務めていた。

中でどのようなやりとりがあったのか。

7年が経過した今でも、岸田は誰に聞かれても「それは今後もずっと言わない約束になっているから」とだけ話し、固く口を閉ざす。アメリカ大統領の発言内容が明らかになって国際社会に与える影響を思慮しているのだろう。
当時を知る関係者によると、オバマは東館に短時間滞在したのみで、本館には入らなかったと見られている。

関係者の1人は振り返る。

「オバマ大統領は、ほかの場所との移動の合間に、休憩も兼ねて原爆資料館に立ち寄ったという設定だった。そこに数点の展示品を運んで見てもらった」
直接、原爆資料館だけを訪れたわけではないという立場をアメリカ国内向けに示す意味があったのではないかとの見方がある。
別の関係者は「岸田総理には、アメリカ大統領を広島に呼び、原爆の被害に触れてもらったという感慨の一方で、もっと被爆の実相を知ってもらいたいという心残りもあったのではないか」と話す。
渡り廊下でつながった資料館の本館と東館の距離は、わずか数十メートル。
岸田にとっては、被爆の実相を国際社会に伝える上で、はるかに長い距離のようにも思えるほど、大きな宿題として残った。

「本館を見なければ…」粘る岸田

「バイデン大統領だけ“置いてきぼり”でいいのか。外務省もそれでいいってことだな」
サミット開催が近づいてきたことしの春先。

本館を訪れるかどうかをめぐり「アメリカを説得するのは難しい」と報告した外務省幹部に厳しく問い返す岸田の姿があった。

なんとしても本館を見てもらいたいという7年越しの思いがあるのだろう。
さらに、ことし3月、岸田には資料館訪問への思いをより強くする体験があった。

それはウクライナ訪問だ。

キーウ郊外ブチャでロシア軍による虐殺現場に直接足を運んだ。
多くの民間人が埋葬された教会を訪れて献花し、当時の様子を、写真なども交えて関係者から聞いた。

同行していた関係者は「岸田総理のあんなに厳しい表情は見たことがなかった」と振り返った。

そして岸田はキーウに戻る途中、誰に対してでもなく「ちゃんとやらないといけない」とつぶやいたという。

政府関係者の1人は、岸田の胸の内をこう推測する。
「総理はブチャ訪問で戦争の実態を直接知ることの重要性を改めて痛感したと思う。世界の安全保障情勢や核廃絶などについて議論するサミットで、資料館を訪れる意味は大きいという思いをいっそう強めたんだろう」
シビアな調整“本館訪問”

本館の訪問は実現するのか。

サミット開催まで残り1週間余りとなった時点でも、調整はまだ終わっていない。
政権幹部は、こう明かした。
「かなりシビアな調整が続いていて決着していない。やはり、本館に行くことは相当ハードルが高いようだ。なんとか実現したいが、押しっぱなしでもよくない。原爆資料館への訪問そのものがなくならないよう慎重に交渉しないといけない」
強引に進めようとすれば、一部の国が取りやめる姿勢に転じ、G7首脳そろっての資料館訪問そのものがだめになる事態を懸念しているのだ。

バイデン大統領は、4月末、来年の大統領選挙での再選を目指して立候補を表明した。

今後激しい選挙戦が予想され、アメリカ国内の世論に慎重に配慮しなければいけない状況とみられる。

日本政府は、各国の情勢も見極めながら対応しているとみられる。
また、本館訪問が実現しても各国に配慮して詳細は公表されない可能性もある。

ウクライナ情勢や世界経済、それに国際保健やグローバルサウスへの対応など、多岐にわたる課題が議論されるサミット。

今回は被爆地でのサミットであることを踏まえ、首脳宣言とは別に、核軍縮・不拡散に関する成果文書を発表することが検討されている。

原爆資料館の訪問はサミット初日に行われる方向だ。

G7首脳そろっての資料館訪問が実のあるものとして実現するかどうかが、その後のG7議長としての岸田の采配や首脳間の核軍縮・不拡散の議論に影響を与える可能性もあるだけに、まさにぎりぎりの交渉が続けられている。
(一部敬称略)


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