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札幌・円山生活日記

「札幌美術展 佐藤武」~「札幌芸術の森美術館」~

荒涼な大地の都市風景や光線により崩れゆく塔などの作品を描いてきた佐藤武氏。札幌・石狩両市を拠点に活動する作家の多彩な創作活動を紹介する「札幌美術展 佐藤武」が「札幌芸術の森美術館」で開催中です。“孤独と不安が闇の中に拡がってゆく”シュールな静寂の世界です。

本日は「札幌芸術の森美術館」で「札幌美術展 佐藤武」鑑賞です。同美術館では前回のアート×コミュニケーション=キース・ヘリング展」終了後の10月9日から本展が開催されています。ウェブサイトに掲載されている作品の写真を見て昔からシュールな絵画が好きなので大変な関心だったのですが「紅葉とアートで野外美術館を回ろう!」(詳細別途)という企てもあってこの時期の訪問となりました。紅葉は色褪せ始めてはいましたが両美術館ともに楽しく鑑賞して参りました。アクセスは本日も地下鉄東西線「大通駅」で南北線に乗り換え終着の「真駒内駅」から中央バス(空沼線・滝野線)に乗り「芸術の森入口」で下車です。 


「札幌美術展 佐藤武」のチラシ
“北海道千歳市に生まれ、現在札幌市と石狩市を拠点に活動する佐藤武(1947-)は、1980年代前半より、荒涼とした大地に塔や遺構を配した無人の都市風景を描いています。これらは旅行で訪れたインド西部の城塞都市ジャイプル、とりわけ同地の天文台遺構を着想源とするものです。以来、画家は、都市上空に浮遊する建造物や石棺、光線により崩れゆく塔など、さまざまなモチーフを取り入れて、白いキャンバスに静寂の都市を構築してきました。
 本展では、人物像や室内画を手掛けた初期作品をはじめ、作家の代名詞ともいえる、ある一瞬をとらえた都市風景や、上空を切り裂く一筋の線を中心に展開する最新作に至るまでを紹介し、これまでの画家の歩みを振り返ります。また絵画のみならず、立体作品や写真、詩をあわせて展示することで、作家の制作に通底する世界観を提示し、多彩な創作活動を続ける作家の全貌に迫ります。”

「芸術の森」の入口付近。中央はシンボル彫刻の伊藤隆道氏作「空と地の軌跡」 。

美術館に向かう道の紅葉です。
「札幌芸術の森美術館」の入口。 
美術展のエントランス。今回も写真撮影可能です。

会場は10のコーナーで構成され第1章で作家の創作活動をダイジェストで紹介した後、第2章から時系列で作品を紹介しています。


作家の多彩な活動紹介の一環として詩作も展示されています。作家にとって絵画とは“死の領域をみつめようとする作業”なのだそうです。

まずは初期作品です。特定の師を持つことなく独学で制作に励んだという作家の初期作品の主題は「室内画」、「女性像」、「冬景色」です。後ほどの静寂な都市風景の色合いとは異なりますがシュールな世界は初期から一貫していたようです。また「冬景色」の作品には大地に街が飲み込まれていく様子が描かれるなど後程の作品につながるイメージが感じられます。

《時計のある室内》1970年 作家蔵
上掲部分。室内の一部にはシュールな世界が存在します。
同上。

《熱帯のイメージ》1977年 札幌芸術の森美術館蔵

《夢》1978年 作家蔵 
《夢想》1979年 作家蔵


《冬の正午》1980年 札幌芸術の森美術館蔵
《冬の夜》1981年 作家蔵

作家は1980年代前半より荒涼とした大地に塔や遺構を配した無人の都市風景や「塔の崩壊」をモチーフとする作品を描いています。これらは旅行で訪れたインド西部の城塞都市ジャイプル、 特に同地の天文台遺構を着想源とするものだとか。その後、作家は通り魔に襲われ生死の境を彷徨い、こうした経験などが相まって「塔の崩壊」につながっていったそうです。

《春の予感》1986年 作家蔵
《時》1987年 北海道立美術館蔵
《予感》1989年 札幌芸術の森美術館蔵

続いて作品の舞台は地上から上空へ展開します。都市などが浮遊し栄華を極めた都市とやがて訪れる崩壊の未来を創造させる作品となっていきます。
《都市の記憶》1998年 札幌芸術の森美術館蔵

《暮れゆく街》2010年 作家蔵 

続く下掲の2008年の作品には上空に石棺の天蓋が描かれ2010年の最愛の人の死を《予感》させます。しばらく描くことが出来なかった作家が描いた2011年の作品には都市が姿を消し池には水が満たされ上空には花が描かれています。近年の作品につながるイメージです。本展覧会で最も興味深かったコーナーです。
《予感》2008年 作家蔵
《暮れゆく大地 君に捧ぐ》2010年 作家蔵

近年の作品では空中の都市は姿を消し一筋の切れ目が現れる不可視の彼方へとつながる世界が描かれます。更に大地に開いた巨大な穴に都市が吸い込まれ、世界の終わりと死の到来を感じさせる作品へとつながっていきます。

《時空の果てⅡ》2018年 作家蔵

《廃墟》2019年 作家蔵 

《際涯の大地》2020年 作家蔵 

近くに掲げられていた詩作です。“孤独と不安”が作品群を貫くテーマのようでした。“死の領域をみつめようとする作業”を通じて“孤独と不安”を表現していきたということでしょうか。

多彩な才能を有する作家の陶芸による塔と都市の立体作品です。
《廃墟》2020年 作家蔵

《朽ち果ててゆくものⅡ》2021年 作家蔵

最後に作家の創作風景のビデオを放映されています。以上で鑑賞終了です。

「野外美術館」へ移動する前にランチ(軽食?)を済ませました。

カフェ「ラ・フォリア」の入口。初めて利用しました。
メニューです。
店内。
たっぷりバターのクロワッサン「フレッシュ野菜のBLTサンド」と「ピーチハイビスカスティー」。セットで税込1,000円。
こちらは展覧会と違いシンプルBLTの「フレッシュ野菜のBLTサンド」。ご馳走様でした。

かなり見ごたえがあり心をザワザワさせるような展覧会でした。“孤独と不安”以外に隠されたテーマが無いかともう一巡したのですが難解でした。心を静寂にして鑑賞すれば何か見付けることができるのかも知れません。好きな人には繰り返し足を運びたくなりような展覧会です。ありがとうございました。

「札幌美術展 佐藤武」
会期:2021年10月9日(土)~2022年1月10日(月・祝)
時間:9時45分~17時00分(入館は16時30分まで)
会場:札幌芸術の森美術館(〒005-0864 札幌市南区芸術の森2丁目75番地)
観覧料一般1,000(800)円、高校・大学生700(560)円、小・中学生400(320)円 ※()内は前売・20名以上の団体料金
休館日:10月無休、11月3日以降月曜休館、年末年始(12月29日~1月3日)
主催:札幌芸術の森美術館(札幌市芸術文化財団)、北海道新聞社
後援:北海道、札幌市、札幌市教育委員会
助成:芸術文化振興基金 

カフェ「ラ・フォリア」(札幌芸術の森美術館内)
営業時間:11:00~16:30(ラストオーダー 16:00)
休業日:美術館の休館日に準ずる
お問合せTEL.011-215-1778
HP:http://lafoglia.jp.net/

「札幌芸術の森」
〒005-0864 札幌市南区芸術の森2丁目
TEL:011-592-5111(代表) FAX:011-592-4120
開園時間 9:45~17:00(6~8月は17:30まで)
※札幌芸術の森美術館の入園は閉園の30分前まで
休園日 4月29日~11月3日は無休、11月4日~4月28日は月曜日
※月曜日が祝日・振替休日の場合は翌平日
年末年始(12月29日~1月3日)
(2021.11.1訪問)

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