「バッキャロー!!」
そう言ってマッキーは通り魔に何かをぶつけた。そしてスティングも通り魔を追いかけたが、裏通りで見失った。
「袋小路だったら警察を呼べるのにな」
ところが、通り魔は菜園の袋小路で女学生を陵辱してしまった。それをスティングは見ていたが、通り魔の男に飛び掛ろうとしたら逆に怪我してしまった。
そのことを知ったマッキーは翌朝盛岡学園の理事長室に呼ばれた。
「まったく情けないですな、通り魔に甘い考えは通用しません」
「はい」
「しかも袋小路で女学生に陵辱、それを目撃した男も襲われ…」
「それって」
「スティングだ。まったく…」
というわけで、ハングタンたちはさっそくスティングに話を聞くことに。ウイングこと高橋弥生はスティングが怪我したところをいじり回す。
「ほれ、ほれ」
「痛いよ、弥生ちゃん!本気で死ぬかと思ったんだから」
さらにエースこと荒川まどかがスティングに蹴りを入れた。
「こりゃダメだ」
さて、マッキーとショパンこと横田夏子はスティングの話を聞いた。左目のところにあばたのある、メガネをかけた男だということははっきりしている。
「でも、それだけじゃ不十分ですよね。もっとこう…手とかほっぺとか」
「あっ!」
「何か思い出したわ」
「そのあと菜園のネットカフェに消えていった…」
スティングが追いかけたときにはすでに通り魔はネットカフェに消えていた。
その話を聞いてホワイトこと白澤美雪がメモを取り出して読んだ。
「ということは、菜園のネットカフェですね。今あるのは2軒ですから…」
ということで、マッキーは生徒指導の一環と言う名目でネットカフェに調査しにやってきたが…生徒たちが遊ぶもんだからもう気が気でない。
ところが、その頃警察はスティングを通り魔事件の重要参考人として連行した。スティングは警察に通り魔の話をした。
「菜園のネットカフェに逃げ込んだんだよ」
「それを見ただけなのか?まさかわざと怪我したとかじゃないだろうね」
「はい」
夕方、清水町のマンションの1階。大谷と表札のかかった一室にハングタンが集まった。
「原君が捕まったの」
ショパンから出たこの言葉に生徒たちは驚いた。
「それでね、ゴッドはもし原君からハングタンのことが出るようだったら原君とは絶交しなさいって言ったの」
「そんな」
「どうして」
生徒たちは泣きついた。しかしショパンは生徒たちを振りほどく。
「本来ハングタンというのはあたしたちの秘密裏の姿なの。それが表に出たらどうなるかしら?」
そこへなんとスティングがやってきた。
「もしハングマンの存在が表に出たら、殺されるな」
「えっ?」
「だから捜査に役立つ情報しか教えなかった」
「よかった…」
スティングは盛岡中央署の松田と言う刑事にこってり油を絞られたことを話す。警察は前科者リストなど洗い出しているが多分該当者はいないだろうと言った。
「僕が言ったあの特徴も盛岡中央署のデータにはなかったからな」
ここでスティングはまた思い出した。確かネットカフェのところで店員は通り魔の男のことを中沢だと言っていたのだ。そして中沢と言うのは盛岡中央署の中沢住民課次長の息子なのだ。
「警察に話しても取り入ってもらえないからね、この話」
ついにハングタンは中沢勇一の捜索に全力を傾けることになった。
中沢勇一の父・吉春は原俊彦の釈放を知って愕然としていた。
「勇一が最近帰りが遅かったりしているが、まさかそんなことは…あの原と言う男、また何かやるに違いない」
そして松田と高橋を呼び出して原俊彦をマークするように指示した。
そうとも知らないスティングは、途中経過をウイングとアローこと斉藤葵に伝えていた。そこへ松田と高橋がやってくる。
「原俊彦、売春の現行犯で逮捕する」
高橋を見てアローは逃げ出したが、ウイングは白を切っていた。
「えっ?」
「ま、松田さん。それって別件逮捕であの事件のことを…」
すると高橋は勘違いを認め、逮捕しなかった。しかしスティングは冷や冷やしただろう。
その後マッキーから電話が入り、中沢勇一を確認したからすぐに盛岡駅に来いと言われ、盛岡駅に向かった。
盛岡駅南口のレストランで中沢勇一は食事をしていた。確かにめがねをかけており、左目の近くにあばたと呼べるものがあった。
「間違いないわね」
「だとしたら彼も僕を知っているはずだ」
しかし中沢はスティングの顔に気がつかなかった。スティングはあの袋小路で影になっていた上、いつものくせで下を向いた格好だったのがかえって幸いしたんじゃないかと言った。
「それじゃ、いくわよ」
マッキーとショパンが中沢を呼び出し、南口の駐車場へ。そこにアロー、ホワイト、エース、ウイングも待ち構えていた。中沢は恐怖のあまり逃げようとしたが、ここでスティングも現れた。
「僕ちゃん、君の顔をよく知ってるよ」
「知るか、そんなこと」
「菜園のネットカフェのところまでついてきたんです」
「ふざけんな!」
中沢は鉄パイプを持ってスティングとショパンに襲い掛かるが、そこへウイングの流れ弾が飛んでくる。中沢は流れ弾に当たって伸びてしまった。
「さぁて、これからどうしましょ」
中沢はハングタンたちにまた囲まれた。
「君たちは何者なんだ」
「あたしたちはハングタン、あんたのような悪党を始末するのが仕事よ」
「今回は…これ」
ウイングがとげのついた爆弾ボールを投げつけた。
「このボールには火薬が詰められています。これが爆発すると…」
マネキン人形はウイングの投げたボールに当たって爆発した。
「しかもとげつき。とげがあるってことは当たったら即死ですよ」
「…いやだ!」
マッキーとショパンは恐怖におびえる中沢を残して立ち去った。中沢は恐怖のあまり声が出なかった。
「もしも爆弾の犠牲になりたくなかったら、あなたが通り魔、売春、強姦などしたことをしゃべりなさい!」
ウイングが爆弾を投げつけた。しかし中沢は何もしゃべらない。仕方がないのでウイングがもう一球投げる。とげが中沢のめがねを破壊、ここにきて中沢はとうとう自白してしまった。
「助けてくれ、うわっ」
「ダメですよ、最後までちゃんとしゃべらないと」
「言う、言う。だからもう…」
「そうですか、わかりました」
しかしウイングはもう一球投げるモーションを起こした。
「あの夜も、むしゃくしゃしてたんだ。上司には色々言われ、親父にも説教され、酒を飲んだと言うとまた何かかにか…」
中沢のこの自白は盛岡駅滝の広場のスピーカーに大音量で流されていた。そうとも知らずに中沢は自白を続けた。
「むしゃくしゃして通り魔やった奴いるだろ、あれを模倣したくなったんだ。警察に親父がいる役所勤務の地方公務員がやったとかなれば大変な騒ぎになるからな」
それを聞いた市民は激怒した。
「なしてやんだ」
「ふざけんな!」
とうとう中沢は箱の中から脱出した。しかしすでに中沢の周りは警官が包囲。
「勇一!よくもわしの顔に泥を塗ってくれたな」
「親父!親父も同罪だ」
「馬鹿もんが」
中沢吉春は不甲斐ない倅の頬を叩いた。そして中沢勇一はパトカーで松田と高橋に連行された。
数日後、岩手県警の本部長の会見が行なわれた。中沢吉春は依願退職、またスティングを誤認逮捕した松田と高橋も減俸となった。
「ふぅ、危なかったな。危うく君たちに消されるところだったよ」
「そんな危ないこと、絶対にしたくなかったのよ。でも警察内部、それに身内がやったっていうのは盲点よね」
「飼い犬に手を噛まれる、なんてね」
するとウイングがマッキーの指をしゃぶっていた。それを見たマッキーがたまらず
「バッキャロー!!」
ウイングの天然ぶりにはもうスティングもショパンも苦笑いだ。
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