現生徒会長の太田カナは次期会長に2年A組のクラス委員の佐藤光明を推薦する。しかし現書記の榎田俊はそれが納得できない。
それを知った生徒会担当教諭団は臨時の生徒総会を開くことにし、新年度生徒会役員選挙のことについて議論しようということになったのである。
「でも榎田君だけだったらわかるのよ」
カナは斉藤葵と高橋弥生に愚痴をこぼしていた。
「ほかに誰かいるわけ?」
「A組で佐藤君とトップ争っている網浜裕太君でしょ、1年生でアイドルと言われてる清川枝織ちゃんでしょ」
「クラス委員の鼻を明かすために対抗馬に…なんて馬鹿な子なのかしら」
葵は憤慨した。これじゃどこかの総裁選挙じゃないか。
「確かに無競争よりは候補が集まってやったほうがいいとは思ってるけど」
「役員人事で先生まで動員するんじゃ、やってるほうも大変だよ」
その夜、佐藤光明の家に電話がかかってきた。
「佐藤光明君、今度の生徒会長選挙への立候補を辞退しろ。さもないとお前の親が酷い目に遭う」
そんな脅迫電話に光明は屈しなかった。しかし光明の父がまさかりを持った若い男に襲撃される。挙句のど元に迫ろうと言うところで女の悲鳴が…
翌朝、佐藤家は険悪な雰囲気だった。佐藤博光が斧で襲撃されたということで、光明は学校どころではなかった。
「僕、今日学校休みます」
光明は2年A組の担任の和田秀明に電話し、本日欠席することを伝えた。
佐藤博光は北愛病院に入院していた。
「で、昨夜は何時ごろ襲われました?」
「確か10時過ぎ…銀河鉄道の最終の八戸行きに乗りましたから」
その事件について原俊彦が記事を東北日報に出していた。
「まったく、我が子でなくても愛のない馬鹿野郎が増えてしまったじゃないか」
そう言って出さなかった没原稿を破り捨てたところに横田夏子が。
「もう、どうなってんのよ」
「先生」
「あんたのことじゃないのよ、斧で人を殺めようとしたんだから」
「このことか」
そして東北日報の巣子での斧通り魔事件記事を見せた。
「襲われた佐藤さんって、佐藤光明君のお父さんなの」
「佐藤光明?誰だ」
夏子は俊彦を盛岡学園の高等部最上階へ。もちろん理事長室だ。
「次期生徒会長の最右翼である佐藤光明の父親が襲われた。もちろん通り魔の可能性もあるが、巣子のあの近辺で通り魔をやるような人はいないらしい」
ゴッドこと大谷正治理事長が事件の説明をする。
「したがってこの事件の手がかりはまったくない。北盛岡署もお手上げみたいだ」
「確かにそうですね、北盛岡署は全国で多発する斧による殺人や通り魔騒ぎと関連付けているようですが」
「そこよ」
牧村環が佐藤光明がカナの推薦で次期会長に立候補することを説明した。
「ところが佐藤君の対抗馬として同じクラスの榎田俊が立候補の意思、ということなのよ」
「榎田…まさかちょっとすれ違っただけでオーラのある、メガネの」
俊彦は榎田俊と面識があった。夏休みエリート体験ツアーに同行した際に一緒になっていたからだ。
「あの榎田君も出てくるのか」
「このままじゃカナのメンツ丸つぶれなの」
しかし俊彦は生徒会役員と今回の事件が絡むと言う確証がないのなら、と断った。
「あら、いつもはすぐに乗ってくるはずなのに」
俊彦が帰ろうとするとき、ゴッドはこう言った。
「もし生徒会選挙立候補者の身内にまた何かあったら…それでは遅すぎるんだ」
榎田は中学時代のクラスメートの遠藤通と話していた。
「さすがは先輩だよな」
「でも、これで佐藤が辞めるかどうか」
「あとは和田先生に頼んで会長候補を俺にしろと言えば」
榎田は担任を買収して選挙人を自分の思い通りにしようとした。
その夜、今度は中野の公園で若い女性が襲撃された。そこへなんと国分繁治がやってきたのだ。
「待て!」
「誰だ」
そして繁治は襲撃犯をとっちめようとしたが、男は106号の市内方面へバイクで逃亡。
「ちくしょう」
盛岡学園の理事長室に俊彦と繁治がやってきた。
「夜更けにシゲから電話が入ったんで、話を聞いてみると襲われたのは武田恵理のお姉さんだったらしいですね」
「武田みゆき、23歳。市内の会社に勤めるOL。妹の恵理は盛岡学園の2年B組の生徒で、次期生徒会役員選挙の執行委員候補として名前が挙がっているひとりです」
そして俊彦はゴッドの昨日の言葉を思い出し、今回の生徒会役員選挙が2つの事件を解く鍵だと考えた。さっそく俊彦は環に選挙のことを聞き出した。
「立候補予定者は会長3人、副会長5人、執行委員は9人、書記と会計は各5人、総会運営委員4人、全部定数を超えてるの」
「そのうちの2人の候補の身内が被害に遭ったと言うわけか」
「そうなの」
「ところで佐藤君は?」
「僕はテロに屈しない、とか言って立候補する構えよ」
そのことを聞いた俊彦は、あとのことをハングタンに任せることにした。
榎田と遠藤は佐藤博光を斧で襲撃した先輩の松島と公園の水飲み場ではしゃいでいた。
「でも佐藤の奴立候補するって。まだまだこっちにはからくりがあることも知らないで」
「和田先生も一枚かんでいるって知ったら、さすがのあいつも吠え面かくよ」
そこに偶然弥生と白澤美雪が立ち寄ってしまった。
「ねぇ、弥生。こんなに寒いとこってはじめてでしょ」
「うん」
二人は榎田たちに気付かないふりをしていた。
夜、環と俊彦は例の地酒バーで弥生と美雪が見たことを話した。
「で、松島先輩って言ったんだね」
「そうよ」
「でも盛岡学園の3年に松島っていないんじゃ」
「そう、だから多分」
「榎田か遠藤の出身中学調べようよ」
「あ、そっか。榎田と遠藤の出身中学ね。確か同じはず」
ということで二人は矢巾へ。そして松島有希子と言う女子生徒の話を聞いた。松島先輩はこの人ではないか。
「バレー部出身、当時身長166センチ…これなら」
「もしもヒールとかで少し背伸びすれば佐藤君のお父さんが間違えても仕方ないわ」
というわけで、二人はさっそくハングタンに連絡して松島有希子を探すことにした。おそらく次のターゲットは1年B組の藤原若菜、佐藤光明と親しいと言う噂もあり、今度の選挙では総会運営委員に立候補している。しかも矢巾出身だ。
まずは実家の近い白澤美雪と斉藤葵が矢巾まで同行することを決めた。高橋弥生はIGRいわて銀河鉄道の厨川駅から盛岡駅まで、荒川まどかは盛岡駅から矢巾駅まで遠目の警戒。
「とりあえず夏子さんにも協力してもらいますから」
一方、松島の携帯に電話。相手は何と和田だった。
「和田さん、どうしたんですか」
「松島君、あと一人だ。どうしてもあと一人」
「どういうことですか」
「実はわたしと君の秘密を知ったのがいるんだ」
松島は和田の話を理解できなかった。そこで午後6時に盛岡駅のフェザン南館で会うことにした。しかしその声は繁治に筒抜けだった。
午後6時、IGRの駅ではハングタンの護衛で藤原若菜が改札を出た。一方の松島有希子は和田秀明を待ったが、いくら待っても来ない。
「和田さん、遅いわ」
「残念ですが、和田秀明さんは来られないそうです」
そう言って繁治が弥生と一緒に松島を連行。当の和田は夏子に呼び止められたところを美雪とまどか、そして俊彦に倒された。
「これで役者はそろった」
暗室の中で和田と松島はぐるぐる巻きにされた。
「ここはどこだ」
「なんなのよ、あたしは盛岡学園と関係ないのよ」
そこへハングタンたちが現れた。
「あたしたちはハングタン」
「あたしたちは神の使いなの」
「あんたたちのようなひどい人たちを処刑するわ」
「あたしたちは死刑執行人よ」
「あんたたち、覚悟しなさい」
しかし和田も松島も何も自白しない。そこでギロチンを用意。
「断頭台の露と消えるの。マリー・アントワネットみたいにね」
「いやよ、そんなの」
「いやなら今回の事件のことを白状して」
すると松島は泣いた。それを見た和田は松島をかばいながらこう言った。
「彼女は関係ないんだ。佐藤や武田に選挙出馬をやめさせろと言ったのは榎田と遠藤だ」
すると松島は激怒。
「ひどい!そのためにあたしに佐藤博光さんを襲わせようとして…あたし怖かったんだから」
「ふざけるな!」
痴話喧嘩を続ける二人をあざ笑うかのようにハングタンたちは去った。
翌朝、朝礼ということで和田と松島の自白テープが流された。榎田と遠藤はそれを聞いてびっくりした。
「ふざけるな」
「エリートがのし上がるためには多数派の論理が…うぐっ」
「選挙は自己中心派のゲームじゃないんだ」
「何がゲームだ、この世の選挙なんて信念より己の力だ」
しかし和田の自白テープで選挙に自分が当選したら自分が学園の生徒たちのリーダーとなっていろいろな行動をすると主張していたことを知ると、
「…なんてことだ。自分のライバルを蹴落として、力に任せておけばすべてうまくいくと思っていたはずなのに…」
榎田も遠藤も観念した。そこへ環が現れたが、
「バッキャロー!!」
とあっさり罵倒されてしまった。
昼休み、環、美雪、弥生、まどか、夏子がお弁当を食べていた。そこへ俊彦と繁治が。
「しかし参ったよ。ゼブルージャの次期監督候補に俺の名前が載っちゃって」
盛岡ジャーナルの紙面にちゃんと「盛岡FC新監督人事で原俊彦氏入閣か?」と載っていた。それを見た俊彦は
「選挙は立候補するのも一苦労だけど、投票する人も大変だよ」
そうぼやいていた。
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