というわけで、今回は先輩を踏み台にするセレブな1年生の話。
盛岡学園高等部の1年生、坂本瑞穂は市議会議長の娘である。しかしそのことを鼻にかけて先輩たちをこけにするのだ。
「何よ、こんな先輩ばかりだから学園の空気がよどんでいるのよ」
「何だと」
「そんな口聞いていいかしら?あなたの家は不動産屋さんじゃないの、市営駐車場の跡地を安く買い叩いて…」
瑞穂は3年B組、つまりマッキー(牧村環)のクラスの生徒である馬場誠をなじっていた。
マッキーは歴史の授業を行なっていた。今日教えているのは絶対王政について。
「昔のヨーロッパでは絶対王政が猛威を振るっていました。王様の下では誰もが跪くのが当然でした」
そこへ誠が突っ込みを入れてしまう。
「今もそういうのありませんか?」
「…誠君、どういうことよ」
「1年の坂本って、あの子もうるさいんですよ」
一方1年の教室では瑞穂が先生をぼろくそになじっていた。
「エリートコースに進めるのは2年からなんて、遅すぎるわよ」
「ちょっと、そんなこと言っても…」
「いい加減にして!いくら親がいい人だからって、先生に文句言っちゃダメでしょ」
「そんなこと言っても仕方ないですわ、授業料たくさん払っておきながらこの授業内容は…」
瑞穂の説教に生徒も先生もたじたじだ。
瑞穂の態度はさらにエスカレートする。
「みんな情けないわね、負け犬なの?」
そんな無神経なことを言うもんだから、とうとう生徒たちの中には瑞穂をいやがって学校に来なくなる生徒も出てしまった。それを知ったマッキーはついに瑞穂と対決するが…
「瑞穂ちゃん、お父さんが悲しむわよ」
「べ、別に…」
「何が言いたいのよ」
「あんたたち、馬鹿よ。こんな学園がこの街をだめにしてるのよ」
そんなことを言われたらマッキーでなくても黙っていないだろう。
「バッキャロー!!」
盛岡城址公園でマッキーはスティング(原俊彦)と坂本瑞穂のことについて話していた。
「…1年生の坂本って子が態度でかいのよ。何とかならない?」
「う~ん、坂本議長の娘だからなぁ」
瑞穂の父・坂本哲三はかなり攻めの政策を敷く人間で、以前市長選挙にも出馬したが市民の支持を得られず落選した。
「坂本先生はかなりやり手だけど、政治家としてはまじめだよ。市長選挙で落選したときはかなり市民をなじっていたけど」
スティングは坂本哲三が市長選挙に落選したときのことを思い出した。落選後の取材で坂本が盛岡市民は考え方が猿みたいだと言っていたのだ。
「あの親父にして、こんな娘ありか…盛岡市民を猿だ、負け犬だと暴言吐くようじゃ許せない」
「あの娘、とにかく親父譲りで…いわゆる反日非国民みたいな」
「サディスト娘か、こりゃハンギングの対象にはなるだろ」
「もう何人も学校休んでるの。うちのクラスも休学者が出ちゃって」
マッキーは悩んでいた。休学者がこれ以上増えたら学校の信用にも関わる。なんとか今のうちに瑞穂を諭せないか、ということだ。
「それならまず父親だろうけど、あんな性格だからね」
「ダメかぁ」
「瑞穂の嫌いなものとか、先生わかる?」
「…瑞穂ちゃんは音楽の成績が悪いのよね」
マッキーのその一言で、スティングはさっそくショパン(横田夏子)に話を持ちかけた。
「えっ?1年の坂本瑞穂ちゃんを諭す方法ですって?」
「そうなんだよ」
「…でも、ピアノとかバイオリンやっているけど」
「合唱は?」
スティングはショパンをじろじろ見ながら話を続けた。
「先生とデュオしたらもう地球がぶっ壊れるかな」
「まぁ、そんなこと言わないで。でもそんなに歌はうまくないわよ」
「そうか、歌はへたくそなのか…僕はとりあえず坂本先生に話を聞こうと思うけど」
「了解」
これで作戦は決まった。あとはアロー(斉藤葵)たちが放送室から坂本瑞穂の悪行を歌った歌を流せばいいだけ。ところがそんなにうまくいくはずもない。
「うるさい、うるさい、うるさい!」
そう言って瑞穂は放送を止めさせようとした。しかしエース(荒川まどか)が瑞穂に向かってこう言った。
「うるさい、うるさいって、いっつも学園に迷惑かけているのは瑞穂ちゃんでしょ」
「べ、別に…なんともない」
「じゃあ先輩たちが休学しているのはなぜ」
「そりゃいろいろ理由があるんじゃないの、そんな子たちは負け犬なのよ」
しかし瑞穂のこの言葉は学園中に響き渡っていた。
「うちのクラスの誠君が休んでいるのは、瑞穂ちゃんに色々言われたからよ」
「嘘だよ!」
すると数人の生徒が瑞穂の周りを囲んだ。
「嘘じゃない、この子そう言ってうちのクラスの健太郎を…」
「先輩に非礼の上、休学に追い込むなんて」
「ひどいわよ!あんた最低の人間だわ」
そんな状況でも瑞穂は白を切り続ける。
「あんたたちのために言ってるんじゃないから、この盛岡のために言ってるんだから」
「結局自分たちのためだけに言ってることになるんじゃないの?」
「そうよね」
「バッキャロー!!」
数日後、瑞穂は猛省したのか淑女のいでたちで学校にやってきた。
「あれからパパと相談したの、そしたらもう学校で威張るのはやめなさいと言われて…」
「よかったじゃない」
「これも先生と原さんのおかげです」
「あまりお嬢様ぶったりしないでね」
マッキーは瑞穂の変わり身の早さに多少戸惑ったが、瑞穂が改心したことを実感した。
「瑞穂も学べる喜びに目覚めたのね」
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