「まずはこの辺のコンビニはどこにあります?」
…というのが、到着したばかりの留学生からの最初の質問だったりする。
それだけ日本の暮らしには根付いているのだな、コンビニ。便利だもんな。
でも私が今話したいのは、コンビニでも、スーパーでもない。
むかーしからこの国にある、老舗系の食料雑貨店のことなのだ。
英語でグロサリーとかいうだろうけど、スペイン語では
マンテケリアMantequería(乳製品を扱うことから由来)
ウルトラマリーノUltramarino(中南米から入ってくる食品の販売してたことから由来)
コルマードColmado(溢れんばかりの商品イメージから)
などと呼ばれ、スーパーやコンビニなどが普及する前には
主に保存食品(缶詰、ハムソーセージ、乾物)や飲料、調味料、嗜好品など
お台所の常備品を扱う、街には欠かせない存在だったのだ。
もうこの↑写真に私の大好きな雰囲気がでてるけどw
何段もある高い棚に並んだ大量の瓶缶詰の賑やかさ。
ひんやりした大理石のしっかりしたカウンター。
バックミュージックなぞなし。じっくりした人相の店員による、丁寧な個別接客。
この系の店の三種の神器は↑写真内にある古いタイプの秤。↓手廻しコーヒーミル。そして塩鱈切り大ナイフ。
マドリッドにある“アンドレス”という店の紹介ビデオに、
このての商店の雰囲気がよ~く出てるのでぜひ観ていただきたい。
創業146年。親子三代に渡って商売は引き継がれ、今も元気ハツラツ経営なのが伺える。
店主いわく、老舗といいながらも常に商品の流行、お客のニーズに敏感であらなければならない、とのこと。
安売りスーパーにはない質、品揃え、それに加えて丁寧な接客で固定客を離さないんだろうな。、
しかしながら、数多くのこのマンテケリアなる商売は全国的に消滅の危機に。
やっぱりスーパーチェーンの手軽さ、気楽さ、そして安さには押されてしまい、
ここサラマンカで唯一頑張っていた“マンテケリア・パコ”も今年一杯で閉店となる…
(ショーウィンドウに閉店のお知らせ…)
以前紹介した老舗書店の閉店に続き、やはり時代の変化と共に消えていく運命なんだな…
もちろん形を変えて新しく生まれ変わる店舗も多々ある。
例えば店舗のデザインをそのままに、ワインバー、カフェなどに生まれ変わった例は多し。
あの壁ぎっしりの大棚はやっぱり魅力のポイントなんだね。(マドリッド、バルセロナのお店の例)
またCasa Ruiz みたいに原点に戻り、商売スタイルを変えて流行っている所もある。
(乾物一般、香辛料を揃える、計り売りスタイルのお店)
絶滅品種の商売、その最期を見届けるだけ…と思ってただけに、こういう
リニューアルは嬉しかったりする。
…自分が遙か昔、マンテケリアに行く理由は醤油を買うためだった。
日本食ブーム以前の時代、醤油なんぞ存在さえマイナーで、でもここには
売ってたんだ。店のおやじが得意気に奥から出してきてた。(えらい高かった…涙)
大抵この系の店の店内は薄暗い。
壁際に溢れかえる商品に光も音も吸収されてしまうのか、何か独自の
空気感があり、そこに様々なタベモノの匂いが入り混じった、どこか懐かしい匂いがあった。
町外れの小さい店などにいくと、裏が自宅なのか、お昼に用意してる
らしい豆の煮込みのいい匂いがふんわりしてたりした。
なんかちょっとした「角打ち」システムの店もあったように思う。
小さな使い古したコップに安い地ワインを注いでくれ、生ハム1枚切ってひょいと
出してくれたりした。やはり店内は何かシンとしたものがあって、裏手のパティオ
で時々猫が小さく鳴いてるだけだった。
あの店内の空気感。薄暗さ。匂い。
お疲れの時、ふとここから抜け出してノスタルジックな世界に
浸りたい気分になるんだけど、その入り口がここにあるのかも、とこっそり
想像してみたりするのは楽しいんだ。
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