スペインサラマンカ・あるばの日々

スペイン語留学の街、サラマンカより、地元情報とスペイン文化、歴史に関する笑えてためになるコラムをお届けしています。

メリエンダ~懐かしのスペインダメおやつ達

2019-03-07 15:18:24 | スペインだめメシ部

「あ~お腹空いた!」
と心の底から叫びたいほどの空腹感。

子供の頃、遊び尽くし、走り回った後の
健康的な渇き。

…そんな感覚を最後に感じたのはいつだろう?

そしてそんな空腹で食べたものは、
実に美味しくて、夢中になって食べた。

食後はなんともいえぬ満ちたりた
幸せな気分になったものだった。



それがオトナになってからこの方、
周りを見渡せば小腹を満たせるものに溢れ、
街は飲食店に溢れかえる。

仕事が忙しくて…などのつまらん理由で
食事がとれない時の空腹も、コンビニ菓子や
インスタント食品でごまかしてうやむやにしてしまう。

結局、あの“健康的な空腹感”は子供の頃
の遠い時代に置いてきてしまったのか…
と感じたのは、先日「子供の頃食べたオヤツ」の話が出たときだった。

●メリエンダというおやつ

スペインでの昼食は、大体14~15時あたりに摂る。
1日のメインの食事(日本でいうところの夕食)となり、その後
の夕食は21~22時頃。これは昼より軽めの食事。

この昼食と夕食の結構あく間のつなぎに摂るのが「メリエンダ」

大体午後18時あたりに何かをつまんだり、軽食をとる習慣がある。
カフェテラスなどでは、この時間お茶とお菓子をとる年配の奥様方
で溢れかえる。

大人はともかく子供のメリエンダは栄養的に
重きを置かれ、家で、学校で供される。


そのメニューも最近ではなるべく砂糖、添加物を避け、
果物、乳製品、たんぱく質重視のヘルシー志向にあり。

「あんなヘルシーなもんはでなかったな」
「今考えたら恐ろしいもん食ってたな~」
「でも美味しかったね。今でもやるもん」

…と大人たちの語る、“昔食べたメリエンダ”の
メニューがなかなか私には衝撃だった…のでここに記すw

● 砂糖万歳!脂質万歳!

パンに塗る。挟む。

これで完成。

なんとも原始的でお手軽なサンドイッチが昔も今も人気だ。

スペインらしく、チョリソやチーズなどを挟んだボカディージョなど、
今ではフツーにみかけるが、それさえ贅沢だった時代が長かった。

固いパンで挟んだサンド=「ボカディージョ」

「肉じゃないよ、うちは豚ラードを塗っただけだったな」
という年配者も多い。そう、豚ラードは一番安価な脂質だった。
(貧乏チョリソの記事参照)

「チョリソを挟んだボカディージョを持って外に出たとたん、
目の前で盗まれたのはショックだったな」と語る80代。

「実家がパン屋でな、パンだけはあった。それに親戚同士で豚飼ってたんだよ。」
飢えて道に行き倒れのようになった人もみたことがあったと話す。
貧富の差がくっきりと明確になった市民戦争の戦後期、
メリエンダを摂ることさえゼイタクだった子供も多かったろう。

「粉ミルクの溶かしたのを学校で飲まされた」と顔をしかめる60代。
50年代の話だが、恐らく当時米国が推進した“マーシャル計画”の供給品かと。
(スペインは第二次世界大戦不参加、孤立していたため、計画対象国には
ならなかったものの、それでもおこぼれ的な物資提供はあった模様。)

ばあちゃんが作ってくれた「バターを塗ったパンに砂糖を振り掛けたもの」
がうまかった!と目を細める50代後半。


この“砂糖パン”はあちこちで活躍した超ファーストフードだった由。
昔は甘いもの=砂糖一択だったお家も、田舎では結構あった。

「砂糖や脂は体を暖め、良きエネルギーとなる!」
という信仰はかなーり長く続いた。

時代は流れ、物資も年々豊かになっていく。

「マリービスケットにバターを挟んで食べる」
というのを未だにやる方も多い。世代を超えて愛されてるの?


「板チョコをパンに挟む」
という荒業も、
当時“なんと素晴らしい発明だと思った”などと懐かしむ諸氏多し。
「練乳をかける」「ココア砂糖を」という意見もあり。


オイオイ!とつっこみたくなるレシピだが、
一瞬「いけるかも」と思った自分がいやだw

60年代後半あたりから「缶詰入りのお手軽パテ」
や、店売りの安価な工場製品であるハムソーセージ
というのがでてくる。これらが一挙に“しょっぱい系”
メリエンダの主役となった。


信頼の黒フタでおなじみ、パテ「ラ・ピアラ」。
どこか黒帽子を被った闘牛士のごときデザイン。
安い、栄養価が高いとお母さんらにも人気だった。

ハム部門ではなぜかちょい昔「オリーブの実いり寄せハム」
というのが妙に流行った。彩りがあって小じゃれてるから?
こればっかり出されて味がトラウマになってる大人多いかも(←自分w)

と、上記2品を想いだし、久しぶりにメリエンダとして
トーストを作って食べてみる。(貧乏学生のオヤツでもあった)


しょっぱ~!(泣)
しまった、具の三倍以上パンが必要なの忘れてた。
これじゃあ海苔佃煮を海のようにかけたご飯状態。

そうなのよ、結局こういうものって“メシに漬物”
と同じく、“パンを大量摂取するための”アイテム。

美味しいかって?うーん恐らく昔は好きだった
味かも。今じゃ減塩脱脂フードに慣れきった体、
どうも私にはパンチが強すぎましたw

●そして…アルコール万歳?!

“昔食べてたメリエンダ”の話を集めていた中、
ちょっと衝撃だったレシピが

「赤ワインに浸したパンに砂糖をかけたもの」
だった。



えええ~~!!??
いいの???
いや本当なんです。

全国区、伝統的なメリエンダのひとつ。
スペインが誇るミシュラン三ツ星シェフ、
東京にもレストランを持つ、カルメ・ルスカイェーダ氏が
作り方ご披露してくれてます。↓
Pan con vino y azúcar con Carme Ruscalleda

 これをね、ふっつーに子供に与えていた時代があった。
恐らく70年代位までか…
今では考えられないことだが、子供対象でも、
“適量のアルコールは食欲増進、体を元気にする”と思われていた。
(まあハイにはなるでしょうが…)

例えば…

甘味の強いワイン「キーナ/サン・クレメンテ」。
アルコール13度の立派なアルコール飲料だが、
含まれるキニーネの作用で食欲増進に役立つ食前酒とのこと。


可愛いキニート君の漫画キャラで、お子様の成長を助けるとして
販売されていた。以下CM

家族みんなでキーナ!子供はメリエンダのお供に…


また、ビールメーカー「クルスカンポ」は
お子様向けの“清涼飲料水”としてビールを勧める広告を。
“ママはいっもクルスカンポを買ってきてくれる”
“どんな他の飲み物より食卓を楽しく、消化も良くする
クルスカンポ”

やはり他のビールメーカー「ダム」の広告。
“ダムを飲んでケネディ宇宙基地への旅を当てよう!”
“お子様と共に楽しむダム・ビール”

特にビールに関しては最近までソフトドリンク扱いされていたと思う。
(飲み会に遅れてきた友人が“ごめん!今日車で来ちゃったんで…”
といいながらビールを頼む、というのは昔ふつーの光景だった…)

もちろん現在では18歳未満の未成年の飲酒は
厳しく法律によって禁止されている。

●そして添加物、人工うんちゃら万歳!

 80年代後半から90年代になると、
“砂糖ぐっちゃり、子供にっこり”的な駄菓子パンが
大いに人気となる。


チョコクリームが入った菓子パン「ボジィカオ」は
まさにその代表。これを握り締めて公園で遊ぶ子らをよく見かけた。
80年代のCM


また以下のごとくチョココーティングのミニケーキ
も流行った。部活帰りのおやつにぴったりw





個人的な告白をすれば、この毒々しいピンクの奴が好きだった。
これとミルクの組み合わせは神。
近年体調を崩して入院生活だった時も、見舞いに来た友人に
“下の売店で買ってきて…”と財布を渡してた位だ(爆)。

上記駄菓子パンは添加物が多い(そういえばめったなことがなきゃ
腐らなかったw)と顔をしかめる親も多かったと思う。

これらの買い食いを禁止する厳格な家でも、なぜか!
常備されていたのがこの↓チョコスプレッドクリーム

2大メーカーが争ってます。

 今でこそ糖分過多だ、パーム油含有だと叩かれているが、
食が細い子供を持つ親のための、最後の救世主。
寝た子も起こす(?)強力な中毒性があるのは皆知っている。

 引き続き根強い人気を誇るこの製品。
この国の40代以下の体の基礎は、
恐らくこのクリームで形成されているかと。

そして彼らが現在、親の世代となって引き継がれている模様…
2018年ヌテラのCM~朝ごはんにもぴったり!


…と、まあ結局「スペイン・メリエンダ近代史」になっちゃいましたが
(参照:スペイン・アイスキャンディー史

親が子供にとにかく食べさせ、成長を祈る想いは
時代を超えて、変わらずですな。

それが一片のラードを塗ったパンであれ、
豪華なサンドイッチであれ、
いやたまに買ってきた駄菓子パンであったにせよ、

渡されたメリエンダ-おやつ-の向こうに
「お腹一杯食べて元気にいて欲しい」と
いう想い、子供らは言わずとも感じ取って大きくなるもんですもの。

 参考資料
las 33 burradas que hacíamos en las merendolas la generación EGB



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2 コメント

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Unknown (toshiko ishida)
2019-03-09 12:59:16
じっくり読ませてもらったよ。素晴らしきリサーチ‼️
特に知らなかったvino tinto y azucarのおやつ。ホンマかいな?と思った次第。だからスペイン人は赤ワインをグビグビ水みたいに飲むのかね、幼年時代の特訓をベースに、、、、あの時間はチョイ飲み気分で出かけた末に本飲みに突入したもんだった。
一連のブログ、出版要請ないの?その内そうなると思うよ。 tossy
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いつもありがとう! (Michiko)
2019-03-10 01:13:34
それでもワインの消費量ってずっと下がって、ビールに追い越されたみたいです。若い人のアルコール派離れはここでもあるみたい。一緒にバルにいった日々を思い出します~
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