「バビロンの陽光」(2010年 イラク・英・仏、他)
監督 モハメド・アルダラジー
荒涼とした風景で描くイラクの悲しみ
フセイン政権崩壊直後のイラクで、12年前の湾岸戦争に兵士として行き行方不明となった父親を捜す旅に出た、12歳のクルド人少年とその祖母を描くロードムービー。北部のクルド人地区からヒッチハイクやおんぼろバスを乗り継いで、父親が居るかもしれないというナシリヤまで荒廃したバビロンや荒涼とした大地が描かれる。これらの風景がイラクの人々の心象をも良く表現しているように感じられる。混沌とした状況の中で助け合う人々の交流も描かれ、バスに乗り合わせたクルド人虐殺に加担した元兵士の助けも借りて、埋葬されているかもしれない集団墓地を訪ねることになり、あちこちで有った虐殺の事実が示される。集団墓地を訪れた多数の女性たちの慟哭が心を打つ。
フセイン政権の虐殺の歴史にも悲しみと怒りを感じるが、映画の中で助け合っている人々もその後、宗派対立の中で敵対したり、テロや虐殺が繰り返され現在まで続いていることを考えると、暗澹とした感じになる。少年に希望は持てるのか。
細かいことだけど、少年の名前はアーメッドなのになぜ常に「ハマー」?と呼ばれるのか。音声と字幕が一致しない場面が繰り返されるのはイヤになる。ミドルネームか、翻訳の表記間違いか。基本的な部分で手抜かりである。
総合評価 ③ [ 評価基準(⑥まれにみる大傑作)⑤傑作 ④かなり面白い ③十分観られる ②観ても良いがあまり面白くはない ①金返せ (0 論外。物投げろ)]