「残された者 -北の極地-」(2018年・アイランド)
監督 ジョー・ペナ
サバイバルシーンのみを描いて成功
(以下、ネタばらし有り)
北極圏の無人地帯に不時着した飛行機からの生還を試みる男のサバイバル映画。不時着した飛行機をシェルターとし一人で救出を待つオボァガード(マッツ・ミケルソン)は、氷雪原の地面を削ってSOSの文字を大書したりなど、できることを工夫しながら過ごしている。やがて現れたヘリコプターは、救助してくれるものと喜んだ目前で墜落してしまい、パイロットは死亡し、同乗の若い女性は重傷を負ってしまう。オボァガードは、女性を飛行機まで運び込むが、結局、観測基地まで即席のそりで女性を引っ張って移動することに決める。
ほとんどオボァガードの一人芝居であり、当然ながら会話もないので、たまに独り言をつぶやく以外にセリフもない。映画としてもそれ以上の説明は一切なく、飛行機が不時着した理由も、ヘリコプターが墜落した理由も、そもそも何のためのヘリコプターだったのかということも、ほとんど表されない。ひたすら北極圏の大自然と、その中でもがくちっぽけな人間としてのオボァガードの姿が淡々と描かれるだけである。途中、吹雪に会ったり北極熊に遭遇したりし、また力尽きて女性を見捨てていきかけるなどの葛藤が描かれるが、それ以上の登場人物も動物もなく、聞こえるのはそりを引っ張るオボァガードの息遣いのみというシーンも多い。大雑把な地図で地形を判断し、ビバーグの場所を探し、食事の支度をするという繰り返しである。しかし、その一つ一つの動作が見るものを惹きつけて飽きさせない。急勾配の斜面に挑戦してそりを引き上げ切れず、何度も滑り落としてしまうだけのシーンもかなりの緊迫感である。
やがてオボァガードも岩の割れ目に落ちて片足を痛め、最後に力尽きかけたとこに現われたヘリコプターにも発見してもらえない。倒れ込んでいよいよ絶望かと思えるところで、舞い戻って来たヘリコプターがすぐそばに着地するというエンド。その最後も救出の対面シーン等全くなく、事実の提示のみというスタイルの徹底が気持ち良い。結局、最後まで当初の出来事や人物の説明は一切されず、当然ながらドラマチックな盛り上がりとしてはもう一つ物足りないが、サバイバルのための奮闘シーンのみで一貫し、それが成功している。
一人芝居の成功には、マッツ・ミケルソンの存在感と好演によるところが大きい。
総合評価 ④ [ 評価基準: (⑥まれにみる大傑作)⑤傑作 ④かなり面白い ③十分観られる ②観ても良いがあまり面白くはない ①金返せ (0 論外。物投げろ)]