≪第96回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望5 北信越地区 -
【新潟】(参加88校)
日本文理と新潟明訓の2強に、名門・中越が挑戦状をたたきつける。
◎ 中越
〇 日本文理 新潟明訓
△ 加茂暁星 新潟県央工
▲ 北越 十日町
日本文理と新潟明訓の2強に長い間独占されていた夏の覇権争い。しかし今年は、この2強に例年ほどの絶対的な力がなく、秋春の県大会を連覇した名門・中越がリードする展開になりそうだ。上村・高井の2枚看板を誇る投手陣に安定感があり、打線も水準以上のレベル。名将・鈴木監督時代には一時代を築いた名門が、華麗に復活する夏となるか。そうはさせじと2強も夏に向けて戦力の整備が急ピッチ。日本文理は、昨年のチームがあまりにも攻守にぬきんでた力を持っていたため今年はどうしても見劣りする感じを受けてしまうものの、打線の力は昨年に劣らない。昨年の大エース・飯塚の穴を埋めるエースの登場が待たれるところか。新潟明訓は、佐藤監督退任後にどうも勝ちきれない時期が続いている。勝負強さを身にまとったかつてのチームへの復活が待たれるところ。今年のチームの特徴は打線。県内であればどんな相手からも5,6点は奪える力を持ち、投手力が整えば十分に優勝争いの主役を演じることが出来る。さて、この3強が頭一つ抜け出る展開だが、面白いチームがいる。それが加茂暁星だ。一昨年から野球部の強化に力を入れ、県内外の有力選手が続々入学した今年のチームは、どこまで力を伸ばすことが出来るのか。エース森山がチームを引っ張る存在だが、レギュラーのほとんどは1,2年生の有力選手たち。チームの本格化は来年度以降だろうが、今年も台風の目になる可能性は十分だ。そのほかでは春県準優勝に輝き二度目のVを狙う新潟県央工、実績を残す北越、上越、十日町らが追う展開か。
【長野】(参加86校)
連覇狙う佐久長聖の打撃は一級品で、一歩抜け出した。名門の松商学園を筆頭に、追ってくる勢力も多士済々。
◎ 佐久長聖
〇 松商学園 上田西 松本第一
△ 長野日大 長野商
▲ 東海大三 都市大塩尻
長野開催となった今年の春季北信越大会。直前のセンバツで敦賀気比が全国制覇を達成して盛り上がるレベルの高い戦いとなったが、その中で8強に長野勢が3校食い込み、佐久長聖が見事に優勝を飾った。昨年まで、他の4県のレベルがどんどん上がって全国での活躍が目立つ中、長野だけが置いてきぼりを食らわされたような形となっていたが、今年はレベルの高い各校が揃って、県大会も盛り上がりそうだ。その中でも北信越大会で優勝を飾った佐久長聖の力は抜き出ている。安定感のあるエース北原は、敦賀気比の強力打線も抑えきって自信を深めた。打線はもとより一級品。元PLの藤原監督が鍛え上げた、好機を逃さない強力打線だ。ほぼスキの見当たらない佐久長聖だが、追ってくる各校にも力はある。センバツ出場の松商学園は、センバツで県岐阜商の高橋に抑えられたことが発奮材料となり、夏に向けて攻撃力が急ピッチで上がってきている。夏に強い伝統もあり、本命に肉薄する勢いだ。春準優勝の上田西も力は十分。こちらも看板は攻撃力。春は2回対戦1勝1敗の佐久長聖戦では、いずれも打線が爆発しており、対戦に自信を持っているのもいい材料。2年ぶりの甲子園に視界は良好だ。北信越大会で4強まで駆け上がった松本第一も戦力の裏付けがあり上位を狙う力は十分。復活したエース足助に、春活躍した若林、吉原を加えて投手陣は厚みを増した。長野日大は選手層が厚い。長野商のエース塚田は好投手。東海大三のエース平林も好投手で、昨年選抜以来の聖地を狙う。都市大塩尻辺りまでが圏内か。
【富山】(参加48校)
レベルアップ顕著で、上位のたたき合いは見もの。
◎ 富山第一
〇 富山商
△ 富山工 新湊
▲ 高岡商 砺波工 富山東 魚津工
かつては甲子園での活躍には厳しい富山代表だったが、ここ数年のレベルアップで今や強豪県の一つに数えられるようになった。一昨年は富山第一が8強入り、昨年も富山商が強豪を連破して2勝を挙げる活躍を見せ、存在感を十分に発揮した。そしてそのどちらも、『甲子園大会屈指』と言われるほどの好投手を擁してのもので、今や富山は『好投手の宝庫』と言われるほど。しかし今年の大会は『好投手の投げ合い』よりも『強打線同士の打ち合い』が見られそうな大会になりそうだ。打線で言えば、富山第一に一日の長がある。富山第一は、春の県大会で爆発した打線が招待試合では東海大相模の小笠原にも襲い掛かり、その打力の高さを見せつけた。投手力が例年に比べると今一つだが、打ち勝つ野球で2年ぶり2度目の夏を狙う。富山商も春の県大会では攻守のバランスが取れて優勝を飾ったが、その後の北信越大会や招待試合で打線が湿ったのが気がかり。投手陣は安定感を増しており、こちらは打線の復調に連覇をかけている。富山工は3年ぶりの夏を狙い戦力を強化。名門の新湊は、伝統の接戦での強さを発揮できるか。高岡商はライバルの富山商に後塵を拝している今の現状を打破できる夏となるか。砺波工、富山東なども力は持っている。覇権争いに食い込めるか。春4強の魚津工は、招待試合で完敗を喫してショックを受けたが、立ち直りを計っている。
【石川】(参加49校)
今年も3強を軸に展開する石川の夏。飛び出してくる惑星が、大会をかき回せるか。
◎ 遊学館
〇 金沢 星稜
△ 小松大谷 金沢学院東
▲ 小松商 小松工 日本航空石川
昨年は決勝でのまさかの大逆転勝利で、地方大会の話題を独り占めにした星稜。その勢いで今年も突っ走りたいところだが、今年は何やら形勢はやや不利の様相だ。しかし昨夏の大逆転は、選手の体に染みついて今年も大事なところでは力を発揮するはずだ。エース谷川の踏ん張り次第で、今年もあのイエローのユニフォームが躍動する可能性は十分に持つ。力で言うと、今年は遊学館が候補1番手。小孫、本定らの投手陣の安定感は県下NO1.そして打線は相変わらず、山本監督に鍛えられた鋭い振りで高い攻撃力を誇る。ライバルでもあった敦賀気比が先に全国制覇を達成し、遊学館としては『黙っていられない』夏となった。モチベーションは例年以上に高く、しっかりした野球で甲子園への道を切り開きそうだ。ここ数年音沙汰のなかった金沢も、今年は狙いを甲子園一本に定める。同校の好投手の系譜を受け継ぐ今年のエースは、本格派の竹田。すでに【県下NO1】との評価もあり、投手力では遊学館に引けを取らない。あとはやはり、打ち合いになった時にどうしても遅れをとってしまう攻撃力の強化か。この3強が例年通り一歩抜け出るという展開だが、後続のチームは何とかそこに風穴を開けたいところ。まずは昨年、8-0からまさかの大逆転を食らい甲子園への道を閉ざされた小松大谷。そのショックからここまで昨年ほどの戦績は残せていないが、今年は昨年のことから球場が『判官びいき』になって小松大谷がホームのような大声援を受けることもあるかもしれないと考えられ、大会の波に乗れば《昨夏のリベンジ》への流れが出来上がるかもしれない。金森監督体制2年目の金沢学院東にも注目。プロでも注目されていた『金森メソッド』は、どう選手を鍛えてきたか。注目の夏となる。
【福井】(参加30校)
全国制覇に満足していない敦賀気比。ますます強くなるこの1強に、他校はいったいどう食らいつく?
◎ 敦賀気比
〇 福井工大福井 啓新
△ 福井商 北陸
▲ 敦賀 敦賀工 春江工
わずか30校が参加する県大会。全国で2番目に小さいその大会に、圧倒的な強さを誇る『全国制覇校』が存在する。それが敦賀気比だ。今春の選抜で初めての全国制覇を達成し、これから【王国】を形成しそうな気配のこの強豪を、いったい止めるチームはあるのか。敦賀気比は、”絶対エース”の平沼を温存しながら、楽々と北信越大会で決勝まで進出。いまや≪全国≫にしか向いていないこの高レベルのチームは、攻守にほとんどスキというものを見せない。平沼はエースで4番の大黒柱だが、センバツの準決勝・決勝で3本塁打の松本が新たに4番に座りそうで、平沼の負担は減っていきそうだ。4試合を勝ち抜けば甲子園が待っていることから、ほぼ敦賀気比で決まりと思われる県大会だが、追ってくるチームはどうなのか。ライバルの1番手に上がるのは福井工大福井。3年ぶりの聖地に向けてベテランの大須賀監督は『打線で勝負』と話す。平沼を打ち崩しての甲子園となれば、そこでも強力な優勝候補となりそうだが、どうか。そして元東海大甲府の名将・大八木監督が位置からチームを育て上げている啓新も今年は狙いを甲子園に定めた。創部4年目で、大八木監督が提唱する『頭のレベルの高い野球』が浸透しているか。敦賀気比との決戦、今から楽しみだ。そしてこの3チームに対して、長年福井の盟主の座を譲らなかった名門・福井商の巻き返しがあるのか。北野監督の時代は、どんなにライバルが強いチームを作っても、『やっぱり福井商が勝った』という夏の大会を何度も演出してきた名門だけに、指をくわえてライバルの後塵を拝する気は、さらさらないだろう。エース吉岡を擁する北陸も、候補の一角に名乗りを上げた。いずれにしても、熱い夏になりそうだ。