≪第100回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望4 東海地区 -
【静岡】(参加112チーム)
今年も"王者”静岡が本命。強打にバランス、代表にふさわしい戦力誇る。
◎ 静岡
〇 東海大静岡翔洋 常葉大菊川
△ 藤枝明誠 常葉大橘 掛川西
▲ 市沼津 島田商 浜松商 静岡商 日大三島
ここ数年県内で”絶対王者”の地位を確立する静岡。目線は常に全国に注がれており、戦力アップに余念がない。今年も夏の大本命だが、心配はエース春の戦線離脱。春は全く投げなかったが、果たして夏にどこまで回復しているかによって大きく戦い方が変わりそうだ。その春の欠場を埋めた投手陣は、鈴木翔がカバーして穴を感じさせなかったが、夏の連戦では一枚でも信頼できる投手がほしいところだ。打線は破壊力、機動力を含め得点力が高く、他校の追随を許さない。あとは『春の県大会優勝校は夏には勝てない』というジンクスを破れるか。対抗馬には東海大静岡翔洋があがる。チームの特徴は強打だが、投手陣の不安がどうしても付きまとう。打って打って、激戦の静岡を制することができるか。2年ぶりを狙う常葉大菊川は、こちらも打線中心のチーム。相変わらずの”満振り”に対戦相手はひるんでしまうが、今年のチームは過去数年に比べて投手力も充実してバランスが取れてきた。昨年代表の藤枝明誠は、こちらもウィークポイントは投手力。連続出場には、軸となる投手の出現が不可欠。その他では掛川西、市沼津、島田商など投手力で勝負するチームが浮上する可能性も残される。強打の優勝候補に、どういった戦いを挑むか。浜松商、静岡商の両名門の巻き返しに、昨年雨中の決勝で悔しい負けを喫した日大三島の今年にかける意気込みにも注目したい。
【東愛知】(参加85チーム)
本命不在で、どこにでもチャンスがある大激戦。勢いに乗って駆けあがるのはどこか。
◎ 豊川
〇 愛産大三河 桜丘
△ 大府 豊橋中央
▲ 安生 刈谷 国府
私学5強と言われる名古屋地区の有力校が西地区に集結する中、この東大会はどこが勝ってもおかしくないほど伯仲したどんぐりの背比べ。水準以上のチームは見当たらず、まさに85校すべてにチャンスが広がっている大会だ。その中で初出場を狙う豊川が本命の位置に座るか。投手陣は枚数がそろっており連戦には強そうだが、軸になる投手はいない。打線も大物打ちはいないが、得点力は備わっており機動力もそこそこ。追っていく1番手は愛産大三河か。こちらも松原―桜井のバッテリーを軸に久しぶりの甲子園を視界にとらえている。桜丘もまずまずの戦力を備えており、今年はとにかく大チャンスだ。追っていく各校、大府、豊橋中央、安生、刈谷、国府など多士済々だが、結局今年の大会は勢いに乗ったチームに栄冠が輝きそうだ。いずれにしても、過去20年間にわたって一度もこの東地区から代表が生まれていない(記念大会は除く)現実からレベルの高い戦いにはならないようだが、その分全校にチャンスが転がっており、思わぬシンデレラチームが突如登場する可能性も、十分にある。
【西愛知】(参加101チーム)
選抜で自信つけた至学館。中京大中京、東邦、享栄、愛工大名電の”元祖私学4強”が打倒掲げて鋭く追う。
◎ 東邦
〇 誉 中京大中京 享栄 愛工大名電
△ 至学館 愛知
▲ 愛知啓成 栄徳 誠信
有力校すべてが集う西愛知大会。例年通りの大激戦になりそうで、参加校が半分に減る分、より凝縮された大会になりそうだ。大会の図式は、大型チームを作り選抜を経験した東邦が軸で、それを4~6校が鋭く追うというもの。東邦は選抜では初戦で花巻東の軟投左腕に全くタイミングが合わず敗れ去ったが、もともと打力は選抜でも注目を浴びたほど鋭い。失意のまま選抜から帰った後、春の東海大会を制して完全復調。エース扇谷に加えて西が成長して夏は2本柱の投手陣が完成する。甲子園に出場すればやはり優勝候補の一角に名を連ねるほどの大型チームだけに、ここで負けるつもりは一切ない。追っていく一番手に、春の県大会を制した誉があがる。その打線は東邦を意識して、さらにその上をいく目標を立てる。振りの鋭さは東邦に負けていない強力打線だ。追っていく伝統校、中京大中京、享栄、愛工大名電の3校が逆転を狙う。中京大中京はノーシードから連続出場を狙う。夏に仕上げてくる力はぴか一で、やはり優勝争いの一角を占める。大ベテランの柴垣監督が最後の夏を迎える享栄は、何とか久々の甲子園を手繰り寄せて花道を飾りたい。かつて藤王や近藤などドラ1の大型選手を揃えて豪快な野球を展開したが、今は全員がミスのない野球を心がけて接戦を勝ち抜く野球だ。愛工大名電も最近の数年間は音なし。今年も他校のうらやむ好選手を揃えてはいるが、どうもチーム力が選手の力量ほどは上がってこない印象だ。殻を破って、5年ぶりの夏をつかみ取れるか。このところ実績を残しすっかり強豪の仲間入りを果たした至学館は、新グラウンド完成間近で気勢も上がっている。そのほか愛知、愛知啓成、栄徳、誠信らが虎視眈々と強豪の足元をすくおうと狙っている。いずれにしても、例年と全く変わりのないレベルの高い戦いとなりそうだ。
【岐阜】(参加68チーム)
鍛治舎監督率いる県岐阜商が最も注目を集める。ライバル心むき出しの大垣日大・阪口監督との対決がハイライトか。
◎ 中京学院大中京
〇 大垣日大 県岐阜商
△ 帝京可児 関商工
▲ 土岐商 市岐阜商 岐阜城北 岐阜総合
例年以上に盛り上がった大会になりそうな気がする。注目されるのはわずか3年で熊本・秀学館を全国有数の強豪に育て上げたあの鍛治舎巧監督率いる名門・県岐阜商が初めての夏に挑むことだ。とにかくこの鍛治舎監督、選手を一部の隙もないまで鍛え上げることで有名。もともと県内トップの位置にある県岐阜商が、鍛治舎メソッドを入れてどんな強豪に変身するのか、全国から大いに注目が集まっている。投手陣の層の厚さが出てきて、打線では振り切る打法に加えて機動力の精度を上げ、さらにあのノーステップ打法で粘りも見せる。さあ、県内の各校がこの投げ込まれた爆弾に、どんな対応を見せるか。まず今年1年県内トップを走り続ける中京学院大中京。一昨年の甲子園出場時の大型チームではないが、左腕エースの不後の安定した投球に、得点力の高い上位打線が絡んで戦いぶりに安定感がある。一方「県内で好きにはさせない」と気合満点なのが昨夏の代表でもある大垣日大の阪口監督。昨夏もエースだった修行が最上級生になって、ますます大物っぷりを発揮。投手陣の層でも打線の破壊力でも、まったく負けるつもりはないと鼻息が相当に荒い。春準優勝の帝京可児は、左右の技巧派投手を揃えて戦える戦力を整えた。あとは打線の爆発待ち。甲子園で光を放った経験もある関商工は、今年も粘り強い攻守で甲子園を狙う。展開がはまれば、一気の浮上もあり得る。いずれにしても今年の大会、ベテランの名将の戦いぶりに、大いに注目が集まっている。それに伴って県内のレベルが上がれば、ファンの声援も自然にヒートアップしていくことだろう。
【三重】(参加63チーム)
選抜4強の三重が盤石の強さを見せる。しかし追っていく各校も力を伸ばし、混戦に持ち込めるか。
◎ 三重
〇 いなべ総合 津田学園 菰野
△ 津商 宇治山田商
▲ 松坂商 海星
選抜の大活躍が、三重をより大きくさせた。日大三に完勝、星稜との激闘、そして大阪桐蔭との死闘。どの試合も三重の血となり肉となり、あるいは今年のチーム、2014年の準優勝時よりも充実したチーム状況にあるかもしれない。しかし若い監督に率いられるだけに、夏の大会特有の「うまくいかない」時にどう切り抜けていくのか。真価が問われる夏になりそうだ。定本・福田のダブルエースに新戦力の台頭もあり、投手陣の充実度は他校の追随を許さない。さて、追っていくチームには、いなべ総合、津田学園、薦野とこのところ県内の覇権を争う3強をあげる。どのチームも戦力は充実しており、三重を逆転する可能性は十分。いなべ総合は春は東海大会で決勝進出。すっかり自信をつけて「三重に肩を並べた」と強気。とにかく投打のバランスが良く、負けない野球ができるところが強み。津田学園は春の県大会を制し、連覇を狙っている。昨夏甲子園を経験した6人がズラッとスタメンに並ぶ壮観さで、今年も輝けるか。菰野は伝統的に好投手を生む土壌があるチームだが、今年も速球派の田中、岡林を中心に好投手揃いの投手陣が自慢。この4強の力は接近しており、県大会の上位では大激戦が予想されている。それを追っていくチームの筆頭は津商か。今年も全員野球が徹底されており、束になって相手にかかっていく野球は、相手校にとっては脅威だ。宇治山田商はエース小川が看板。松坂商、海星なども上位を狙う力は十分に持っている。