☆本記事は、Youtubeチャンネル『本の林 honnohayashi』に投稿された動画を紹介するものです。
ご興味を持たれた方は是非、動画の方もチェックしてみて下さいね!
●本日のコトノハ●
味の場合は甘いとか苦いとかという表現でいろいろな物質の味をおおまかには表現できるが、
匂いの場合はその種類が多いので、個々の匂いの質を表現することがむずかしい。
甘い、グリーン、油臭い、ウッディーといったイメージのわくような表現をするが、
こうした表現で他人がその匂いの質をどう表現するかを考えると、「ヒトは言葉を使わないと
自分の感じたことを他人に伝えられない生物である」ことをつくづく感じる。
『味と香りの話』栗原堅三(1998)岩波書店より
言葉で伝えることが難しいものの一つに「匂い」があげられます。
人それぞれ、経験することが違いますし、物事の捉え方も様々です。そのため、自分が感じたことをそっくりそのまま相手に分かってもらうのが難しいのです。
例えば、日光の下にほした布団の匂いを「お日様の匂い」と言う人がいます。
この表現は分かりやすいようで、よく分からないものです。
ここで言う「お日様」というのは、太陽そのもののことではなく、太陽から降り注ぐ陽射しの温もりや、日光によってよく乾かされ、清潔さを思わせる日向のイメージでもあり、その中で育つ花や草木、動物たちの営み、それらすべてを含んだ概念のような気がするのです。
布団乾燥機を使ってフカフカにした布団からも「お日様の匂い」に似たようなものを感じることはできますが、やはり天然の力には敵いません。
そこには、乾燥機によって作り出された「人工の熱風の匂い」を感じることができるのです。
私たちは普段、言葉を使って会話をし意思疎通を図ります。
言葉で説明することが難しい時は、実際に実物を見せたり、経験してもらうことが相手に分かってもらう一番の近道です。
食レポであれば、もちろん「実際に食べてください」というのもアリかもしれませんが、そうできる人ばかりではないので、やはりどんな料理なのか言葉にしなければなりません。
匂いについて詳しく食レポする人はあまりいないような気がします。
「お出汁の良い香り」とか「ゆずの風味が利いている」とか「ウナギのタレの匂いが食欲をそそる」などと聞くと、具体的にどんな味がするのか想像できるでしょうか。
そもそも、匂いは鼻で味わうものなので、いざ食べ始めてしまうと、味わう主体が口の中に移り、食材の食感や温度、塩味などを歯や舌で感知することになります。
そうすると、必然的に匂いに対する感度が薄れてしまうのかもしれません。
もし、匂いに特化した食レポをしたいのならば、食べる前に料理全体をくまなく嗅ぎまわり、料理の香りを鼻で堪能すると良いでしょう。
(そんな人はいないでしょうけど。。。)
ちなみに、少し前に新型コロナウイルスに罹ってしまったのですが、私の場合、喉や気管支ではなく、何故か鼻が猛烈に痛くなりました。
まるで、唐辛子ペーストを鼻の中に塗りたくられたのではないかと思うぐらいの痛みでした。
コロナの症状の一つなのかもしれませんが、これまた何故か、元気な時よりも異常に食欲が湧き、やたらと何か食べたいという欲求が絶えずありました。
普段は胃腸虚弱のため、あまり多くは食べられませんし、食欲もそれほどない方なので、不思議な感覚でした。
しかし、鼻がやられているので、何を食べても味がよく分からないのです。
口の中では、確かにしょっぱいとか、甘いとか、苦いといった味が分かるのですが、匂いがしないというだけで、美味しい食べ物を食べる楽しみがこれほど減るものかと驚きました。
コロナの後遺症の一つに、匂いを感じられなくなるというものがありますが、自分もそうなるかもしれないと内心ビクビクしていました。
幸運にも、完治して間もなく、食事を今まで通り味わって食べられるようになりました。
油も塩味も控え目な、胃に優しい質素な食べ物しか食べませんが、それでも、食べ物の美味しさを堪能できる日常がどれだけありがたいことなのか、思い出させてくれた貴重な体験でした。
ヒトコトリのコトノハ vol.73
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●本日のコトノハ●
味の場合は甘いとか苦いとかという表現でいろいろな物質の味をおおまかには表現できるが、
匂いの場合はその種類が多いので、個々の匂いの質を表現することがむずかしい。
甘い、グリーン、油臭い、ウッディーといったイメージのわくような表現をするが、
こうした表現で他人がその匂いの質をどう表現するかを考えると、「ヒトは言葉を使わないと
自分の感じたことを他人に伝えられない生物である」ことをつくづく感じる。
『味と香りの話』栗原堅三(1998)岩波書店より
言葉で伝えることが難しいものの一つに「匂い」があげられます。
人それぞれ、経験することが違いますし、物事の捉え方も様々です。そのため、自分が感じたことをそっくりそのまま相手に分かってもらうのが難しいのです。
例えば、日光の下にほした布団の匂いを「お日様の匂い」と言う人がいます。
この表現は分かりやすいようで、よく分からないものです。
ここで言う「お日様」というのは、太陽そのもののことではなく、太陽から降り注ぐ陽射しの温もりや、日光によってよく乾かされ、清潔さを思わせる日向のイメージでもあり、その中で育つ花や草木、動物たちの営み、それらすべてを含んだ概念のような気がするのです。
布団乾燥機を使ってフカフカにした布団からも「お日様の匂い」に似たようなものを感じることはできますが、やはり天然の力には敵いません。
そこには、乾燥機によって作り出された「人工の熱風の匂い」を感じることができるのです。
私たちは普段、言葉を使って会話をし意思疎通を図ります。
言葉で説明することが難しい時は、実際に実物を見せたり、経験してもらうことが相手に分かってもらう一番の近道です。
食レポであれば、もちろん「実際に食べてください」というのもアリかもしれませんが、そうできる人ばかりではないので、やはりどんな料理なのか言葉にしなければなりません。
匂いについて詳しく食レポする人はあまりいないような気がします。
「お出汁の良い香り」とか「ゆずの風味が利いている」とか「ウナギのタレの匂いが食欲をそそる」などと聞くと、具体的にどんな味がするのか想像できるでしょうか。
そもそも、匂いは鼻で味わうものなので、いざ食べ始めてしまうと、味わう主体が口の中に移り、食材の食感や温度、塩味などを歯や舌で感知することになります。
そうすると、必然的に匂いに対する感度が薄れてしまうのかもしれません。
もし、匂いに特化した食レポをしたいのならば、食べる前に料理全体をくまなく嗅ぎまわり、料理の香りを鼻で堪能すると良いでしょう。
(そんな人はいないでしょうけど。。。)
ちなみに、少し前に新型コロナウイルスに罹ってしまったのですが、私の場合、喉や気管支ではなく、何故か鼻が猛烈に痛くなりました。
まるで、唐辛子ペーストを鼻の中に塗りたくられたのではないかと思うぐらいの痛みでした。
コロナの症状の一つなのかもしれませんが、これまた何故か、元気な時よりも異常に食欲が湧き、やたらと何か食べたいという欲求が絶えずありました。
普段は胃腸虚弱のため、あまり多くは食べられませんし、食欲もそれほどない方なので、不思議な感覚でした。
しかし、鼻がやられているので、何を食べても味がよく分からないのです。
口の中では、確かにしょっぱいとか、甘いとか、苦いといった味が分かるのですが、匂いがしないというだけで、美味しい食べ物を食べる楽しみがこれほど減るものかと驚きました。
コロナの後遺症の一つに、匂いを感じられなくなるというものがありますが、自分もそうなるかもしれないと内心ビクビクしていました。
幸運にも、完治して間もなく、食事を今まで通り味わって食べられるようになりました。
油も塩味も控え目な、胃に優しい質素な食べ物しか食べませんが、それでも、食べ物の美味しさを堪能できる日常がどれだけありがたいことなのか、思い出させてくれた貴重な体験でした。
ヒトコトリのコトノハ vol.73
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