アクアコンパス3 続編

アクアコンパス3が容量一杯になったので、こちらで続きを開始します。

働くとは、何か 17

2025-02-23 08:09:51 | 社会

 

前回は、日本の「働く人」の精神状態が如何に酷いかをみました。
今回は、その背景を読み解きます。

 

* 日本人は働き過ぎなのか?

 


「図3.各国共に労働時間は減っているが、日本の労働時間はまだ多い」

日本のグラフには2本あるが、時間数の少ない方を見て下さい。
日本はまだ、少ない国に比べ、5~17%長く働いている。


* なぜ日本の労働時間は少なくなったのか?

 

「図4.フルタイムの労働時間(青線)は横ばいだが、合計(黒線)は低下している」

労働時間の短いパートタイム労働者の比率(灰色棒グラフ)が1990年代から高まったことで、フルタイムとパートタイムの労働時間を合算すると、減少傾向に見えるだけです。
このグラフを見る限り、喜べる状況になったのでは無く、細切れに使われるパートタイマが増えているだけで、フルタイム者の労働時間に変化は無い。


* 皆さんは、休みを獲っているのだろうか?

 


「図5. 日本の取得率は最下位、支給日数(灰色の棒グラフ)は多いのだが」

日本ではよくある、本音と建前の食い違い!
ヨーロッパ先進国のように1ヵ月休むのは夢の夢か!


* 皆さんが休めないのは理由がありそうです。

 


「図6. 皆さんは職場に気を使って休めない」

これは日本らしい情景とも言えるが、単に経営サイドが、休める体制を準備せず、従業員の気遣いに甘えているか、押し付けているだけです。
先進国では、育児休暇等も含めで長い休職に備えて、職場の人員配置等を日頃から準備している。
私の現役時代、平日に1日でも旅行しようとするなら、上からかなり嫌がらせがあり、結局、定年まで、長期の旅行は行けなかった。
今は、少し良くなったようだが。


* 最近、アベノミクスのお陰で就業者数が増えて来た! 確認しましょう。

 

「図7. 2012年頃より就業者数が増えており、素晴らしい」

さらに凄いのは人口が減っているにも拘らず、就業者数が増加している事です。
実は、これには二つの側面があります。
円安が進むことにより、海外生産が増加から横這いに転じ、海外生産拠点が国内に少し戻りつつあることで、国内の就業者数が増えている。
これは一見良いように聞こえるが、円安で戻るような生産は、高付加価値生産を目指さなければならない先進国日本には、一時しのぎの麻薬に過ぎない、と考えるエコノミストもいる。
今一つは、労働時間が短くて、かつ低賃金の非正規雇用者が増えた結果、就業者が増えている事が大問題です。
このような詐欺まがいの、失策の礼賛はよくあるので気を付けて下さい!


* 就業人口が増えて、賃金は上がったの?

 

「図8. 日本だけが、世界中で珍しく実質賃金を下げている」

日本の一人当たりのGDPは、ここ30年以上ほとんど伸びていない。
この間、海外の多くの国は順調に成長し、日本の減速だけが目立ち、円安でさらに資産や貨幣の価値は落ちることになった。
こんな惨めな日本になったのは、安倍氏だけのせいとは言えないが、自民党の路線をさらに押し進めた結果と言える。


* 男女で非正規の割合は異なるの?

 


「図9. 40年間ほど、正規雇用は増えず、非正規(斜線部)だけが増えている」

低賃金の女性非正規増加が目立つが、これが日本の新たな問題、貧困の増加へと繋がって行くことになる。
残念な事に、非正規雇用率は増加傾向にある。


* 非正規雇用の多さは日本だけなのだろうか?

 


「図10. 非正規雇用率の多さは先進国で4位、平均の1.6倍も多い」

日本の労働条件・雇用状況で、海外より優れているものが見当たらず、最悪だけが目に付く。


* 日本の男女間賃金格差は、海外と比べ少ないのだろうか?

 


「図11. 男女の賃金格差は、韓国よりましだが、やはり酷い」

日本は正規と非正規、男性と女性で、労働待遇や賃金に差が大きい。
日本は、人権意識や民主主義が未成熟であり続けている。


* 男性の正規と非正規の賃金差はどのくらいだろうか?

 


「図12. 非正規と正規には雲泥の差があり、非正規の生涯賃金は悲惨」

労働時間が短い場合もあるが、同じ会社で同じ仕事、同じ時間働いても、これだけの違いがあるのなら、腹が立つと思うのだが。
なんと不条理か!
さらに悪い事に、非正規に酷い作業を与える事例も多い。
原発の廃炉処理等の命に関わる作業を、正規社員は拒み、非正規や下請け等にやらせている。
それを正規社員の組合が望むのだから、世も末だ!


* 女性の正規と非正規の賃金差はどのくらいだろうか?

 


「図13. 男性よりさらに酷い」

これら様々な差別賃金に加え、伸びない賃金、増える税金・保険料が重なり、生活が苦しくなる人が増えるのは当然の成り行きだ。
この事が、女性の未結率や母子家庭の貧困の増加に繋がっているのだろう。
次回、貧困率も見ることにします。


今回、労働時間の長さ、有給取得の困難さ、低賃金の非正規雇用者の増加、様々な賃金格差、どれをとっても日本は群を抜いて悪い。

なぜこんな事になってしまったのか?
・ 国民の権利意識が低いから。
・ 政府が「働く人」の為の政治をしていないから。
・ 労働者政党(立憲、国民等)が力不足だから。
・ 日本の腐敗構造が経済を衰退させているから。


いずれも正しいが、一つ明確のなのは、日本では労働組合が体をなしていない事が大きい。
言い換えれば、民主主義が成熟しないまま来た事が大きい。

 

* 日本の労働組合の影響力は?

 

「図14. 日本の労働組合と労働協約の達成率は、最下位に近い」


* 結論

既に見てきたように、明治以来、日本では民主主義が圧迫されると同時に、労働運動が迫害されて来たことが災いしている。
欧米に比べ労働党が育たなかったのも同様です。
この事が、日本の「働く人」を先進国すら入れないほど惨めにしているのです。


次回に続きます。

 

 

コメント
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