
例えばそれは
木陰で犬が寝そべる夏蜜柑の木
庭の小さなブランコ
かき氷が乗った夏の日のテーブル
いつも同じ味噌汁の匂い
祭りの夜、うっかり手を離し飛んでいった赤い風船
過去の風景を思い出してばっかりなので
いぶかしげに見つめてみるけど
思い出の中には温度がある
色がある
光もあるはず
その時の季節や風や人の気配がある
そこから派生した物語がある
景色や、
繋がってきた『今』がある
やんわり僕を支配する思い出の中にも可能性がある
過去と未来は濃く繋がってる
例えばそれは
夏蜜柑の木陰に見た予感
甘いシロップの仄かな幸せ
空高く昇っていく風船の行き先