梅雨に入り雨の中歩くのは…と病院への足が遠のく時期かと思います。
最近では当院のうわさを聞いてか聞かずか腫瘍症例が徐々に増えてきています。それに伴い気になることがあります。
それは、腫瘍の種類は特定していないが
「末期のガンです」
と獣医さんにいわれている患者様の多いこと(ここT区周辺だけであってほしいですが…)!
あえて言おう、「それ、誤診です‼」
日本獣医がん学会で認定されている獣医師がいる動物病院で診てもらっているのに、腫瘍の細胞診/組織検査もせずに腫瘍を特定していたり、説明が不十分過ぎて、結局治療の流れがわからず、患犬/患猫(以降患者といいます)の負担が少ないならと緩和治療を希望しているケースが見受けられます。
このような獣医師/病院が多いと人の医療に比べて動物医療の全体の質が低いと考えられるだけでなく、訴訟リスクはあがり、腫瘍の積極的な治療は衰退していきます。結局被害を被るのは自分たち獣医師です。
勿論、患者様の状態が悪かったり、検査が困難な症例もないことはありませんが、当院にセカンドオピニオンとして来院する9割方の患者様は調べられます。これは地域柄なのかと思いたいのですが、それにしてもひどい…
腫瘍と腫瘤の違いや腫瘍についての説明は次回以降月1回ペースで配信していきますが、
獣医の皆様はちゃんと勉強して診察/検査をしましょう
まずは
腫瘤を見付けた際の検査・診断について簡単に記しておきます。
腫瘤を見付けた際、必ず行いたいのは細胞診です。
この細胞診というものは非常にリスクが低いため、体表の腫瘤であれば簡単に行えます。
腹腔内等であっても腕により鎮静程度で針生検出来る場合があります(自分の病院は信頼できる病院がありますのでそちらの先生にお願いしております)。
しかし、反面、腫瘤が腫瘍なのか良性病変なのかの特定には至らないことがしばしばあります。
又、腫瘍であっても(針で細胞を採取しただけなので)組織への入り込み方がわからないため良性/悪性の判断もつかないのが普通です。
しかし、麻酔をかけずに行える腫瘤の診断としては唯一の方法ですし、非常に重要だと思います
次に、細胞診にて腫瘍が疑われた場合に行いたいのが組織検査です。文字通り腫瘤を一部ないしは全部切除して、切除した腫瘤を病理検査に送ります。
組織の切除は痛いため往々にして全身麻酔下で行うことになります。
ここで動物病院の獣医さんにワンポイントアドバイス
病理医の診断によって予後が変わりますので、病理検査機関は絶対に値段では決めてはいけません!必ず信頼できる病理医に依頼し確定診断をしてもらいましょう‼
十分な量の組織を出しても確定診断がくだらない、もしくは臨床症状と合致しないようであれば病理検査機関を変更することも検討してください。
病理医も人間ですし、病理医によって診断が変わることもあることはご理解してください。
もちろんご自身が病理医の資格を有していても、治療している間に先入観がうまれてしまい、誤診することも懸念されますので、確かめるために他の機関に診断していただくことも推奨されます。人間は万能ではないのです
また、腫瘤を簡単に焼き切るもしくは凍結させて壊死させることにより皮膚腫瘤を無麻酔で摘除する病院もありますが、腫瘤が悪性であった場合は浸潤や転移のリスクを見逃してしまう可能性があるので、これについても賛否両論あります。
異常な細胞/組織を摘出した際、間違っても病理組織検査を行わないような動物病院があってはいけません❢
ほら、そこのあなたも、ゴミ箱から拾って早くホルマリン固定しましょう!
オーナーの方も、いくら安くても病理検査をしないような病院には行かないようにしてください。
組織性状により今後の治療方針が左右されます。人生の分かれ目と言っても過言ではないと思います。
病理検査の結果を確認したのち、必要に応じて腫瘤の拡大切除や抗がん剤、放射線治療などを行います。また、腫瘤が腫瘍であれば生存中央期間というものが調べられてますので、そちらも確認した後にどの治療をおこなうか相談しましょう。
体表腫瘤であっても腹腔内腫瘤であっても上記の流れにそって腫瘤の診断とします。
血液検査やX線検査では腫瘤の良悪はわかりません。
また、人より早く年を取る動物達の為を思えば腫瘤を放置するのは命取りになることがあるので早期発見・早期治療をすすんで行うほうが良いと思います
獣医師の皆さん、
貴方にとってその患者は100頭の内の1頭ですが、その仔はひとりしかいません
腫瘤の診断ひとつでその仔の命が左右されることをしっかりと胸に刻んでください
この仕事は金もうけのための仕事ではないのですから
「ブラックジャックによろしく」より抜粋。 名言です!
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