1001タイ映画、千夜一画 

タイ映画またはショートフィルム他で心の琴線に触れたアーカイブ。

メコンホテル (Mekong Hotel)

2015-02-26 21:15:33 | タイ映画

 即興憑依映画としての「メコンホテル」


メコンホテル用の画像の結果。

トライアルと実際に全編を通して観るのとほとんど内容は何も変わらなかった。「メー・コートード」(お母さんを許してね)というのはメー(母)を一人称半で呼んで、あたかも娘の内蔵を喰らうのを肝喰の霊(ピーポープ)に責任転嫁させているが、すごくメコンの環境に馴染んで風のように聞こえる。

メコン沿いにあるメコン・ホテルで彼女は働いている。バンコクが2012年に大洪水になって、ドンムアンも鉄道、バスも運行できなくて特に幹線道路が冠水した。いま考えるとタイが濁流に閉じ込められたのも同然だが、中心部はかろうじで被害がなかったので、洪水とか関係なく日常生活が送れた。地方の被害も甚大でバンコクで働いている人は帰れなくなったり銀行もクローズになった。映画の中の会話のように家族に送金もままならず、息子や娘が働きにいって地方の家族を支える姿がある。映画の会話はほとんどが即興のようで、受け答えよりも皆がパラレル(並列)で話すのだがそんなことはタイ語だと大して気にならない。

フランス語字幕なので、英語のSubを入れると文字まで多層になって読みにくい。結局タイ語のまま聞いていると、タイ独特の空間が村の朝の煙のように立ち上って心地良い。先日、ビエンチャンから帰ってきたばかりだが、メコンを捉えるのは至難の技だ。川岸のホテルで何気なしにロビーで写真を撮ったら化け猫が恐ろしい形相で私を睨んでいる写真があった。この世の猫ではあるまい。メーも600年も生きている人間ではなく何かに取り憑かれる化け物と告白して、娘の腸を取り出してムシャムシャと喰う。まるで獣の喰い方で家族で娘の腸を饗食儀礼しているシーンは現実か夢なのか、一度アピチャイポン氏に質問事項を予め箇条書きにして聞いてみたいが、はぐらかされるだけだろう。

クラスメートの生ギターのサウンドも心地良い響き。ヘタウマではなくヘタヘタの弾き手は天然の良さがあってメコンにはこの響きが似合う。会話の中に日本人のMasatoを登場させる。かれは東北の農村生活を調査しているらしいが、JICAとかの実在する知り合いなのだろう。監督の父は英字紙Nationの元編集長。彼は日本嫌いで有名だったので意外。

ホテルの部屋の窓からはメコンと西側は一本の田舎道が見える。あの道はバンコクに続いて若者の夢と希望の吸い取り紙だ。メコン沿いのバス亭のような空き地で母と息子は理由もなく穴を掘り、娘の死体を埋める儀式。メコンのように永久に繰り返す川のように明日からの生活も何も変化がなく。ノイの弟も、恋人も同じ顔のようだが、それもどうでもいいほど退屈が人間の意志までも奪い去る。

メコン・マジックのエンディングはウォーターバイクのジグザグ走行で、洪水の真っ最中にジンラック首相が出席してチャオプラヤー川の儀式を連想させた。
王宮やワットプラケオを洪水の被害から少しでも救おうと、バンコク中の船、ボート、バージ船が集合してエンジンを下流の海に向けて全開させ、濁流を追いやろうとする作戦だが見ていて劇場国家のライブ・パフォーマンス。今になってみるとジンラック首相(当時)がタイから追い出されそうなのは生贄としての最初の首相になった。

 

https://www.youtube.com/watch?v=uqsBI8PiME0

監督とギタリスト

https://www.youtube.com/watch?v=WX7sQS5ZYQc&index=2&list=PLtZWsRBEIf5_jFERXpuWWNLIBoRxjK_yv



最新の画像もっと見る

post a comment