Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

公開食事…私生活も見世物

2016-01-24 16:03:09 | つぶやき

 ルイ14世は王の権威を示すため、フランス王家の伝統だった公開食事を死去する直前まで欠かさずにおこなった。他にも宮廷生活のことごとくを厳粛な儀式とし、毎朝貴族たちの前で着替えや鬘付けをした。なかなか自己顕示欲の強い、自分を見てほしい気持ちが半端でない王である。

 公開食事の伝統は、ルイ16世とアントワネットの時代にも引き継がれた。次の写真はヴェルサイユ宮殿内の王族の食事室。白いテーブルから約3mくらい離れた位置に、参観者用の椅子がずらりと並べられており、彼らの視線を浴びながらルイ16世やアントワネット、子どもたちは食事をとった。見る側も見られる側も緊張しなかったか?「おお、今日のメインはプロヴァンス風チキンの照り焼きだ。」「ルイ16世は噂どおり大食いだな。」とかなんとか思いながら、じっと一家を注視していたのだろうか。見ている人たち、お腹が空かなかった?一方の見られる側は「これもノブレス・オブリージ(高貴な者が果たすべき務め)」と思い、割り切っていただろうか?公開食事…何もそこまで他人に見せる必要はないと思うのだが、ルイ14世にしてみれば「すごいだろ、王はこんなに豪勢なものを食べているのだぞ。」と見せつけたかったのかもしれない。

 「ベルばら」原作でも、公開食事について触れている場面がある。ルイ16世・アントワネットが臨席する晩さん会で、ド・ゲメネ公爵と決闘寸前になるシーンがそれ。

 オスカルは晩さん会に出席するのは、あまり好きではなかったかな?

 そしてアンドレはごく自然に「いつものように ほかの貴族たちと 会食の見物といくか」と話す。アンドレにとって、公開食事で見物側に廻るのは、ごく普通のことだった様子。特に卑屈な態度を取ることもなく、任務として見物していただろう。オスカルは正式に国王夫妻から招待を受け、座席もちゃんと用意されて食事をサービスされる。少し離れたところでアンドレは会食の見物といいながら、実はオスカルに何かあったときのためにちゃんと控えている。

 晩さん会はおそらく1時間以上かかるはず。その間見物するアンドレはずっと起立している。任務とはいえ、アンドレもまた大変。

 この頃思うのだが、近衛隊と衛兵隊。仕事のやりがいからすると、オスカルにとって衛兵隊のほうが苦労も多かった分、手ごたえがあったのではないか?衛兵隊にはわずか2年くらいしか属していないけれど、短いながらも非常に密度の濃い時間を、隊員たちと過ごしたように思う。保守的で名誉を重んじる人からみれば、近衛隊に入隊できるのはとてもありがたいことなのだろうが、オスカルは体面を気にする人ではない。一度はベルナールから「王宮の飾り人形」と言われたオスカルが、自分の意思を持った人間として本格的に歩み始めたのが、衛兵隊に転属してからのように思う。煌びやかな宮廷ライフとは縁がなくなったけれど、オスカルもアンドレも何も後悔はしていないだろう。

 読んでくださり、ありがとうございます。



9 コメント

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とっても新鮮です☆ (金柑)
2016-01-24 18:11:42
いつもりら様の勤勉さに感心し続けております。お仕事もされながらブログを更新し、コメントにもおひとりおひとり丁寧に返信されながら、常に知識を得ようと探求される姿勢、すごいです。ただ“純粋に好きだから”というレベルでなく、読者の私にもそれ以上のものを感じさせます。
今まで、『ベルサイユのばら』を当時の文化や背景を考えながら読んだことはありませんでした。りら様のこちらのサイトに出合うまでは…。
私にとって、ベルばらの新しい楽しみ方を知ることができて本当に新鮮です。今回の食事会にしても、文字通り“文字面”しか追っておらず、どんな文化や背景があったのかを不思議に思うことすらなく読んでいました。まー、せいぜい、食いしん坊の私は「うわー、国王が食する本格的なフランス料理、私も食べてみたいなー」止まりでした(笑)
当時の文化や時代背景を知ると、より登場人物の“心のひだ”も深く読み取れますね、きっと。
私もいいとこ取りばかりせず、りら様を少しは見習わねば!!
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Unknown (アラレ)
2016-01-24 18:17:28
人が食べているのを見てるなんて、ハッキリ言って拷問以外何ものではありません
お腹空いてないけど、メニュー見てるだけでもお腹空いた気分になって、つい注文しちゃう私にはとても我慢出来ません
アンドレ偉い、よく絶えた

そうそう、銀座プランタンで売られてる、ベルばらグッズ、
お取り寄せ出来るみたいですよ、
プランタンに問い合わせした方からの情報です
、送っていただけるそうで、
流石にプリンだけは賞味期限が当日中なので、
ダメだそうです、
もし、欲しいグッズあれば問い合わせしてみたらいかがでしょうか?

因みに、プリンを作ってるお店は、
【ぷりん屋BATON】と言います
普段から売ってるプリンは楽天からでも購入可能です
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金柑さま (りら)
2016-01-24 22:24:57
 コメントをありがとうございます。

 過分なお言葉を頂き恐縮です。「ベルばら」についてあれこれ考えるのは、私にとって日常を離れられる至福の時。気持ちや頭の切り替えもできるので、ブログも楽しみながら書いております。ですので気軽に読んでいただければ幸いです。「ベルばら」は探れば探るほど、いろんな事実が飛び出します。自分にフランス語の知識があれば、もっとたくさんの文献や資料を読むことができるのになあと残念に思う時もあります(翻訳機能を使って変換すると、トンデモナイ訳になってしまいます)。

 ともするとアンドレが髪を切る前の部分を読み返さないことが多いのですが、オスカルは結構早い時期からアントワネットの行く末を案じていますよね。今年はもっと原作の前半部分をしっかり読もうと思います。

>当時の文化や時代背景を知ると、より登場人物の“心のひだ”も深く読み取れますね

 そして原作を一層好きになります。本当に「ベルばら」はすごい作品です。

 金柑さま、別件ですが以前話題になった映画「ニューシネマ・パラダイス」についてです。NHK BS プレミアムで2月12日(金) 夜11:45~午前1:50 に放送されます。よろしければ録画してご覧になってはいかがでしょう。
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りら様こんばんは。 (marine)
2016-01-24 22:34:31
日本全国的に大寒波に見舞われましたね。
私の住むところは寒いは寒かったですが、お天気は良かったです。

この公開食事の記事、とても面白かったです。ド・ゲメネ公爵との一触即発の場面がその時だったとは。アンドレはそばで見てるのは分かったのですが、他の貴族と一緒に、のくだりは意味わかりませんでしたが、そういう習慣があったのですね。
見物してる貴族の中には、いつか自分もあの席に招待されるようになりたい、などと考えていたでしょうか?
でも、オスカルは、りら様のおっしゃるやうに、地位や名声など、権威を誇示することにはあまり興味はなく、仕事の中身にやりがいを見出すタイプと思います。

りら様、五代様ロスに陥っております。
でも明日からまた新しい登場人物が出てきそうなので、少し楽しみに待ちたいと思います。

で、こちらは現実の訃報ですが、この記事の元にもなっていた、ルイ14世の役を「ヴェルサイユの宮廷庭師」で演じていた(監督もつとめていた)アラン・リックマン氏が亡くなりました。映画を観てからあまり時間が経っていなかったので、ちょっとびっくりしました。ダイハードの最初の作品に適役で出ていた俳優さんで、その時と宮廷庭師の映画の時は、かなり容貌が変わっていたので、すぐ結びつきませんでしたが。未見ですが、ハリーポッターシリーズで有名だったようですね。味のある俳優さんでした。デビッド・ボウイの死も、驚きましたね。

りら様の、マルセイユ石鹸の記事も、独占して製造する権利をマルセイユに与えたのはルイ14世だったのですね。
良い物が長く受け継がれていくのは素晴らしいですね。オレンジのエッセンシャルオイルをいれてらっしゃいましたよね?良い香りの石鹸、仕上がりましたら、また記事にしてください、お待ちしております。
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アラレさま (りら)
2016-01-24 22:40:11
 コメントをありがとうございます。

>人が食べているのを見てるなんて、ハッキリ言って拷問以外何ものではありません

 同感です。悪趣味な感じもしますね。でも権力者たちって人に見られながら食べることを、別に何とも思わない。むしろギャラリーがいないとダメなんでしょうね。

 プランタン情報をありがとうございます。年末年始、断捨離しながら「今年こそ、むやみに物を増やすまい。」と誓いました。今回のベルばらグッズ、好評なら今後またどこかで売り出すと思います。すぐにネットショッピングに飛びつかず、自分の目で確かめてから買おうかな。これまで「原画展」などでいろんなグッズを買ってきたので、だいぶたまってきました。「ベルばら」グッズはどれも断捨離できないので、増える一方です。
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りらさま (ロクサーヌ)
2016-01-24 23:03:49
ルイ14世はフォークの使い方が、とても上手だったとか。
きっと見せびらかしたかったのでは。
ヴェルサイユ宮という大舞台で王者を演じるのが大好き!な王様。パフォーマンスにふさわしい心と容姿をもっていらっしゃったのでしょうね。

フランス衛兵隊・・・。
当初あれほど反発した彼らが、後にオスカルを敬愛し、ついには死出の旅路の供となった。感慨深いものがあります。
あの暴れぶりが哀しく、懐かしいです。
一方の近衛隊時代。
父ジャルジェ将軍の期待を一身に背負い、自らの任務を何より誇りに思い、愛をこめて王妃様に仕えた日々。
若さゆえの正義に燃えるオスカルの姿は好ましく、自分も又そのような心を忘れずにいたいものと思います。
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marineさま (りら)
2016-01-24 23:32:28
 コメントをありがとうございます。

>見物してる貴族の中には、いつか自分もあの席に招待されるようになりたい、などと考えていたでしょうか?

 貴族にもピンからキリまであり、ヴェルサイユ宮殿内に部屋を賜っていた人、そうでない人などさまざま。下級貴族たちの中には、早く自分も宮殿に住み、王族と同じテーブルで食事したいと野望を持つ人がいてもおかしくないですよね。ポリニャック夫人など、言葉巧みに若いアントワネットに近づいていったのでしょう。

>五代様ロスに陥っております。でも明日からまた新しい登場人物が出てきそうなので、少し楽しみに待ちたいと思います。

 ここ2週間は五代さんのほうが、新次郎さんより目立っていました。ディーン・フジオカさんという俳優さん(武田真治さんを若くしたようだなと勝手に思っていました。)を知ったのも収穫?でした。明日からまた新たなイケメンの登場ですか?脚本家の方、女性視聴者の心理をちゃんとわかっていますね。

>アラン・リックマン氏が亡くなりました

 「ダイハード」…ブルース・ウィリス主演作ですね。懐かしいです。私にはハリー・ポッターシリーズのスネイプ先生が印象深いです。あの方以外のキャスティングはありえないと思うほど、役に嵌まっていました。他にもジョニー・デップが主演した「スウィーニー・トッド」というちょっとホラー系の映画にも出ていることを知りました。(この映画、見たのですが、アラン・リックマンが出ていたことに気づきませんでした。)デビッド・ボウイといい、70年代に活躍したスターさんの訃報はつらいです。デビッド・ボウイの死を、ポール・マッカートニーはどう受けとめているだろう?

>良い香りの石鹸、仕上がりましたら、また記事にしてください、お待ちしております

 せめて石鹸だけでもアントワネットとオスカルの気分に浸れたら…。石油系の物質を一切使っていないので、きっと肌に良いと思います。追加して作ろうかなと考えています。完成まであと約1カ月。またご報告いたしますね。
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ロクサーヌさま (りら)
2016-01-24 23:43:38
 コメントをありがとうございます。

>ヴェルサイユ宮という大舞台で王者を演じるのが大好き!な王様。パフォーマンスにふさわしい心と容姿をもっていらっしゃったのでしょうね

 そのとおりだったと思います。ルイ14世はクラシック・バレエも得意で、よく人前で披露したとか。とにかく自分を見てもらいたい気持ちが、人一倍いえ二倍三倍強かったように思います。

>自らの任務を何より誇りに思い、愛をこめて王妃様に仕えた日々。
若さゆえの正義に燃えるオスカルの姿は好ましく、

 近衛隊時代は、本当にオスカルの若さ、まっすぐさが表れていました。オスカルにとって近衛隊も衛兵隊もどちらも深い思い入れがあるでしょうね。愛を込めて王妃さまに仕えた日々…子どもを産む前のアントワネットは、栄光の座に酔いしれ軽薄な行動が多かったにもかかわらず、そんな彼女を軽蔑することなく、誠実に尽くしていた。オスカルって凄いなと思います。結局オスカルは、どんな場面に立たされても、自分を見失うことなく生きられる人ですね。
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Unknown (kei)
2023-01-30 16:04:05
はじめまして。
公開食事、興味深いですよね。
ちょっと違う見解もあるようで、出典を忘れてしまったのですが、ルイ14世の時に行っていた公開食事は、アントワネットの時代には段々行われなくなり、そのことが権威の失墜につながり民衆の貴族への反発となったという解釈もあるそうです。
ルイ14世が死去する直前まで食事公開を行ったというのは、生半可な覚悟でもないように感じるので、私はこの説に納得感を感じるところもあります。
あらゆる儀式は、やはり王様といえど面倒なことだろうし、それでもやり遂げたというのはすごいことにも感じられます。
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