Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

言葉はなくても---

2015-03-13 23:16:50 | つぶやき

 池田先生の作品を読んでいると、台詞や文字のないコマに、大きな意味が込められているなぁと感じることがしばしばある。この絵もそんな1つ。(新作エピソード2「ジェローデル」編より)

 10歳のフローリアンから「女であるがゆえに 未来の王太子妃殿下づき近衛士官になれるというのは あなたも不本意だろう。この私を納得させていただきたい。」(いやぁ~、これが10歳の男の子が言う言葉なのか!フローリアン、なかなか大人びている。)と言われ、オスカルは勝負を受けて立つ。フローリアンはオスカル用の剣を用意し、彼女に向けて地面に放る。ところでフローリアンはオスカルと直接対決したいため、わざわざ彼女を呼び出したのだろうか?そしてオスカルも誘いに応じて、アンドレを伴いやってきたのか?そしてここはどこだろう?

 アンドレはオスカルに、彼女が日ごろ使っている慣れた剣を差し出す。当然オスカルは自分の剣を選ぶ。まだ12歳ながら、アンドレにもプライドがある。いちゃもんをつけてきた相手の剣を、オスカルに使わせるわけにはいかないと。

 このエピソードでは、12歳のアンドレはとても落ち着いた思慮深い少年に描かれている。本編のアンドレは、黒い騎士を捕まえるため、髪をカットしたあたりからようやくセクシーな男へと変わっていくが、それまではどちらかというと三枚目キャラで、オスカルの有能な右腕にはあまり見えなかった。新作エピのアンドレの、子供ながら何と賢そうなことか。

 試合を終え、フローリアンの剣を拾い返すアンドレ。言葉はないものの、お互いどんな思いで相手を見ていただろう。まさか約20年後、アンドレは温かいショコラを、彼の顔にひっかけることになろうとは、この時はどちらも想像していなかったはず。

 そして---小さなコマだけれど、ぐっときたのがこの絵。手合わせを終え去っていくオスカルとアンドレは、並んで歩かない。アンドレが2~3歩、オスカルの後ろから彼女につき従うかのようにしている。12歳で早くも自分の立場をわきまえている様子が、このたった1枚のコマから伺える。ジャルジェ家に来てわずか4年の間に、アンドレは自分の立ち位置をしっかり理解したのだろう。何気ないけれど、大好きなシーンである。

 明日から北九州市で「わたしのマーガレット展」が開催される。見に行かれる方はどうか存分に、マーガレットの少女漫画華やかなりし頃を楽しんできてください。

 読んでくださり、ありがとうございます。



26 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
アレクセイの熱き想い*4 (鈴蘭の精)
2015-05-01 00:54:47
「俺はネヴァ川に落ちてすぐ、川のほとりに待機していたズボフスキー達同志に助けられた。
なぜか、傷はことごとく急所を外れ、頭を撃ち抜かれなかった事が、不幸中の幸いで、一命は取り留めたものの、何日も生死をさまよった。
そんな俺をこの世に引き戻したのが、赤んた坊の耳を突き刺す、けたたましい泣き声だった。
目を覚ますと、枕元にリュドミールがいた。
その、腕の中には小さな小さな、赤ん坊、俺とユリウスの娘だった!
ドイツに帰ってしまったユリウスの代わりに、俺の元にミーナがやって来たんだ。
ミーナ、その名はね、ドイツ語で愛に包まれた強い心を持つという意味。 実際、あの子はいつも回りの人に愛を与えた。そして、どんなに辛くても泣かないんだ。
不思議な娘だ・・・。」
返信する
鈴蘭の精さま (りら)
2015-05-01 17:11:15
 お便りをありがとうございます。一(いち)ファンとしてアレクセイの死もユリウスの死も、不条理で「なぜ?」と言いたくなります。だからこうして生き延びて、幸せに生きようとする姿を見るのは嬉しいです。
返信する
アレクセイの熱き想い*5 (鈴蘭の精)
2015-05-01 23:45:23
「 ボリシェビキが勝利し、人々は歓喜していた。 だが、俺は、おばあ様を失い、ユリウスがドイツへ去り、空しさだけが残っていた。
ズボフスキーに告げた 『革命家を辞める事を』
だが、俺は訴えた 『革命家アレクセイはネヴァ川に沈んだ。ここにいるのは、娘と平和に穏やかに暮らす事を望んでいる一人の父親だ』と、
この言葉で彼は 『そうか、これからは、同志ではなく、友達アレクセイだな。』と、温かく笑ってくれた。
こうして、俺の0からの出発が始まった。
指が動かなくても、ヴァイオリンが弾けなくても、音楽家の道を目指したいと!」
ふっと、気が付くと、ユリウスがアレクセイの動かない指を摩っています。
そして、紙に言葉を書き、気持ちを伝えます。
『諦めないで。ヴァイオリンが弾ける手が戻るよう、僕が毎晩マッサージするよ。アレクセイも指を動かすトレーニングしてみたら。』
ユリウスの目は真剣です。
「ありがとうよ。努力、怠るな!だな。 だが、おまえも間違ってるぞ。僕は変だ。それに、男言葉も。 今では、ドレスも着こなせるようになった、立派な女性で母親だ。 ミーナが聞いたら『お母さん、男の子の話し方はヤメテ!』と、叱られるぞ。
ユリウスはお腹に手を当て、苦しそうに笑い転げます。そして、紙に『声が出るようになったら、女性らしい話し方をします。』と、書き、アレクセイに手渡します。
「よし、それでこそ、俺のエウリディケだ。」
再び、二人の笑顔が弾けます。
夜はまだまだ、始まったばかり、時が静かに流れます。
りら様、今日は5月1日、鈴蘭の日!どうしても、お父さんとお母さんの笑顔のお話しにしたくて、長くなりました。ご免なさい。ミーナより
返信する
鈴蘭の精さま (りら)
2015-05-02 10:02:35
 お便りをありがとうございます。5月1日は鈴蘭の日でしたか。ヨーロッパでは広く認知されているのでしょうか。爽やかな今の時期にぴったりの花ですね。ユリウスがゆったりとしたドレスを着て、柔らかな女性言葉で話したら、とてもたおやかな女性に見えます。そんな日が来るのも、そう遠くないでしょう。

 長いお話、大歓迎です。お気遣いなく。
返信する
アレクセイの熱き想い*6 (鈴蘭の精)
2015-05-02 23:06:13
「俺は、兄貴と同じモスクワ音楽院に入学した音楽に関する事は、全て知りたいと、思った。
オケ、室内楽、合唱、全ての指揮、音楽理論、音楽学、音楽史、勿論、作曲、作詞。寝る間も惜しんで勉強した。
大学はモスクワ、ミーナはペテルスブルク、2つの都を往復の日々が続いた。 講義が増えるにつれ、何週間もミーナの元へ帰れない時もあった。
ズボフスキー、そして、リュドミールには世話になった。ユスーポフ候の弟だ。
ユリウス!あァ、何でおまえはユスーポフの名を聞くと、そんなに動揺するんだ…。」
『彼は、どうなったの?』ユリウスの目は、アレクセイにすがるように、問いつめます。
「レオニード、君は、そう呼んでいたね。彼は
見事に敗北したよ。そして、自決した…。」
ユリウスの目から涙が溢れます。アレクセイは思わず、ユリウスを引き寄せ抱きしめます。
妻の嗚咽が胸に響きます。 でも、今は何故か、
嫉妬という感情はわきません。
ユリウスを、長きにわたり支えてくれ、面倒をみてくれた恩人の冥福を、心から、祈るのでした。
返信する
鈴蘭の精さま (りら)
2015-05-03 21:05:21
 お便りをありがとうございます。レオニードとアレクセイ---ユリウスを愛した二人の男。レオニードは結局最後、アレクセイをおびき出すため、ユリウスを利用した形になります。だからユリウスにとって、ロシアで自分をかくまってくれた恩を感じるとともに、憎しみもあるはず。実際どうだったでしょうね。アレクセイは---レオニードなしではユリウスはロシアで生活できなかったでしょうから、嫉妬よりも感謝の念が大きいかもしれません。ユリウスの心は自分に向いている自信から来る確信ですが。
返信する
アレクセイの熱き想い*7 (鈴蘭の精)
2015-05-04 00:09:45
「ユスーポフ候の弟、リュドミールはズボフスキーが面倒をみてくれた。そして、ボリシェビキの自分の隊へ入れてくれた。
ミーナは本当によくリュドミールになついてね。リュドミールも毎晩うちへ夕食を食べに来たよ。必ず、毎日。 そして、俺が留守の時はアパートに留まってくれた。勿論、部屋は別だよ!ミーナはレディーだからね。
だが…、貴族出身のリュドミールにとって、ロシアは居づらい国になってしまった。結局、俺達と一緒にロシアを後にした。
今はね、遠い親戚を頼って、スイスの軍隊で働いている。
ミーナとリュドミールは仲良しだからね、手紙を書く約束をしていた。 俺達ミハイロフ家とユスーポフ家 は縁が切れることはない。ずっと、繋がっていけると、思う。
おっと、話がそれてしまった。俺の音楽への道の話に戻るとしよう。
俺には、目標があった。立派な音楽家になって、おまえをドイツへ迎えにいくという。
それには、6年の歳月が必要だった。俺は燃えたぞ! 必死に勉強した。
30才を過ぎたおっさんが10代の青年達と肩を並べて、講義に出るんだからな。
はっはっはっ・・・!」アレクセイは懐かしそうに笑います。
返信する
鈴蘭の精さま (りら)
2015-05-04 10:14:30
 お便りをありがとうございます。リュドミール単独でも単行本1冊分のストーリーが描けそうなくらい、彼もとても惹かれる人物です。彼は実兄レオニードのことも大好きだけれど、アレクセイにも強く惹かれていたでしょうね。だからミハイロフ家と自然とつながっていった。
返信する
アレクセイの熱き想い*8 (鈴蘭の精)
2015-05-04 18:13:40
「若い音楽生の中には、優秀な演奏家が大勢いた。 だが、内乱中のロシアでは演奏する場が無いんだ。才能が埋もれていく光景を見るのは辛かった。
そして、決意した。彼らの縁の下の力持ちになろうと! 若い奴らが演奏する場所を与えてやろうと! そんな仕事に就こうと思った。
それでだ。急な話なんだが、明日からしばらく、フランスへ出張なんだ。
俺の後輩に、素晴らしいソプラノの声を持った女性がいる。彼女を何としても、パリのオペラ座でデビューさせてやりたい!
実は、ダーヴィドにあるフランス女性を紹介してもらった。
彼女の名は、オスカル フランソワ。フランス外務省に務めている。
オスカルは芸術に深い理解を示してくれている。自らも、ヴァイオリンを弾くそうだ。 彼女の力を借り、パリ・オペラ座に交渉するつもりだ。 俺にとっては、これからの道づくりになる大仕事だ!何としても、成功させたい。
暫く、ミーナと二人で待っていてくれるね。
なぁ、ユリウス、これからは、過去を振り返るのもう、やめにしないか?
ほら、おばあ様の鈴蘭も『前を向いて、幸せにおなり!』と、励ましてくれているぜ。
ミーナとロシアで暮らしている時は、『苦しみ、悲しみは1/2、喜びは2倍。』二人でそう思って生きて来た。
これからは、『苦しみ、悲しみは1/3、喜びは3倍』だ。」
アレクセイは、テーブルの上の最後の黒パンを口に入れ、ウォッカを飲みほしました。
「さぁ、そろそろ寝ようか?」
ユリウスは紙に言葉を示します。『後片付けがあるから、先に休んでいて。』
「よし、分かった。じゃあ、先に休むと、しよう」アレクセイはユリウスを軽く抱きしめ、一人、寝室へ消えて行きました。
返信する
鈴蘭の精さま (りら)
2015-05-05 00:19:10
 お便りをありがとうございます。どこか映画「オーケストラ」を彷彿とさせる展開になってきたなと思っていたら、まさかのオスカル登場!オスカルとアレクセイ、ユリウスが同じ時代に関わることができるのはSSならでは。この先、フランスでオスカルとアレクセイはどんな出会い方をするのでしょう?
返信する

コメントを投稿