
池田先生の作品を読んでいると、台詞や文字のないコマに、大きな意味が込められているなぁと感じることがしばしばある。この絵もそんな1つ。(新作エピソード2「ジェローデル」編より)
10歳のフローリアンから「女であるがゆえに 未来の王太子妃殿下づき近衛士官になれるというのは あなたも不本意だろう。この私を納得させていただきたい。」(いやぁ~、これが10歳の男の子が言う言葉なのか!フローリアン、なかなか大人びている。)と言われ、オスカルは勝負を受けて立つ。フローリアンはオスカル用の剣を用意し、彼女に向けて地面に放る。ところでフローリアンはオスカルと直接対決したいため、わざわざ彼女を呼び出したのだろうか?そしてオスカルも誘いに応じて、アンドレを伴いやってきたのか?そしてここはどこだろう?
アンドレはオスカルに、彼女が日ごろ使っている慣れた剣を差し出す。当然オスカルは自分の剣を選ぶ。まだ12歳ながら、アンドレにもプライドがある。いちゃもんをつけてきた相手の剣を、オスカルに使わせるわけにはいかないと。
このエピソードでは、12歳のアンドレはとても落ち着いた思慮深い少年に描かれている。本編のアンドレは、黒い騎士を捕まえるため、髪をカットしたあたりからようやくセクシーな男へと変わっていくが、それまではどちらかというと三枚目キャラで、オスカルの有能な右腕にはあまり見えなかった。新作エピのアンドレの、子供ながら何と賢そうなことか。
試合を終え、フローリアンの剣を拾い返すアンドレ。言葉はないものの、お互いどんな思いで相手を見ていただろう。まさか約20年後、アンドレは温かいショコラを、彼の顔にひっかけることになろうとは、この時はどちらも想像していなかったはず。
そして---小さなコマだけれど、ぐっときたのがこの絵。手合わせを終え去っていくオスカルとアンドレは、並んで歩かない。アンドレが2~3歩、オスカルの後ろから彼女につき従うかのようにしている。12歳で早くも自分の立場をわきまえている様子が、このたった1枚のコマから伺える。ジャルジェ家に来てわずか4年の間に、アンドレは自分の立ち位置をしっかり理解したのだろう。何気ないけれど、大好きなシーンである。
明日から北九州市で「わたしのマーガレット展」が開催される。見に行かれる方はどうか存分に、マーガレットの少女漫画華やかなりし頃を楽しんできてください。
読んでくださり、ありがとうございます。
なぜか、傷はことごとく急所を外れ、頭を撃ち抜かれなかった事が、不幸中の幸いで、一命は取り留めたものの、何日も生死をさまよった。
そんな俺をこの世に引き戻したのが、赤んた坊の耳を突き刺す、けたたましい泣き声だった。
目を覚ますと、枕元にリュドミールがいた。
その、腕の中には小さな小さな、赤ん坊、俺とユリウスの娘だった!
ドイツに帰ってしまったユリウスの代わりに、俺の元にミーナがやって来たんだ。
ミーナ、その名はね、ドイツ語で愛に包まれた強い心を持つという意味。 実際、あの子はいつも回りの人に愛を与えた。そして、どんなに辛くても泣かないんだ。
不思議な娘だ・・・。」
ズボフスキーに告げた 『革命家を辞める事を』
だが、俺は訴えた 『革命家アレクセイはネヴァ川に沈んだ。ここにいるのは、娘と平和に穏やかに暮らす事を望んでいる一人の父親だ』と、
この言葉で彼は 『そうか、これからは、同志ではなく、友達アレクセイだな。』と、温かく笑ってくれた。
こうして、俺の0からの出発が始まった。
指が動かなくても、ヴァイオリンが弾けなくても、音楽家の道を目指したいと!」
ふっと、気が付くと、ユリウスがアレクセイの動かない指を摩っています。
そして、紙に言葉を書き、気持ちを伝えます。
『諦めないで。ヴァイオリンが弾ける手が戻るよう、僕が毎晩マッサージするよ。アレクセイも指を動かすトレーニングしてみたら。』
ユリウスの目は真剣です。
「ありがとうよ。努力、怠るな!だな。 だが、おまえも間違ってるぞ。僕は変だ。それに、男言葉も。 今では、ドレスも着こなせるようになった、立派な女性で母親だ。 ミーナが聞いたら『お母さん、男の子の話し方はヤメテ!』と、叱られるぞ。
ユリウスはお腹に手を当て、苦しそうに笑い転げます。そして、紙に『声が出るようになったら、女性らしい話し方をします。』と、書き、アレクセイに手渡します。
「よし、それでこそ、俺のエウリディケだ。」
再び、二人の笑顔が弾けます。
夜はまだまだ、始まったばかり、時が静かに流れます。
りら様、今日は5月1日、鈴蘭の日!どうしても、お父さんとお母さんの笑顔のお話しにしたくて、長くなりました。ご免なさい。ミーナより
長いお話、大歓迎です。お気遣いなく。
オケ、室内楽、合唱、全ての指揮、音楽理論、音楽学、音楽史、勿論、作曲、作詞。寝る間も惜しんで勉強した。
大学はモスクワ、ミーナはペテルスブルク、2つの都を往復の日々が続いた。 講義が増えるにつれ、何週間もミーナの元へ帰れない時もあった。
ズボフスキー、そして、リュドミールには世話になった。ユスーポフ候の弟だ。
ユリウス!あァ、何でおまえはユスーポフの名を聞くと、そんなに動揺するんだ…。」
『彼は、どうなったの?』ユリウスの目は、アレクセイにすがるように、問いつめます。
「レオニード、君は、そう呼んでいたね。彼は
見事に敗北したよ。そして、自決した…。」
ユリウスの目から涙が溢れます。アレクセイは思わず、ユリウスを引き寄せ抱きしめます。
妻の嗚咽が胸に響きます。 でも、今は何故か、
嫉妬という感情はわきません。
ユリウスを、長きにわたり支えてくれ、面倒をみてくれた恩人の冥福を、心から、祈るのでした。
ミーナは本当によくリュドミールになついてね。リュドミールも毎晩うちへ夕食を食べに来たよ。必ず、毎日。 そして、俺が留守の時はアパートに留まってくれた。勿論、部屋は別だよ!ミーナはレディーだからね。
だが…、貴族出身のリュドミールにとって、ロシアは居づらい国になってしまった。結局、俺達と一緒にロシアを後にした。
今はね、遠い親戚を頼って、スイスの軍隊で働いている。
ミーナとリュドミールは仲良しだからね、手紙を書く約束をしていた。 俺達ミハイロフ家とユスーポフ家 は縁が切れることはない。ずっと、繋がっていけると、思う。
おっと、話がそれてしまった。俺の音楽への道の話に戻るとしよう。
俺には、目標があった。立派な音楽家になって、おまえをドイツへ迎えにいくという。
それには、6年の歳月が必要だった。俺は燃えたぞ! 必死に勉強した。
30才を過ぎたおっさんが10代の青年達と肩を並べて、講義に出るんだからな。
はっはっはっ・・・!」アレクセイは懐かしそうに笑います。
そして、決意した。彼らの縁の下の力持ちになろうと! 若い奴らが演奏する場所を与えてやろうと! そんな仕事に就こうと思った。
それでだ。急な話なんだが、明日からしばらく、フランスへ出張なんだ。
俺の後輩に、素晴らしいソプラノの声を持った女性がいる。彼女を何としても、パリのオペラ座でデビューさせてやりたい!
実は、ダーヴィドにあるフランス女性を紹介してもらった。
彼女の名は、オスカル フランソワ。フランス外務省に務めている。
オスカルは芸術に深い理解を示してくれている。自らも、ヴァイオリンを弾くそうだ。 彼女の力を借り、パリ・オペラ座に交渉するつもりだ。 俺にとっては、これからの道づくりになる大仕事だ!何としても、成功させたい。
暫く、ミーナと二人で待っていてくれるね。
なぁ、ユリウス、これからは、過去を振り返るのもう、やめにしないか?
ほら、おばあ様の鈴蘭も『前を向いて、幸せにおなり!』と、励ましてくれているぜ。
ミーナとロシアで暮らしている時は、『苦しみ、悲しみは1/2、喜びは2倍。』二人でそう思って生きて来た。
これからは、『苦しみ、悲しみは1/3、喜びは3倍』だ。」
アレクセイは、テーブルの上の最後の黒パンを口に入れ、ウォッカを飲みほしました。
「さぁ、そろそろ寝ようか?」
ユリウスは紙に言葉を示します。『後片付けがあるから、先に休んでいて。』
「よし、分かった。じゃあ、先に休むと、しよう」アレクセイはユリウスを軽く抱きしめ、一人、寝室へ消えて行きました。