Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

「ハプスブルク家の食卓」 (5)

2015-06-25 00:21:20 | つぶやき

 極端なダイエットを繰り返したとはいえ、エリザベートとて人の子。甘い物には目がなかったらしい。すみれのシャーベットや、すみれのアイスクリームは彼女の大好物だった。

 漂泊の旅を続けたシシィ(エリザベートの愛称)は時折、ウィーンに戻ってきた。ごくまれに公式晩さん会に出席しても、周囲の人とまったく食べ物が異なり、いつも問題が多かった。晩さん会でもいつもどおり子牛の血エキス、果物とワインを少々口にするくらい。けれど欠かさず食したものにすみれのシャーベットやアイスクリーム、すみれの砂糖漬けがあった。エリザベートはすみれの化粧水も作らせていた。

 彼女は決してベジタリアンであったわけでない。時には野生動物のキジやノロジカの肉を食べていた。野生動物のほうが、牛や豚の肉より低カロリーと信じていた。彼女はキジの肉を使ったスープがお気に入りだった。大好物の野菜はアスパラガス。暗殺される前夜、ジュネーヴで親しかったロスチャイルド男爵夫人に招待され、次のようなメニューをいただいた。ただしどれくらいの量を食べたかは不明。

1 小タンバル料理・皇帝風

  鶏挽肉、牛タンの燻製、ガチョウのレバー、トリュフなどを蒸し、これにソースをかけたもの

2 ブルゲット湖のマス料理

3 牛フィレ肉のニンジン・グリーンピース添え

4 鶏肉ムース ペリゴール風

  ペリゴール風とはトリュフとマデラ酒で作ったソースをかけた料理のこと

5 山ウズラのショーフロア 

  ショーフロアとは熱を通した山ウズラに、ブラウンソースをかけ、ゼリーでコーティングした冷菓

6 デザート

 ハンガリー風アイスクリーム、レモン入りビスケット、チョコレートのパウンドケーキ、シャンパン

 まさかこれが「最後の晩餐」なるとは夢にも思わなかっただろう。

 すみれのシャーベットの作り方は次のとおり。

 手のひら一杯のすみれの花を、乳鉢ですりつぶす。適量の湯と125gの砂糖を加えて十分撹拌する。これを一時間、冷凍さ      せる。生クリームは一切使われていない。(ダイエットのため)

 すみれのアイスクリームの作り方

1 すみれをミルクの中に入れて煮たてた後、こし器にかける。

2 ボウルに卵黄を入れてときほぐし、砂糖を加えて十分かき混ぜる。

3 2に、温めておいたミルクを2~3回に分けて加え撹拌したのち、こし器にかける。

4 3を弱火にかけ、クリーム状になったら火からおろし、粗熱を取ってバニラ・ビーンズを加える。

5 4に先のすみれ液1を加え、色が薄紫になったら、バニラ・ビーンズを取り出し、冷凍する。

 すみれのシャーベットもアイスクリームも、すみれの香りがほのかにするのだろうか?日本で商品化されないところをみると、簡単そうで、結構難しい一品なのかもしれない。

 読んでくださり、ありがとうございます。



2 コメント

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こんばんは! (みぃ)
2015-06-25 23:44:52
シシィの美への執念は凄まじいですね。
愛用のベルトを見ましたが、腕輪?頭に載せる帽子?と思う位細く小さな筒でした。
宝塚でも、シシィがミルク風呂に入るから、子どもに飲ませるミルクが無い!と民衆が怒る場面がありました。

食卓からは外れますが、当時の慣習とはいえ結婚するには幼すぎます。のびのびおおらかな環境から、満足なお妃教育の無いまま厳格な宮廷へ。しかも頼りの夫は母の言うなり…。
もう、自分の世界に逃避するしかないですよね。
新婚の頃夫の愛を強く感じる事がもっと有ったら…歴史は変わっていたでしょうね。アントワネットにも同じ事が言えます。
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みぃさま (りら)
2015-06-26 21:43:26
 コメントをありがとうございます。3~4年くらい前でしょうか、夏に日本橋三越でシシィゆかりの品が展示されました。ウエストベルトもありましたが、本当に細かったです。あれだけ細ければ、当然内臓を圧迫していたはずです。それでも美を捨てることはできなかった。
 
 ハプスブルク家は、出産前から将来の縁組を決めていることもあったそうです。軍事費にお金をかけずに領土拡大したことで、財政には優しかったかもしれませんが、一族には過酷な政略結婚制度ですね。皆が皆、国王や王妃の器を兼ね備えた人ばかりではないでしょうし----。シシィもアントワネットも、皇帝や国王に嫁がなければ、もっとストレスのない幸せな人生を送れたでしょうね。
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