身内ゆえ、常に厳しい視線で娘の行動を見つめ、忠告を続けてきたマリア・テレジアが世を去ると、アントワネットは自然の風景に癒しを求めるようになる。
↓ 4年の歳月をかけて完成させた「王妃の農場」。番組では「農村テーマパーク」と呼んでいたが、まさにそのとおり。王族が財力にモノを言わせて築いた道楽の農村。中央には池を築き、隣の町から水道を通した。
↓ 乳製品の加工所。古びた建物に見せるため、外壁にわざとひびを入れた。
↓ けれどその内部は大理石でできており、およそ本物の農村に似つかわしくない。アントワネットがしていたのは、あくまでも「農村ごっこ」。ここで新鮮なミルクやチーズをいただいた。
↓ 農場の敷地内に築いた、王妃最後の家。今年5月に初めて、内部を一般公開。一見ごく普通の田舎家に見える。
↓ アントワネットがこだわったのは、らせんを描く階段。ラインが優美でとてもきれい。フランスに嫁いでから家具やドレス、宝石などあらゆるものを一流の職人にオーダーしてきたから、モノヅクリへの美的センスは相当磨かれた。(そのために税金をたくさんつぎ込んだけれど)
↓ お気に入りのサロンに向かう廊下は、直線にせず弧を描いている。こんなところにも彼女の美意識か感じられる。
↓ 気が合う仲間だけ出入りが許されたサロンは黄色で統一されている。ヴェルサイユ宮殿のようなゴテゴテした装飾はなく、すっきりとしていて、シンプルで心地良い空間作りを目指した感じがする。この黄色は、故郷ウィーンのシェーンブルン宮殿の外壁に似ているようにも思える。アントワネットはヴェルサイユ宮殿の豪華絢爛な装飾は、もうお腹いっぱいだったのだろうか?
↓ 1789年、フランス革命勃発。アントワネットはヴェルサイユ宮殿をあとにし、パリに護送される。彼女が最後に住んだのは、コンシェルジュリ。ロココの華だった王妃がそこで着用していたシュミーズが今も残っている。
この番組は野外の風景をドローンを使って撮影しており、それがとても美しい。今回の目玉は、これまで公開されていなかった最後の家の内部を撮影し放送したこと。農場とうたいながらも、本当の泥臭い生活を送るのではなく、結局お遊びで「ごっこ」にとどまってしまった。こんな彼女の行動を、農場に招かれなかった貴族たちは呆れていただろう。本物の農民なら、「俺たちを馬鹿にするな。」と噛みつきたくもなるはず。マリア・テレジアが生きていたら、何と言っただろう?
フランスの財政が傾いたのは、アントワネットの浪費だけが原因ではない。ルイ14世がヴェルサイユ宮殿を建設した時から、既に多額の借金があった。ルイ16世の時代にアメリカ独立戦争を支援した際、かなりの援助金を出費しており、アントワネット1人の贅沢が革命を招いたわけではない。現在、世界遺産に指定されているヴェルサイユ宮殿には毎年多くの観光客が訪れ、現地の景気を良くしている。アントワネットはフランスの観光業に、大いに貢献していると言ったら失礼だろうか?
読んでくださり、本当にありがとうございます。
コマーシャルで番組があることは知っていたのに見られなかったので、こちらで内容を知ることができて嬉しいです。ありがとうございます! しかし、贅沢ですよね。その分、彼女の生活、気持ちは空虚だったのでしょうか。
まだまだ暑い日が続きます。お身体に気をつけて下さい。
>その分、彼女の生活、気持ちは空虚だったのでしょうか。
お金さえ出せば、欲しいものは何でも手に入りました。どんなに物ばかり追っかけても、満たされなかったのでしょうね。けれど革命が勃発し、王妃としての自覚を持つようになってからは変わりました。歴史に「もし~」はありませんが、アントワネットを断頭台に送る前に、もう一度チャンスを与えたかったです。
今年の暑さは恐ろしいですね。オスカーさまもお体を大切になさってくださいね。