「聖アンナと聖母子」はレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1529)が1508年頃に描いた作品といわれています。レオナルドの絵画は、描き始めてから長い年月加筆を続けていくことが多いので、この作品もこの年に彼が書き始めたと考えたほうがいいでしょう。
発注者はフィレンツェのサンティッシマ・アンヌツィアータ教会です、実はこの教会レオナルドの父親が公証人であったので、その関係で獲得した仕事であるともいわれています。しかしこの時期すでにレオナルドは、画家としての名声を確立し始めていた時期でもあるので、父親のコネクションだけではなく実力もあったものと思います。
作品を見てみましょう。
この作品を見て不思議に思ったことは、なんとマリアが母親のアンナの膝にちょこんと座っているではありませんか?
構図は、アンナの頭長を頂点にマリアとイエスが中央に三角形を形作っています。
画面の右の一角にはイエスに首を捕まえられた子羊が描かれています、イエスがゴルゴダの丘で磔刑により処刑されることと、過ぎ越しの祭りで生贄にされる羊とがクロスするように描かれています。
また、アンナの膝に座っているマリアの足とイエスの足は宙に浮いています。この姿を見ていると、かなり不安定で、精神的には不安な感じさへ受けます。
その証拠に『聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ』(1498年) ナショナル・ギャラリーの所蔵する下絵ではマリアの足がしっかりと地面を踏みしめており、羊の代わりに洗礼者ヨハネが描かれている分横に長い三角形となっており安定感はこちらの方があります。
この下絵が、最終的には現在私たちが見ている絵に変化していったことには何か重大な要因があるのではないかと考えます。
一方アンナの足はしっかりと地面に着き、地面を踏みしめています。足元を見るとレオナルドらしく岩の状況が克明に描かれています。
レオナルドの研究の範囲には、地球学、地質学も入っており、限りない興味を地学に持っていましたことが彼のメモなどにうかがい知ることができます。地層の研究したり、実際の岩の中から化石を発見したりことが記録されています。
地質学に博識がある人であれば、このアンナの足元の地層解説ができると思います。というように、彼の絵にはただ架空の物や、かつて見たことを表したげたものではなく、事実や科学的な考察に即して描かれていたということが言えそうです。
そして、アンナの頭の左右の背景の書き込に、きわめて興味深いものがあります。背景には峻険なアルプスを思わせるような山がたくさん描かれています、そしてそれがマリアの肩あたりになると水がゴウゴウと海に流れ込む様子が描かれています。
レオナルドは、終身水にも深い関心を持っていました、地球が生まれた頃からこの地球に存在し、人間にも自然にもなくてはならない存在としての水、時には災害を引き起こすことがあり、また水が戦争の戦略として使われたことがありました。
事実彼自身が戦いの作戦を実践する為ミラノでは、王宮まで水を引くための運河を作る為の構想を作り上げたことによって証明されています。彼の水に関するなになみならない興味が伺えます。
まだまだこの作品に関して描きたいことはたくさんありますが今回はこのぐらいにしておきます。
この様にレオナルドの絵には、様々な彼の興味、知識そして考察が含まれています。あなたもお気に入りの1枚を作り、少し詳しく考察を加えていくと思わぬ発見があり面白いですからぜひやってみてください。