万城目のブログ 大作戦

激動の日々をゆるーく紹介したり
特撮やプロレスの感想&「エキプロ5」でクリエイトしたキャラを公開するブログ

天使轟臨~Angels Flying in the Supercell~第五話 その4

2013-09-25 | 企画・特集

さて、Σリアの“凱旋試合”。

<(5)休憩明け 30分一本勝負>

 《沢登 真美》(Panther Gym)
 &
 〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)

 VS

 《村上 千春》(Panther Gym)
 &
 〈Σリア〉(フリー)


休憩前の試合で起こった〈イレス神威〉の乱入事件でいまだざわつく中、リアの入場。
ウォン姉妹を引き連れてリングインするや、ガウンを早脱ぎで脱ぎ捨てる。

――おおっ。

場内から息を呑む声が響く。
その下には、丈の短いダーク系チャイナドレス。
シンディーから受け取ったヌンチャクで、華麗な演舞を見せ付ける。

――おかえりなさいリア様!
――俺たちの! リア様が! 帰ってキターー!!
――リア様ーーっ! リアッ、リーアッ!! リアアアーーーーー!!

マニア層からの熱烈な歓声に応えるリア。
もっとも、この派手なパフォーマンスが、余計にパートナーのご機嫌を損ねたのはぜひもない。
ゴングが鳴るや、千春が日向をいたぶる展開。
タッチを求めるリアだが、千春、見向きもしないありさま。

(ちぇっ! ヌンチャクで殴られたくらいで……っ)

ケチな了見、とボヤいても始まらない。
千春が青コーナーに押し返されてきたタイミングで、強引にタッチ。

「てめぇ……っ」
「後はお任せっちゅうことで」

久々の日本のリング。
さすがは聖地、リングのコンディションも、観客の熱気も申し分ない。

「さ~て、なんちゃって新人王サンに、本物のプロレスっちゅうのを教えて――」
「この……おっ!」
「ンッグッ!?」

感慨にひたる間もなく、日向が突っかかってくる。
そのまま、高速フロントスープレックス!

「つっう……!」

角度といいスピードといい、新人王は伊達ではない切れ味。
立ち上がるのもまたず、ぶっこ抜き投げっぱなしジャーマン!

「~~~~っ!!」

脳天からグサリとマットに突き刺さり、たまらず頭を抱えて悶絶するリア。

(こいつ、出来る……でも!)

――ワールドの同期・八重樫に比べればさほどでもなし、と歯を食いしばって立ち上がる。
なるほど、天下の新女で揉まれているだけあって、ポテンシャルはたいしたもの――
しかし、

「こういうのも……あるっ!」
「うぐっ!?」

指を掴んでねじりあげる反則でペースを乱し、キックを乱れ打つヒール殺法で仕掛ける。
ここは、見知らぬ相手とのギリギリの試合を体験してきた、リアの場数の豊富さが生きたといえよう。
とはいえ、圧倒するには至らぬまま決着はつかず――

 ○沢登 VS 千春×
 (11分:ノーザンライトボム)

日向の首は取れず、「新ムーヴ」も披露とはいかなかった。

(……まぁ、しゃーない)

どだい、このカードでは無理があった。
むしろ、強引に出し切らなくてよかったとさえいえる。
それはいいとしても、

「てめえっ! 何で助けに来ねぇっ!」
「いやぁ……あんなに簡単にピン取られるって思わなくて」
「何をっ!!」

千春と小競り合いをやらかすありさま。

(いや、あんたとやりあってもしゃーないから)

適当にあしらい、マイクを握ったリア、

『なかなかやるわね、“次代の大物”さん! でもこのリア様ほどでは――』

とアピールしようとした、矢先。

「……あぐっ!?」

突然、背後からイスで殴り倒された。

「修行してきたってわりには、甘いな~。また国外逃亡したほうがええんちゃう?」
「ぐ……っ、う……!」

成瀬唯の人を食った笑み、更には――

「うっふふふ……っ♪ さよ~なら……リ~ア……ちゃんっ!」
「! アンタは……ッ!」

〈大空 ひだり〉――否、〈アトラス・カムイ〉の、ブルーボックスでの一撃!

紅く染まる視界の端で、日向もまたJ1Kの輩に袋叩きにされている。
用心棒のはずの、ウォン姉妹たちは……!?

『こ、このデカブツ……!!』
「う、ふ、ふ、ふ、ふ…………」

場外で、ラダーを両手に持って大暴れする〈大空 みぎり〉……いや〈ジャイアント・カムイ〉の蹂躙に、なすすべがない。

「な~に、うちらも鬼と違うからな。ちゃんと詫びいれて筋通すなら、堪忍したってもええんやで?」
「……っ、だ、誰……がっ!」

そんな薄みっともないマネが、できるものか。
できるのなら、とっくの昔に――

「せやろな。じゃ、腕の一本くらいは、貰っとくわ」
「…………!」

マスク越しにもわかるほど嬉々として、アトラスがスレッジハンマーを振り上げる――

「――はあっ!」
「!?」
「な、何やっ?」

突然飛来した影が、アトラスをかっ飛ばす。
いやアトラスのみならず、成瀬や、日向を襲っていた連中も、リングから追い出された。
誰の仕業かと見れば、

《ウィッチ美沙》
《YUKI》
《小縞 聡美》
〈フランケン鏑木〉
《木村 華鳥》

といった面々。
新女の若手グループであった。

『貴方たちの相手は美沙たちがしてあげるのです!
 そう、美沙たち――
 【レッスルエンジェルス・ドリーム】がっ!』

美沙のマイクアピールに、大きなどよめきが起こる。
レッスルエンジェルス――それはかつて、《マイティ祐希子》たちが名乗った革命軍団。
その名を襲い、新たな革命の炎を上げようとするのか。

『っ、アンタらみたいなひよっこがレッスルエンジェルスぅ? そんなん、身の程知らずにもホドがあるやろ!』
『いかにもさよう――』

と、ここで鏑木がバトンタッチ、

『確かにこちとら、クチバシの黄色いひよっこぞろい。
 身の程知らず、いかにもいかにも。
 されどでっかい組織に属し、ガン首並べて弱いものいじめ。
 そんなチンケな輩の所業、なんで黙って見ておれましょうや。
 なに、諸先輩方が出るまでもない。
 かるく飲み干せるものならば、どうぞ飲み尽くしてごらんなれ。
 たんと悪酔い、二日酔い、ただじゃあ呑まれぬ、干し上がらぬ。
 天使と名乗るは面映いが、お見せしやしょう、ひよっこの意気地――』

と、さんざん口上述べて、

『お手前方の思い通りにはさせやせん――絶対にっっ!!』

最後は、感情を剥き出しにしての咆哮。
場内大いにどよめき、騒然となったのである。


「おやおや、そこにいらっしゃるのは、いつぞやのシグマなにがしさん」
「……っ」
「これはまさしく盲亀の浮木、優曇華の花――されどどうやら、喧嘩を売るほどの価値もなさそうなご様子」
「な……っ」
「いつぞやの件、よろこんで水に流しましょう。されば御免、お達者で」
「…………!!」

いっそブン殴られた方がマシなほどの、それは恥辱であった――

してやられて泣き寝入りするほど、Σリアはお人よしではない。
やられた以上、十倍でも百倍にでもしてやり返すべし。
そんな彼女だが、PG後楽園からほどなく、よりによって【ジャッジメント・サウザンド】からオファーがあった時は、目を疑った。
何でも、京都で自主興行を開催するらしい。
それにあたって、

――貴方の人気をぜひ活かしたい。

との、申し入れ。
ふざけたことを、と思いつつも、

――逃げた、と思われるも業腹や。

つまるところ、リアはこのオファーを受けたのである。



<<I・W・J 京都大会>>


▼日本 京都府京都市 寿総合文化ホール

<(1)15分一本勝負>

 〈アークデーモン〉(ジャッジメント・サウザンド)
 VS
 《木村 華鳥》(新日本女子プロレス)

<(2)J1Kvs新天使軍 30分一本勝負>

 《成瀬 唯》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《神田 幸子》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《村上 千秋》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 〈アトラス・カムイ〉(ジャッジメント・サウザンド)

 VS

【レッスルエンジェルス・ドリーム】
 《ウィッチ美沙》(新日本女子プロレス)
 &
 《小縞 聡美》(新日本女子プロレス)
 &
 〈フランケン鏑木〉(新日本女子プロレス)
 &
 〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)

<(3)ブレード上原復帰戦 30分一本勝負>

 《ブレード上原》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《芝田 美紀》(ジャッジメント・サウザンド)

 VS

 《中森 あずみ》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 〈高倉 ケイ〉(ジャッジメント・サウザンド)

<(4:休憩前) -KAMUI FINAL- 時間無制限一本勝負>

 《ライラ神威》(ジャッジメント・サウザンド)
 VS
 〈イレス神威〉(フリー)

<(5:休憩明け)スペシャルシングルマッチ カラテvsジークンドー 30分一本勝負>

 《斉藤 彰子》(ジャッジメント・サウザンド)
 VS
 〈Σリア〉(フリー)

<(6)ノールールマッチ 30分一本勝負>

 《六角 葉月》(新日本女子プロレス)
 VS
 〈ランダ八重樫〉(ジャッジメント・サウザンド)

<(7)J1Kvsスーパー柳生衆・1 30分一本勝負>

 《サタン神威》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《スパイダー神威》(ジャッジメント・サウザンド)

 VS

 《ダイナマイト・リン》(スーパー柳生衆)
 &
 〈MOMOKA〉(スーパー柳生衆)

<(8)J1Kvsスーパー柳生衆・2  45分一本勝負>

 《ジャイアント・カムイ》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《栗浜 亜魅》(ジャッジメント・サウザンド)

 VS

 《保科 優希》(スーパー柳生衆)
 &
 《近藤 真琴》(スーパー柳生衆)

<(9)メインイベント J1Kvsスーパー柳生衆・3 60分一本勝負>

 《寿 千歌》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《神楽 紫苑》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《氷室 紫月》(ジャッジメント・サウザンド)

 VS

 《柳生 美冬》(スーパー柳生衆)
 &
 《寿 零》(スーパー柳生衆)
 &
 《オーガ朝比奈》(スーパー柳生衆)

(斉藤……フーン、元アジアタッグ王者か)

なかなかの相手ではある。
もとより、格闘技戦として闘う気などさらさらない。

この大会には、かつての同期である八重樫や高倉たちも出場しているが、接触は控えた。
あちらにも、いろいろ立場があるだろう。

(……しかし、たまげたな)

八重樫が、リアより後の試合で、しかもあの古豪・六角とシングルマッチとは。
何でも、フィストなんとかという大会に出場、準優勝したらしい。
その結果からの抜擢であろうか。

(……あっちはあっちで、お盛んみたいやしな)

高倉は、強引に復活させたWWPWジュニアヘビー級王座を死守し、防衛線を重ねているという。

(ワールド……か)

それはもう、なくなってしまったもの。
だったら過去は過去として、未来を見るべきではないのか。

(そういや高倉、なんかのタッグ王座も獲ったらしいな)

そのパートナーは、日本海女子のルカなにがしというルーキーであるという。
そのうち、手合わせしてみたいものだ……

「あらぁ、生きてたの、アンタ」
「……おかげさまで、ピンピンしてますわ」

久々に会ったおばちゃんのように気さくな態度で声をかけてきたのは、神楽紫苑である。

「命知らずねぇ~。潰されても知らないわよ~?」
「そうそう簡単には――潰れません」
「そ。まぁ、死なないように、頑張んなさい」
「……はぁ」

そして、斉藤との一戦。
今やJ1Kの中では窓際ポジションになってしまった斉藤、これ以上の不覚を許されない――と気合満々。
いかにリアとて、まともにぶつかれば、たとえ勝てたとしてもただではすまないであろう。
リアも打撃には自信があるが、斉藤と正面からやり合うなどという愚行は――

「~~~っ、やってくれたなぁっ!」

顔面にいいのを貰い、鼻血がほとばしるや、リアのリミッターがブッ飛んだ。
狂戦士さながらに猛進、激しく撃ち合う。
艦隊戦にたとえるならさしづめ同航戦(敵味方が、同じ方向に向かって移動しながら行う戦闘。お互い照準をつけやすくなる)、全力で削り合う。
が、流石に正面からでは分が悪すぎる。

「はああっ!」
「……おぐっ!?」

土手っ腹に回し蹴りを食らい、胃液が吹き出す。
そこへすかさず斉藤の追撃――

「……なんてねっ!」
「!?」

ここでリアの反則殺法、「BAD END(隠し持った黒絵の具をその場で潰し、相手の目を潰す)」が炸裂。
そこへクレイモア(水面蹴り)を食らわせ、たまらず体勢を崩した斉藤に対し、

「――はあっ!!」

気合一閃、あたかも自然に剥がれたかのごとく、チャイナドレス風コスチュームを脱ぎ捨てる!

『おおおおお……!?』

場内がどよめいたのは、一瞬、素っ裸になったのか、と思われたためか。
もとより、その下には、黒と紫のダークな雰囲気のセクシーコス。
その背中には、鮮やかな龍の刺繍が躍っている。
これぞ、“クイーン・サドンデス”、その処刑ムーヴ――
華麗なるカンフーポーズから、

「これで、あんたは――」

「――BAD ENDさ!!」

強烈無比のΣキック(バズソーキック)を振り抜く!
こめかみに食らった斉藤、声もなく轟沈――
……もっとも、これら一連のムーヴはレフェリーに丸見えであったので、試合としてはリアの反則負けとあいなった。

 ○斉藤 VS リア×
 (8分:反則勝ち)

とはいえ、「勝負に勝った」のが誰なのかは、言うまでもない。

――リア様、最高ーーー!
――汚いなさすがリア様きたない! そこにシビれるーー!
――リアーー! リアリアーーッ!! リアアアーーッ!!!

勝者さながらに、ファンの声援に答えるリア――
と、不穏なBGMが流れ、またしてもJ1Kの面々が入場ゲートに現れる。

「まったく、学習能力ないなぁ~。ちっとは考えたらどうなん?」
「もちろん、考えてますとも……!」
「!?」

突然、成瀬が花道に突っ伏した。
イスで殴打されたのである。
その下手人は、

「オラァーーッ!!」

怒号と共にイスを振り回してるのは、アークデーモンこと、安宅留美。
思わぬ仲間割れに、たまらず撤収するJ1Kの輩。
ADはリングインするや、リアと握手。

「ちゃんと払うもんは払ってもらうぜ」
「もちろん――金の切れ目が縁の切れ目、やろ?」

こんなこともあろうかと、リアはADに前もって接触、ダブルクロス(裏切り)を打診していたのだ。
確証はなかったので、結構ドキドキしていたのだが……

「……ギャラだけなら、あちらの方がええんちゃう?」
「まぁな。だが……」

誰かの下につくのは、もうまっぴら。
それなら、やりたい放題できるほうがいいに決まっている。

「……そうやな。うちも、そうさせて貰うわ」

やりたいことをやればいいのだ。
倒したい奴、気に入らない奴は、叩き潰してやる。
さしあたり……

(……今後の目標は、一人でも多くの新人を、この手で血の海に沈めるコトやな)

もはや、リアに迷いはない。
Σリアの野望の日々は、これからが本格的なスタートであった――



プロレス界をほしいままに踏み渡ろうと画策する、危険な悪魔ども。
そんな彼女たちにとって、格好のイベントが、間近に迫っていた。

「スーパー・エンジェル・クラウン?」
「いえ。<アルティメット・エンジェル・クラウン>よ」

鏡から聞かされたのは、若手レスラーによる大型イベント。
もともとは新女が開催するルーキーの登龍門的大会だが、今回は他団体の選手にも大々的に門戸を開くのだという。

――まさに、おあつらえむきやな。

気に食わない新人どもを、片っ端から血祭りにあげてくれよう。

「それから……」
「え?」
「いえ。……なんでもないわ」

その先にある、J1Kと日本マット界の“最終審判”、<ジャッジメント・ショウダウン>……
フレイア鏡ですら、その全容をいまだ知らぬのだった。

果たして、リアの野望のゆくえはいかに――

(つづく)